日本のゴミ処理ー生産者責任が不明確、焼却中心主義が問題
関 日本の一般ゴミ総排出量は1990年度に5千万トンの大台を超え、2006年度には5273万トンに達し、処理経費も年間1兆9千億円。
国は、2000年に「循環型社会形成推進基本法」を制定して「資源循環の基本原則」を定め、各種のリサイクル関連法も制定したが、ゴミを減らすことはできていない。
大きな問題は、製品の生産者が廃棄・処理・リサイクルまで責任を負うという拡大生産者責任が不明確であること。
例えばペットボトルは、容器包装リサイクル法によって、製造者にとってはリターナブル容器よりペットボトルの方が安くあがる仕組みとされたことから、93年に12万トンだった生産量が、04年には50万トンと4倍以上に急増、自治体の処理費用を増加させた。
もう一つの問題は、ゴミ処理は焼却が中心で、焼却炉の大型化・最新鋭化が進められ、一般廃棄物の約8割が焼却されているということ。発電なども併せておこなうことが奨励され、大型焼却炉を効果的に使うために、「ゴミが足りない」などという現象すら生まれている。
ヨーロッパなど環境先進国では当たり前の拡大生産者責任を明確にすることを始めとして、循環型社会をつくっていく政治への転換は時代の要請。
鶴岡のゴミ「一年に市民プール115杯分」、処理費用16億9千万円、対策は・・ 本市では、H8年に一般廃棄物処理基本計画が制定され、指定袋による分別回収、新聞紙・段ボール等古紙資源物回収で減量・RSなどが取り組まれたが、ゴミの増加は止まらず。
基本計画を策定したH8年度からH18年度にかけての廃棄物排出量は、43057tから47558tへ4501t・10.5%の増加。
これは本市の市民プールで計ると(縦50m×横25m抜深さ1.1mで)、一年間に約115杯分、10年前と比べた増加量は、3.3杯分。
処理費用も、H18年度の清掃費で約16億9千万円。近年やや減少傾向もみられるとはいうものの、ごみ問題は、本市でも重要な課題として緊急の対処が求められている。
市は、H18年4月に、H27年までの新たな10カ年計画として、一般廃棄物処理基本計画を策定。H16年度を排出量を基礎数値としたゴミ減量目標を、生活系ゴミでは一人当たり600gをH27年度には500gに、事業系ゴミでは16000tから1600t・10%の削減、リサイクル目標は、資源回収量の10%増・施設資源化率10%増、そしてそれぞれの目標には、H22年度に半分まで到達するという中間目標。
そして、これらの達成のための方策として、ゴミの減量化、リサイクル運動の推進、分別の徹底、資源回収の推進、生ゴミ減量の推進、廃食用油の活用を地域と連携を図りながら推進としている。
生ゴミ資源化ーいつ ごみ対策は多岐に渡り論点も膨大だが、今回は、生ゴミ資源化の問題と、市民に不安を広げているゴミ処理費用有料化の問題について質問する。
生ゴミ資源化は、生ゴミの中に含まれる、窒素・リン・カリ・その他、植物の育成に必要な要素を活用することが、基本計画が謳う「環境にやさしい資源循環型社会をめざす」という基本理念を具体化するための重要な課題。生ゴミはゴミ総量の約30%を占めると推計され、可燃ゴミ処理費用の中でも大きな位置を占める。
H27年度までのゴミ減量目標から見ると、生活系ゴミの減量では仮に生ゴミの7割を資源化すれば、生活系ゴミ全体の目標を達成できるという計算。
事業系ゴミでも生ゴミは重要な問題であり、ハードルは低くないが、生ゴミ資源化は大きなポイント。基本計画でも「生ゴミ減量及び資源化を図るため、効率的な生ゴミ処理システムについて検討していく」と取り上げられている。
ところが、この生ゴミ資源化の検討は、十年以上前から表明されながら、未だに具体化されていない。具体的な方法をいつ提案するのか、いつ実施に踏み出すのか、その目標期日を。
生ゴミ資源化ー関係者と協議し、地域ごとの対策も視野に 資源化の具体論だが、堆肥化、飼料化、燃料化などが考えられるが、農業を産業・文化の基盤とする本市としては、堆肥や飼料として活用していくという方法は重要。
