台湾南端のとんがったところ(恒春半島)は一角が墾丁国家公園に指定され、美しい海や砂浜があり台湾を代表するビーチリゾート地になっています。興味深いのはこのリゾート地が同時に原発立地でもあることで、いったいどんな様子なのか気になり見物に行ってみました。
墾丁の原発は第三核能発電廠(略称は核三廠・日本語にすると台湾第三原子力発電所)といい、日本(や韓国)の原発にもつきもののPR館があって無料で見学できます。公共交通で行く場合は恒春転運站と墾丁を結ぶ屏東客運「墾丁街線藍線」の「後壁湖」が最寄バス停です。
(藍線乗りバスの話はこちらをご覧下さい。)
余談ながら私は先に第一原発・第二原発・龍門原発(建設中)を路線バスで訪問しているので台湾の原発全てに「路線バスで」行ったことになりました。(だから何だという話ですが一応「乗りバス」の一環でもあるというわけです。)
では現地の話を始めます。後壁湖には漁船や遊覧船の港があり、周辺には刺身など魚介類の料理をウリにする食堂があるのでちょっと韓国の原発を思い出しました。そんな観光ムードに第三原発のPR館「台電南部展示館」が紛れ込んでいる格好です。
南部展示館の門をくぐると正面にドーム状の原子炉建屋が見えるものの、それよりもむしろ風力発電と太陽光発電が少し設えてある方を「いかにも」と感じてしまったのは原発見物に慣れた証拠かもしれません。
では展示館に入ります。こういう施設というのはどこも立派ですね。
中身は既に台湾・韓国の原発あるいは日本で見た各PR館と似たような流れなので順を追わずなんとなく目に付いたものを並べていきます。
最初に気になったのが低レベル放射性廃棄物処分についての展示コーナーで、「他山の石」と称してフランス・日本・スイス・ドイツの処分場の説明があるほか「私たちのよきお隣さん」として処分場がある日本の青森県の六ヶ所村・韓国の慶州について大きめに触れられていました。
慶州というと韓国を代表する古都ですが、そこに廃棄物処分場や月城原発があるのはリゾート地墾丁と第三原発の組み合わせに一脈通じるような気がします。その慶州と並べられた六ヶ所村は観光地として有名なところではなく逆に核燃料の再処理工場や核廃棄物処理場といった核・原子力関連施設で有名になっているようなところなのでちょっとアンバランスな感じもしますが。ちなみに台湾の低レベル放射性廃棄物「貯蔵」施設は蘭嶼という台東県の離島(タオ族という原住民の島)にあるものの恒久的な処分場はまだ決まっていません。
原発の各タイプについての解説がありました。
沸騰水型軽水炉(BWR・ABWR)は台湾第一と日本の柏崎刈羽、加圧水型軽水炉(PWR)はここ台湾第三、重水炉(HWR)はカナダ、と商用炉が並ぶ中に実用化のめどが立たない高速増殖炉(FBR)が混ざっています。解説を見ると日本の「文殊号」すなわち「もんじゅ」やフランスの超鳳凰号(スーパーフェニックス)」が例として挙げられていましたが、さすがにあまり先のめどが立たないものを持ち上げるのは厳しいようで「商業化は2030年以後だろう」というぼかしたオチでした。どこの高速増殖炉だか特に書いていない展示写真は手前のお花畑が強調され遠くにピンボケの原子炉が見えるというものなので、なんだか図らずも(?)高速増殖炉計画の前途をイメージで表現しているように見えてしまったりです。
原子力をヒーローっぽいキャラに描き他のエネルギーをしょぼく描くお子様向け(?)の手法が見られました。
こういうのは韓国の原発にもありましたが、単に考えることは同じなのか元があるのか気になるところです。また廃棄物処理クレーンゲームとかでかい原子炉の模型、「3D立体劇場」に地震体験室と原発のPR館にありがちなものが揃い、あの手この手のようでいてだいたいワンパターンというのがこの手の施設の特徴ではないかと改めて思いました。地震体験が原発とどう関係があるのか不思議ですが、体験すると特に原発と関係はなくともなんとなくこの原発は地震対策ばっちりなんだろうと思えてくるような効果でもあるのでしょうか。
福島第一原発の事故について何か別の展示の場所を流用したようなところに説明があります。
建設中の第4原発は福島のよりしっかり対策してます、と強調するのを見るととばっちりくらった方は大変だと思いますが、福島にスリーマイル、チェルノブイリと思い出すと明日は我が身という言葉が浮かぶばかりです。
カフェコーナーもあるので見物に疲れたら飲食しつつ休むことができます。ここの名物は「核三廠海水淡化氷棒」つまり「第三原発海水淡水化アイスキャンディー」です。
なんだかすごい名前ですが味はごく普通のアイスキャンディーでした。
というぐあいに南部展示館を見物したあとは原発の排水口を見に行きました。
この近辺の海では珊瑚の白化が起こったので原発の温排水に原因があるのではないか、いや地球温暖化その他の環境の変化が原因では、と諸説出ているのだそうです。ちょっと見物しただけでわかるのは他の原発同様に釣り人が集まっていたことすなわちよく釣れるのだろうということくらいですが、少なくともその程度は海に何らかの影響があるのでしょう。
ちなみにこの原発の排水口付近にあるバス停名は「核三廠出水口」、すなわち「第三原発排水口」ですからそのままの名前です。
