スピルバーグ監督の自伝的映画です。
ここ数年、アルフォンソ・キュラソー監督の「ROMA」ケネス・ブラマー監督の「ベルファスト」と、映画監督による自伝的作品がいくつも作られています。そして本作は、スピルバーグ監督による自伝的作品です。
アメリカで興行的に今一つだったと聞いていたので、期待する一方、半分不安でもあったのですが、個人的にはとっても楽しめました。前述の２作品が芸術路線だったのに対して、本作はスピルバーグ監督らしいエンターテイメント作品となっています。
さすがは映画のおもしろい見せ方を知り尽くしているスピルバーグだと感じる場面がいくつもありました。
本作は、スピルバーグの映画作りの原体験ともいうべき物語で、両親に連れられて生まれて初めて映画を見て衝撃を受けるところから、ハリウッド映画の世界に入る前までが描かれています。
サミー (スピルバーグがモデル) が両親に連れられて初めて見た映画は「地上最大のショウ」でした。サミーは、列車が大脱線事故を起こす場面の大迫力や臨場感に衝撃を受けますが、そこで終わらないところがすごいです。
彼は、それから間もなくハヌカ (ユダヤ教の祝日) のプレゼントにもらった汽車の模型セットを使って映画のシーンを再現し、ビデオカメラに収めるのです。このエピソードに、スピルバーグは映画監督になるべくして生まれてきたのだ、と思わずにはいられませんでした。
そして、スピルバーグは高校生の時には、クラスメートたちに演技指導をして戦争映画を撮り、母親にアマチュアの域を超えている、と言わしめるほどの才能を開花させます。
本作は、映画はこういう風に撮影するのだというテクニックをあれこれ知ることができて、とてもおもしろかったのですが、一方、映画がもつ恐ろしさについても考えさせられました。
意図せずに撮った映像が、真実を暴き出してしまうことの怖さ。逆に、事実を撮影しているはずの記録映像が、ある意図をもって編集することで明確なメッセージを作り出してしまうことの怖さ。
映画には、時に人々の心や行動を自分の思いのままに動かしてしまう力があるのだということを、スピルバーグ監督からのメッセージ、あるいは警告として受け止めました。
IBMのエンジニアで論理的で現実的な父親と、ピアニストで自由な考えをもつ芸術家肌の母親。スピルバーグは、どちらかというと母親の影響を受けていると感じますが、その母親の「Everything happens for a reason.」ということばが、私の心をとらえました。
実は、私の座右の銘でもあるのですが、後で調べたところマリリン・モンローの名言だと知りました。私はこれまで、このことばのもつ科学的な視点に共鳴していたのですが、芸術家のことばであったとは意外な発見でした。
冒頭の「地上最大のショウ」の特撮画面は今の目で見ても素晴らしいと思いました。
主人公のガブリエル・ラベル、母のミシェル・ウィリアムズ、父のポール・ダノはじめ俳優陣も素晴らしい。
ラストのデイヴィッド・リンチ演じるジョン・フォードの登場に思わず涙。
ハリウッドでの活躍も見たかった気はしますが、ここで終わるのが清いのかな。
本作、スピルバーグ監督らしいエンターテイメントとして
楽しめる作品でしたね。
ラストは一瞬「え？ここで終わるの？」と思いましたが
もう少し見たい、というところで
終わるのがよかったのかもしれません。
ハリウッドに入ってからの活躍は誰もが知るところでもありますものね。
「フェイブルマンズ」、良い映画でしたね。スピルバーグの映画作りのうまさを（毎回ですが）、再確認させられました。
両親との関係なんかも興味深かったし、スピルバーグの映画作りの原点を知る事が出来たのも面白かったです。
それとセレンさんが記事で書かれてる通り、映像の怖さも描いてましたよね。
お母さんの浮気のシーンもだし、いじめっこのイケメンスポーツマンをプロパガンダ的に描いたシーンとかは、映像は編集によってどうにでも嘘をつけるっていうメッセージも怖かったです。
私も最近は、人間をテーマにしたドキュメンタリー以外は、なんとなくあんまり信じられない気もしています。
フェイブルマンズ、よかったです。
さすがはスピルバーグ、とうならせられました。
両親のことは、これだけで一編の映画になるんじゃないかというくらい
繊細で切ないラブストーリーでした。
以前、スピルバーグは恋愛映画を作らない（作れない？）というのを、どこかで読んだことがありますが、ご自身のこうした体験が影響しているのかもしれませんね。
映像の怖さもよく描けていましたね。
知人の話では、テレビ番組は最初から結論ありきで作られていて、発言が誘導され、結論にあわせて都合よく編集される、と言ってました。
常に疑問をもって見ることも大切なのかもしれません。
確かに、あんなことを経験したらそうなるかもですね（汗）
単なる浮気でしたら、軽蔑するだけですが
どうすることもできない切ない思いを知ってしまったのですものね。
スピルバーグにとっては思い出すのもつらい過去なのかもしれません。
観ましたよ～♪
とても良かったです。
＞さすがは映画のおもしろい見せ方を知り尽くしているスピルバーグだと感じる場面がいくつもありました。
そうでしたね～！！監督ってやっぱり人の心を掴むの上手いなぁと改めて感じました。
＞映画には、時に人々の心や行動を自分の思いのままに動かしてしまう力がある
あのいじめっ子のローガンがあんな風に輝いて見えるんですもんね。彼はまさに映えるスタータイプ（見た目）でしたもんね。
スピルバーグを演じた彼、とても良かったですね。
ミシェルもとても魅力的でした。ポール・ダノが切なかったです～。
フェイブルマンズ、ご覧になられたのですね。
スピルバーグ監督の原点を知ることのできる作品でとても興味深かったです。
エンターテイメントとしてもよくできていましたが、ぐっと心をつかむところは、さすがはスピルバーグ！でしたね。
いじめっ子のローガンをあんな風に描いたのは、スピルバーグの小さな復讐心だったのかしら？
映画の後でローガンが傷ついて？サミーを責めていて、ローガンの繊細な一面を見た気がしました。
スピルバーグ役の彼、魅力的でしたね。
両親のラブストーリーには切なくて、ぎゅっと心を締め付けられました。
ようやく配信になったのを見付けました！以前良い映画とおっしゃっていたので、楽しみにしていたんです。
自伝的映画を感傷的にならず淡々と描くのは、父親の理系部分、常に理解を示して支えとなってくれた愛情深いところはスピルバーグの愛にあふれる作風に影響を与えてる気がしました。
それにしてもお父さん可哀想でした…
フェイブルマンズ、私は結構気に入ったのですが
まだ～むさんはいかがでしたか？
この後感想を見にお邪魔しますね。
スピルバーグ、父と母、どちらの部分も受け継いでいますよね。
お父さん、切なかった...
お母さんが、浮気ではなく、どうしようもなく他の人を好きになってしまった
というのが余計につらかったです。