霊光原発
2011-08-27 | 韓国
今回は韓国全羅南道霊光郡にある霊光原子力発電所を見物したときの話です。韓国にある全4ヶ所の原発のうち古里原発・月城原発・蔚珍原発は東海岸にありこの霊光原発のみ西海岸にあります。位置は全羅南道沿岸最北の郡「霊光郡」でちょっと北に行くとすぐ全羅北道です。稼動を始めたのは1986年で現在6基の原子炉が並んでいます。
霊光郡各地の玄関になるのは「霊光バスターミナル」です。ここまでソウル江南のバスターミナルから3時間40分、光州の高速・市外バスターミナル(ユースクエア)からだと1時間で着きます。霊光バスターミナルからは法聖浦・弘農経由山城里行き農漁村バスに乗ると約30分で原発の正門前です。ただ今回は「乗りバス」目的だったのでローカルバス乗り継ぎをするため隣の全羅北道高敞郡から行きました。
着いた原発正門の脇には原発職員や用事がある人を当て込んでいるのか食堂があります。「朝ごはん」なんて看板が出ていて硬い雰囲気の原発と並ぶとちょっと面白く感じました。
正門に向かって左の坂を上ると原発に付属する展示館(広報館)があります。
展示館の正面にはずらりと並ぶ原子炉、そして伸びる送電線で絶景といえば絶景かなでしょうか。
では中に入ってみます。1階にある展示館の入口をくぐるとまずは地元の名産品PRコーナー。中でも一番目立っているのが霊光郡を代表する名物クルビ(イシモチの干物)です。
日本でイシモチと言ってもあまりパッとしない感じですが、韓国では高級魚です。その中でも霊光郡内の法聖浦という町で作られるものが「霊光クルビ」としてブランド力があり高価です。コーナーの端には霊光郡のみならず北隣にある全羅北道高敞郡の観光案内図が一緒に出ています。高敞郡には世界遺産に指定されている支石墓群があるのでそれと霊光クルビをハシゴする観光客は結構多いのではないかと思いますが、原発もハシゴする人はいったいどのくらいいるのでしょうか。
続いて肝心の電力系展示が始まります。最初はエネルギーの歴史と水力発電からです。エネルギーの歴史の図や水力発電所の模型などが続き、あっさり目に終わります。
水力の次は火力です。エレベーター風の入口の先に炭鉱の坑内様子が再現されていました。その後石炭や石油の埋まっている地層の様子や火力発電所の模型が続きますがここも水力同様あっさり目です。(原発に付属する展示館ですしね。)
で真打登場という具合に原子力発電の展示と「未来」の展示が2階で一緒になっています。そういえば原子力発電が始まってもう何十年と経ちとっくに過去あるいは現在のものなのですが、なぜか原発というとたいてい「未来」が強調されがちです。いつまでも未来と言い続けなきゃならないということはつまり今になってもまだ確立したものでないということなのでしょうけれども。
「私たちの国の原発技術力」が誇り高く語られ、国産原子炉「APR-1400」や「OPR-1000」の写真が展示されています。そういえば韓国の原発は輸出産業になっているのでした。そういう方面のPRもしているわけですね。
原子炉の型の比較というのがありました。
黒鉛減速沸騰軽水炉(RBMK・チェルノブイリのはこれ)、沸騰水型軽水炉(BWR・福島第一他日本に多い型)、加圧水型軽水炉(PWR・韓国にも日本にも多くスリーマイル事故のもこれ)、加圧重水炉(PHWR・日本にはなく韓国では蔚珍にだけ存在)と並んでいます。
この展示は月城原発や蔚珍原発で見た福島第一原発事故後の急ごしらえっぽい比較展示とは違いずっと前からあったようでおそらく「チェルノブイリなんかと韓国の原発は違うんだ」という主張が込められているんだと思いますが、今年になってさらに「フクシマなんかと韓国の原発は違うんだ」という主張にも使えるようになったわけで作った人には先見の明があった、のかなあなどと考えてしまいました。