という具合に原発PR館と排水口を見物したあとは近所の様子を見に行くことにしました。
(後編につづきます。)
墾丁の原発は第三核能発電廠(略称は核三廠・日本語にすると台湾第三原子力発電所)といい、日本(や韓国)の原発にもつきもののPR館があって無料で見学できます。公共交通で行く場合は恒春転運站と墾丁を結ぶ屏東客運「墾丁街線藍線」の「後壁湖」が最寄バス停です。
(藍線乗りバスの話はこちらをご覧下さい。)
余談ながら私は先に第一原発・第二原発・龍門原発(建設中)を路線バスで訪問しているので台湾の原発全てに「路線バスで」行ったことになりました。(だから何だという話ですが一応「乗りバス」の一環でもあるというわけです。)
では現地の話を始めます。後壁湖には漁船や遊覧船の港があり、周辺には刺身など魚介類の料理をウリにする食堂があるのでちょっと韓国の原発を思い出しました。そんな観光ムードに第三原発のPR館「台電南部展示館」が紛れ込んでいる格好です。
南部展示館の門をくぐると正面にドーム状の原子炉建屋が見えるものの、それよりもむしろ風力発電と太陽光発電が少し設えてある方を「いかにも」と感じてしまったのは原発見物に慣れた証拠かもしれません。
では展示館に入ります。こういう施設というのはどこも立派ですね。
中身は既に台湾・韓国の原発あるいは日本で見た各PR館と似たような流れなので順を追わずなんとなく目に付いたものを並べていきます。
最初に気になったのが低レベル放射性廃棄物処分についての展示コーナーで、「他山の石」と称してフランス・日本・スイス・ドイツの処分場の説明があるほか「私たちのよきお隣さん」として処分場がある日本の青森県の六ヶ所村・韓国の慶州について大きめに触れられていました。
慶州というと韓国を代表する古都ですが、そこに廃棄物処分場や月城原発があるのはリゾート地墾丁と第三原発の組み合わせに一脈通じるような気がします。その慶州と並べられた六ヶ所村は観光地として有名なところではなく逆に核燃料の再処理工場や核廃棄物処理場といった核・原子力関連施設で有名になっているようなところなのでちょっとアンバランスな感じもしますが。ちなみに台湾の低レベル放射性廃棄物「貯蔵」施設は蘭嶼という台東県の離島(タオ族という原住民の島)にあるものの恒久的な処分場はまだ決まっていません。
原発の各タイプについての解説がありました。
沸騰水型軽水炉(BWR・ABWR)は台湾第一と日本の柏崎刈羽、加圧水型軽水炉(PWR)はここ台湾第三、重水炉(HWR)はカナダ、と商用炉が並ぶ中に実用化のめどが立たない高速増殖炉(FBR)が混ざっています。解説を見ると日本の「文殊号」すなわち「もんじゅ」やフランスの超鳳凰号(スーパーフェニックス)」が例として挙げられていましたが、さすがにあまり先のめどが立たないものを持ち上げるのは厳しいようで「商業化は2030年以後だろう」というぼかしたオチでした。どこの高速増殖炉だか特に書いていない展示写真は手前のお花畑が強調され遠くにピンボケの原子炉が見えるというものなので、なんだか図らずも(?)高速増殖炉計画の前途をイメージで表現しているように見えてしまったりです。
原子力をヒーローっぽいキャラに描き他のエネルギーをしょぼく描くお子様向け(?)の手法が見られました。
こういうのは韓国の原発にもありましたが、単に考えることは同じなのか元があるのか気になるところです。また廃棄物処理クレーンゲームとかでかい原子炉の模型、「3D立体劇場」に地震体験室と原発のPR館にありがちなものが揃い、あの手この手のようでいてだいたいワンパターンというのがこの手の施設の特徴ではないかと改めて思いました。地震体験が原発とどう関係があるのか不思議ですが、体験すると特に原発と関係はなくともなんとなくこの原発は地震対策ばっちりなんだろうと思えてくるような効果でもあるのでしょうか。
福島第一原発の事故について何か別の展示の場所を流用したようなところに説明があります。
建設中の第4原発は福島のよりしっかり対策してます、と強調するのを見るととばっちりくらった方は大変だと思いますが、福島にスリーマイル、チェルノブイリと思い出すと明日は我が身という言葉が浮かぶばかりです。
カフェコーナーもあるので見物に疲れたら飲食しつつ休むことができます。ここの名物は「核三廠海水淡化氷棒」つまり「第三原発海水淡水化アイスキャンディー」です。
なんだかすごい名前ですが味はごく普通のアイスキャンディーでした。
というぐあいに南部展示館を見物したあとは原発の排水口を見に行きました。
この近辺の海では珊瑚の白化が起こったので原発の温排水に原因があるのではないか、いや地球温暖化その他の環境の変化が原因では、と諸説出ているのだそうです。ちょっと見物しただけでわかるのは他の原発同様に釣り人が集まっていたことすなわちよく釣れるのだろうということくらいですが、少なくともその程度は海に何らかの影響があるのでしょう。
ちなみにこの原発の排水口付近にあるバス停名は「核三廠出水口」、すなわち「第三原発排水口」ですからそのままの名前です。
という具合に原発PR館と排水口を見物したあとは近所の様子を見に行くことにしました。
(後編につづきます。)
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