有機農業の重要性が繰り返し強調されているが、それには適合した肥料・飼料の生産が不可欠であり、生ゴミはそうした肥料・飼料の原材料に供することがある程度可能。生ゴミ原材料では質的に物足りないという農家も考えられるが、農家全体を考えると、活用のニーズは大きい。
特に今、畜産の衰退によって堆肥の重要原料である畜糞の確保がすぐには困難となっていることや、飼料価格高騰という状況の中で、生ゴミ活用の必要性は拡大している。
ちなみに、市の堆肥は、年間総供給量が29263tだが、その内の9%2660tが管外から搬入されている。
生ゴミの供給、肥料・飼料の利用、栽培された農産物の販売まで、安定した循環をつくることが資源化の大前提。農業関係者、排出業者、処理業者などとの協議を進めるべきではないか。
また、資源循環として考える場合、旧町村を始めとした地域ごとに、農業の特徴や、循環型社会づくりの熟度が異なる。収集コストも地域が狭い方がかからない場合もある。従って、地域に応じた対策を検討することが重要。
ゴミ処理有料化やめよーゴミ問題は、市民の理解・製造者責任・システムづくりで
本市一般廃棄物処理基本計画は、「ゴミの有料化について具体的に検討します」という方針。そして早速、昨年8月10日に開かれた廃棄物減量等推進審議会に、有料化が検討課題として提起された。
そこでは、「有料化の目的と期待する効果」として、
一つ目に、廃棄物排出抑制のインセンティブが生まれる。
二つ目に、費用負担の公平性が確保できる
三つ目に、有料化導入の説明で、住民の意識改革ができる、などと説明され、導入への工程も示された。
この方針は、国がH17年に打ち出した基本方針に沿ったものだが、大変問題。
第一にゴミ問題は、何よりも市民の理解に基づく自発的な取り組みこそが土台に据えられなければならない。市基本計画でも「市民や事業者自ら積極的な排出抑制やリサイクルの推進を図っていくことが重要」であり、「そのためにはゴミ減量やリサイクルに関する知識の取得が重要」としている。
第二に、処理に関わる費用は、拡大生産者責任として製品製造企業に適正に負担させるべきものであり、市としては、国に対して正しい仕組みづくりを求めていかなければならない。市自ら負担を背負わされていることは不問にし、新たに市民に負担を押しつけるなどということでは、本来の負担の公平をすり替えることになる。
第三に、ゴミ発生抑制・再利用・再生利用を進めるためには、市がそのシステムをつくらなければならないが、生ゴミの問題を始めとして、きちんとしたシステムがまだ構築されていない、市がその責任を果たしていない中で、有料化を進めるということでは、市民の理解は得られない。
有料化はやめるべきと考えるが、市としては、ゴミ減量・再利用・再資源化のシステムを構築し、あらゆる方策を尽くした後に、やむを得ない手段として考えているのか。それとも、優先施策として、最初から具体化する考えなのか。
答弁:生ゴミ資源化は重要ーこれからの課題、関係者協議は必要、地域ごとの対策も考慮
環境部長 H18年3月に、H27年度を終期とする今後10カ年の基本的な計画として、鶴岡市一般廃棄物処理基本計画を定めた。
その中で、生活系ごみの減量化目標をH16年度を基準として、市民一人当たりH22年度には50g、27年度までには100gの減量、一人1日500gとすることに。
この目標設定は、県の目標780gより約35%厳しい数値。
各年度に実施計画を定めて、ゴミ排出抑制や、リサイクル推進に努めているし、棄物の資源化は、17年度稼働したリサイクルプラザ、分別方法変更による5種分別。その成果として施設の資源化が16年度の30%に対して、18年度には約66%まで向上。
生ゴミは、議員説明の通り燃やすゴミの3割前後、平成18年度年間で約11000トン。減量化や資源化の対策は、収集コスト削減や環境負荷の低減などの面から、重要な課題。現在、その対策として、市民が取り組みやすい方法を主体に実施。
三角コーナーなどによる水切りで重量が約10%程度減量するので、水切りの徹底をお願いしている。特に、夏場は果物による水分が多くいっそうの啓発に努めている。