原子力発電の優位性を説くコーナーでは太陽光・重油・天然ガス・石炭と比べ「原子力が一番経済的です」だそうです。それにしても原発の原価計算ってどこまで入れてるものなのでしょうか。日本だったら種々の立地用交付金や寄付金の類や広告費、割引計算しない高レベル廃棄物処理費用(決まってないのに計算できるかという突っ込みはさて置くとして)や解体費用、そしてフクシマのような事故のあらゆる被害額、さらに原発事故に対する「上限なしの」保険があると仮定した時の保険料を入れて計算した原価がどのくらいなるのでしょうか。大事故がまだなく軍事政権時代に立地を決められた韓国はだいぶマシになりそうな気がしますが、それにしてもそう安く済むもんなのかなと思うところです。
中・低レベル廃棄物処理場建設計画の展示がありました。慶州の月城原発の近所に建設中で2009年12月には出来てると書いてありますが実際は遅れていて訪問時はまだ工事中です。原発の展示館なんだからこういうところはちゃんと訂正しておいて欲しいところですが。そういえば高レベル廃棄物はどうするのだろうと当然思うわけですが、そこはあまり突っ込んではいけない大人のお約束なのでしょうか。
でもって五重の壁に守られているから表に放射線や放射性物質は絶対出しません、しっかり測ってちゃんと管理してます、自然には放射線がいっぱいある上レントゲンとかもあって被曝してるんだから原発なんか気にすんな、とこれは毎度のお約束系展示です。
原子炉まわりの3分の1スケール模型みたいなのもお約束ですね。
原発の温排水はキレイでちょっとぐらい暖まったって問題ないという主張です。この周辺の海は水深が浅く温排水の影響が広がりやすいため漁業や海苔養殖に対し補償金が出たりもめているそうなので避けて通れないのでしょう。
原発のオマケのようについてくる太陽光と風力の展示も少しばかりありました。
で省エネしようねと続くお約束とか公共交通に乗ろうと書いてある辺りになると唐突にくっつけてくるなあと思いつつ特に異存はありませんという感じです。
最後に温暖化対策のコーナーで「クリーン開発メカニズム」の説明を見てみます。先進国が途上国に資金と技術を援助してCO2を削減できたら一定の割合が先進国の削減量とみなされるという仕組みです。で挿絵は白い顔が先進国民、黒い顔が途上国民になっているのでちょっとなんだかなあという気分になりました。
霊光郡各地の玄関になるのは「霊光バスターミナル」です。ここまでソウル江南のバスターミナルから3時間40分、光州の高速・市外バスターミナル(ユースクエア)からだと1時間で着きます。霊光バスターミナルからは法聖浦・弘農経由山城里行き農漁村バスに乗ると約30分で原発の正門前です。ただ今回は「乗りバス」目的だったのでローカルバス乗り継ぎをするため隣の全羅北道高敞郡から行きました。
着いた原発正門の脇には原発職員や用事がある人を当て込んでいるのか食堂があります。「朝ごはん」なんて看板が出ていて硬い雰囲気の原発と並ぶとちょっと面白く感じました。
正門に向かって左の坂を上ると原発に付属する展示館(広報館)があります。
展示館の正面にはずらりと並ぶ原子炉、そして伸びる送電線で絶景といえば絶景かなでしょうか。
では中に入ってみます。1階にある展示館の入口をくぐるとまずは地元の名産品PRコーナー。中でも一番目立っているのが霊光郡を代表する名物クルビ(イシモチの干物)です。
日本でイシモチと言ってもあまりパッとしない感じですが、韓国では高級魚です。その中でも霊光郡内の法聖浦という町で作られるものが「霊光クルビ」としてブランド力があり高価です。コーナーの端には霊光郡のみならず北隣にある全羅北道高敞郡の観光案内図が一緒に出ています。高敞郡には世界遺産に指定されている支石墓群があるのでそれと霊光クルビをハシゴする観光客は結構多いのではないかと思いますが、原発もハシゴする人はいったいどのくらいいるのでしょうか。
続いて肝心の電力系展示が始まります。最初はエネルギーの歴史と水力発電からです。エネルギーの歴史の図や水力発電所の模型などが続き、あっさり目に終わります。
水力の次は火力です。エレベーター風の入口の先に炭鉱の坑内様子が再現されていました。その後石炭や石油の埋まっている地層の様子や火力発電所の模型が続きますがここも水力同様あっさり目です。(原発に付属する展示館ですしね。)
