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ブリックスの朝、クィーンサイズのベッドと男の訪問(キンブリー&アイザック)

2021-02-01 21:39:08 | 二次小説

 ようやく、ブリックスに到着したのは夕方だが、日はとっぷりと暮れていた、軽い夕食をすませたマルコーにオリヴィエは、ゆっくりと休んでください
と言われたのでベッドに入ったのだが、ふと違和感を感じたのだ。
 なんだか妙に暖かい、いや、暑い、汗をかいているのか、暖房が効くまでは寒かった筈なのに。
 目を覚まし、起き上がろうとすると窮屈さに驚く、ベッドはかなりの大きさで余裕がある筈だ、なのにと思ってふと首を動かすと隣で誰か寝ている、し
かも甘い体臭、いや、香水の匂いがする、鼻にかかるような甘い声にマルコーは驚いた。
 
 「起きたの、ドクター」
 
 何故、隣で彼女が寝ているのかとマルコーは驚いた、するとラストはちょいちょいとマルコーの反対側を指さす、首をわずかに向けると、もう一人、彼
女だ、いつの間に自分のベッドで女二人が寝ているのか。
 
 
 「どういうことだ、いつの間に」
 
 「だって、寒いんですもの」
 
 まるで子供のような台詞だ、何か言おうとしたが、相手の顔を見て、いつもとは違う事に気づいた。
 
 「寒い、のかね」 
 
 かなりとラストは頷くと、冷え性の女二人がベッドに入っても体は全然温かくならない、だから、マルコーの部屋に来たのだという。
  
 「あたしもだけど、彼女もひどかったわよ、ここに来るまでに膝をカクカクさせながら、あー、でも、この部屋、暖房もついているし、ベッドもフカフ
カだわ」
 
 「暖房は、ついているだろう」
 
 「暖かくならないのよ、もしかして、体温が低いせいかしら、女は」
 
 時計を見ると五時、まだ、外は暗い、仕方ないとマルコーはベッドから起き上がると部屋の隅の簡易コンロに向かった。
  
 
 「これを飲んで体を温めなさい」
  
 受け取ったカップからは甘い香りがする、覗き込んでラストは不思議そうな顔をした、珈琲でも紅茶でもない、ココアだ、そして一口飲んで不思議そう
な顔をすると、チョコレートキュールを少し入れているとマルコーが呟いた。
  
 「あっ、なんだかぽかぽかしてきた感じ」
 
 
 ラストはマルコーをじいっと見つめた。
 
 「ところで、起こしましょうか」
 
 「好きなだけ寝かせておいた方がいい、ここに来るまでも大変だったからね、ゆっくりした方がいい」
 
 
 
 
 「先生は、まだ、お休みでは」
 
 アームストロングの長男、アレックスの遠慮がちな言葉にスカーは大丈夫だ、歳だし朝は早いんだと部屋の前まで来るとノックもせずにドアを開けて部
屋に入った、すると、おはようと女の声が返ってきた、思わず視線が釘付けになったのはベッドの上にマルコーとラストが座ったまま、しかも朝食を食べ
ているからだ。
 
 「ミルクティーのお代わり、あっ、スクランブルエッグは固めにしてね」

 ラストの言葉に、わかってるわよと返事をしたのは美夜だ、部屋の隅のコンロで料理をしている、スカーとアレックスは驚いたのか、言葉が出ない、そ
してマルコーは入ってきた二人の男を見ると、どこか気まずそうな視線を向けた。

 
 「うーん、温サラダ、ドレッシングが美味しいわ」

 満足そうなラストに、ふっと得意そうに美夜が笑った。

 「それは先生のレシピよ」

 返事をしながら、この時、初めてスカーとアレックスの存在に気づいたかのように美夜は視線を向けた。


 どういう事だと問いかけるようなスカーの眼差しから、マルコーは思わず視線をそらしたのは無理もない、すると、それに気づいたラストがニヤニヤと
笑いながら視線を返した。

 

 また、雪崩、いや、地震か、オリヴィエはうんざりした顔で窓の外を見た、ここ数日で何度目だ、今まで、なかったのだ、これが人間相手なら別だ、敵
か味方か、判断できるからだ。
 
 「少尉、大変です、昨夜の雪崩で、こちらに来るはずの人間が」
 
 部下の言葉にすぐに救援に向かうと返事をした。
 
 
 

 「参りましたね、運が良かったのか、悪かったのか、どちらだと思います、あなた」
 
 「そんな事を聞くな、大体、何故、おまえとブリックスへ」
 
 運転は自分にやらせてキンブリー自身は後部座席でずっと眠っていたのだ、頭脳労働者にとって睡眠は大事なんですよと、もっともらしいことをいっ
て、そして現在、自分達は雪崩、地震、いきなり地面が揺れて車ごと地面の裂け目に落ちてしまったのだ。
 事前にブリックスに自分達が行くことは知らせてあるので助けを待っていてもいいのだが、いつ、きてくれるか分からない助けを待つというのも正直、
辛い、周りを調べていたアイザックは、突然、キンブリーに目を向けた、静かにしろと視線でだ。
 
 音がするのだ、少しずつ近くなってくる、これが助けなら何かしら向こうから合図なり声かけをするだろう、だが、それがないということは、もしかし
たら敵かもしれないと二人の男は、いつでも錬金術を、相手に対して攻撃できるように身構えた。
  
 
 女は願った、どうしようもない時は人間は神頼みにでも縋るものだが、この場合はどんな人でも、その願いを叶えることはできないだろう、何故なら、
その願いは死んだ娘に会いたいというものだからだ。
 死体を確認してくださいと言われても、判別できない程の損傷だった、確認してください、娘さんですかと聞かれても答えられない、肉の塊を娘だと言
われても信じたくはなかった。
 
 一目だけでもいいんです、姿を見るだけ、お願いします。
 
 その夜、地震が起きた、それは本当にかすかな揺れだったが、遠い、こことは離れた場所では大きな揺れとなって、地面に大きな穴を空けた。