また昭和59年の4月から開始した生ゴミ処理機購入補助制度で、本年2月末現在、市全体で導入された機数は8800機。これによるゴミの減量の測定はしていないが、今年度実施したアンケート調査では、生ゴミ減量やリサイクル向上などの回答が多く、一定の成果があったものと認識。
なお本年度生ゴミ処理機の補助金交付を受けた方々には、使用の状況の調査をし、効果を検証。
市としては、循環型社会形成推進法の定めるところにより国が策定した基本計画にもとづいて、循環型社の構築に向けて、一般廃棄物の内、資源化の可能な廃棄物の資源化の技術や、先進地事例の調査を実施している。
生ゴミも、堆肥化や飼料化、バイオガス化などの技術やシステムの調査研究を進めている段階で、具体的な事業や数値目標及び数値の期日の設定はこれからの課題。
今後資源化の可能性の高い廃棄物の分別排出や収集方法、鶴岡市における適用可能性の技術評価、資源化物のニーズや、利用環境の実態把握、流通形態の研究、費用対効果の分析、事業運営の形態など、多くの要因について検討を必要としており、国県との協議、市関係部局との横断的な調査検討も必要。
また、農業者、排出業者、処理業者、それから地元の研究機関や産業界との連携による、意見交換などは産学官の共同による推進が必要。
現在市内でも民間業者・諸団体の資源化プラントもあり、連携の可能性も検討課題の一つ。
「地域ごとの対策」は、旧市町村の単位であるかどうかは別にして一つの方策。
いずれにしてもゴミ資源化対策の推進は、長期に可能であること、資源化物の需要と供給のバランスなど、十分な検討のもとに検討すべきもの。
有料化の検討は必要 市民負担については、H17年度5月に廃棄物の処理及び清掃に関する法律第5条の2の規定に基づき、廃棄物の減量、その他適正な処理に関する総合的かつ計画的な処理に関する施策の基本方針が国から示されている。
基本方針の中で、市町村の役割として、経済的インセンティブ、活用した一般廃棄物の処理や活用の推進、排出量に応じた負担の公平化、及び住民の意識の改革を進めるために、一般廃棄物処理の有料化の推進を図るべきであるとされている。
ゴミの有料化の目的や期待する効果としては、排出抑制、再生利用の促進、公平性の確保、排出者の意識改革、環境負荷低減などがあげられている。
廃棄物の排出抑制については、収集経費や処理処分、施設整備、維持管理などのコストの低減に大きな影響を与えるもので、環境負荷の低減や資源の枯渇の防止の面などから、廃棄物行政を進める上で重要な課題であると認識している。
ゴミの排出抑制や資源化対策を進めながら、ゴミの有料化についても、検討をおこなう必要があると考えている。
基本計画でも、ゴミ処理の課題としてゴミの減量とリサイクル率の向上、不公平感の是正やゴミ処理経費の縮減のための検討は必要であるという位置づけ。
昨年度と今年度2年間でこれまでの直営でおこなっているゴミ収集を全面廃止するなど大きな改革を実施することや、効率的な施設の管理を図るなどコスト低減を進めている。
国から一般廃棄物処理有料化ガイドラインや一般廃棄物の会計基準を詳細に把握しながら、有料化実施都市における先進事例や課題の調査の検討を進め、今後市民や業者、事業者など廃棄物を排出される方々との意見交換の機会も考えている。
「具体的に有料化ありきで進めるのか」ということだが、そういうことも踏まえて総合的に検討すべきものと考えている。
対策は急がれるのではないか
関 生ゴミ処理機の効果の確認は、平成17年に加藤太一議員が質問し、今回に調査をしたということ。その結果やはり啓発効果ということであって、それで生ゴミ減量を図るというものではないということもはっきりした。
資源化には、「十分な調査・検討の上に策を立てなければならない」ということはもちろんそうだが、大いに急がなければならない。
焼却施設がもう10年ぐらいには更新しなければならない、すると3年ぐらい前から建設が始まるし、その構想はもう5年もしないうにちに立てなければならない。