で真打登場という具合に原子力発電の展示と「未来」の展示が2階で一緒になっています。そういえば原子力発電が始まってもう何十年と経ちとっくに過去あるいは現在のものなのですが、なぜか原発というとたいてい「未来」が強調されがちです。いつまでも未来と言い続けなきゃならないということはつまり今になってもまだ確立したものでないということなのでしょうけれども。
「私たちの国の原発技術力」が誇り高く語られ、国産原子炉「APR-1400」や「OPR-1000」の写真が展示されています。そういえば韓国の原発は輸出産業になっているのでした。そういう方面のPRもしているわけですね。
原子炉の型の比較というのがありました。
黒鉛減速沸騰軽水炉(RBMK・チェルノブイリのはこれ)、沸騰水型軽水炉(BWR・福島第一他日本に多い型)、加圧水型軽水炉(PWR・韓国にも日本にも多くスリーマイル事故のもこれ)、加圧重水炉(PHWR・日本にはなく韓国では蔚珍にだけ存在)と並んでいます。
この展示は月城原発や蔚珍原発で見た福島第一原発事故後の急ごしらえっぽい比較展示とは違いずっと前からあったようでおそらく「チェルノブイリなんかと韓国の原発は違うんだ」という主張が込められているんだと思いますが、今年になってさらに「フクシマなんかと韓国の原発は違うんだ」という主張にも使えるようになったわけで作った人には先見の明があった、のかなあなどと考えてしまいました。
原子力発電の優位性を説くコーナーでは太陽光・重油・天然ガス・石炭と比べ「原子力が一番経済的です」だそうです。それにしても原発の原価計算ってどこまで入れてるものなのでしょうか。日本だったら種々の立地用交付金や寄付金の類や広告費、割引計算しない高レベル廃棄物処理費用(決まってないのに計算できるかという突っ込みはさて置くとして)や解体費用、そしてフクシマのような事故のあらゆる被害額、さらに原発事故に対する「上限なしの」保険があると仮定した時の保険料を入れて計算した原価がどのくらいなるのでしょうか。大事故がまだなく軍事政権時代に立地を決められた韓国はだいぶマシになりそうな気がしますが、それにしてもそう安く済むもんなのかなと思うところです。
中・低レベル廃棄物処理場建設計画の展示がありました。慶州の月城原発の近所に建設中で2009年12月には出来てると書いてありますが実際は遅れていて訪問時はまだ工事中です。原発の展示館なんだからこういうところはちゃんと訂正しておいて欲しいところですが。そういえば高レベル廃棄物はどうするのだろうと当然思うわけですが、そこはあまり突っ込んではいけない大人のお約束なのでしょうか。
でもって五重の壁に守られているから表に放射線や放射性物質は絶対出しません、しっかり測ってちゃんと管理してます、自然には放射線がいっぱいある上レントゲンとかもあって被曝してるんだから原発なんか気にすんな、とこれは毎度のお約束系展示です。
原子炉まわりの3分の1スケール模型みたいなのもお約束ですね。
原発の温排水はキレイでちょっとぐらい暖まったって問題ないという主張です。この周辺の海は水深が浅く温排水の影響が広がりやすいため漁業や海苔養殖に対し補償金が出たりもめているそうなので避けて通れないのでしょう。
原発のオマケのようについてくる太陽光と風力の展示も少しばかりありました。
で省エネしようねと続くお約束とか公共交通に乗ろうと書いてある辺りになると唐突にくっつけてくるなあと思いつつ特に異存はありませんという感じです。
最後に温暖化対策のコーナーで「クリーン開発メカニズム」の説明を見てみます。先進国が途上国に資金と技術を援助してCO2を削減できたら一定の割合が先進国の削減量とみなされるという仕組みです。で挿絵は白い顔が先進国民、黒い顔が途上国民になっているのでちょっとなんだかなあという気分になりました。
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