そのときに、生ゴミの資源化で燃やすゴミを減らして最小限の焼却施設をつくっていくという日程で向かっているのか。だとするともう1年もしないうちに打ち出す必要があると思うが、もう少し明確に答弁を。
焼却炉更新も視野に検討を進める
環境部長 新焼却施設の建設についてはまだ具体的計画はない。ただ、議員が言ったように、ただ燃やせばいいと言う焼却施設にはならないと思うし、資源化の施策も組み込まなければならない。生ゴミの処理も、その時期に合わせた形での検討ということも一つの考え方。
市全体として取り組むということであればそういうことになるし、個別に何か別のものをということになればそれとはちょっと異質のものになるだろう。
いずれにしてもゴミの減量化を踏まえながら施設の建設についても進めていきたい。
有料化せずゴミを減らした自治体に学べ
関 一昨年から全国百近い自治体を抽出をして、先進と思われるところにアンケートなどで調査をおこなって、その結果も今分析をしているということで、研究を進められていると理解。
その中で、有料化してゴミが減った自治体があることは事実だが、リバウンドした自治体もあるということも事実。何よりも、有料化しないでゴミを減らしている実効性を上げている自治体があるということにこそ着目すべき。
例えば、
鎌倉市では分別回収によって、燃やすゴミを7年間で37%削減をし、今後剪定枝4千トンの資源化計画というのも進められている。
また
横須賀市では、生ゴミをバイオガスで利用するということで、可燃ゴミをすでに30%削減をして、施設の建設費で3億円、ランニングコストで6千万円あまり軽減を図った。そういう実効を上げている自治体もある。それぞれ人口規模も違うが、こういう事例に学んでいただきたい。
本市としては、循環型の鶴岡市をつくるのだという理念についての理解やゴミ処理の方針についての理解、そういうことを行政が先頭に立って説明をして、市民の自主性と創意に基づいてエネルギーを引き出していく、そういう姿勢が求められている。
生ゴミ資源化はなかなか具体化をされないできた。そして今になって国の方で有料化を進めるべきだという方針が打ち出されたら、直ちに検討には入るということでは市民のエネルギーを引き出すことはできない。むしろそのことが妨げになるのではないかと思うが、その心配を持たないか。
有料化の研究・検討はおこなう
環境部長 議員ご指摘のように、有料化で一時的に減量するもののリバウンドするという事例もたくさんある。また、有料化していないところで減量化したところもあるし、有料化したところで大きく減量したところもある。
基本的な考え方としては、有料化そのものは有効な方策の一つというふうに認識。ただそれをただちにやるのかやらないのかということについては、私は一言も申し上げてはおらないので、それらも含めて検討すると言っている。
ただ、具体的に検討なり研究なりしないと先に進まないので、十分にやらしていただきたい。
また逆に有料化によって市民の意識が低くなるのではないかという意見だが、そういう形でのとらえ方をしたことがないので、そのような視点も意見としてお聞きしておきたい。
市民の声を聞け。旧藤島の構想を活かせ
関 市民の方々の声によく耳を傾け、今、大変厳しい生活状況のもとにおかれている沢山の市民の方の声を重視して進めていただきたい。
最後になるが、全国で少なくない自治体が生ゴミの活用、資源化に踏み出している。
県内でも
長井市が10年前から、
旧立川町は20年前から。それぞれ大変な課題があるということも承知しているが、資源の有効な活用、循環型社会づくりということを長く重ねて来たことには敬意を表したいし、参考にしていただきたい。
また何よりも新鶴岡市の中でも、
藤島町などではエコタウン構想に基づいて、バイオマスタウンこの構想に全国の先進として参加をして、循環型社会づくりという哲学に基づいた優れた構想、すぐれた取り組みを始めていた。
私もかねてから、旧町村の優れた施策は残していくべきだと言ってきたが、この分野においても、大変優れた構想を活かしていくということ、エコタウン構想、バイオマスタウンの構想、こういうものを大いに活かすべき。