近所にいる女の子を見て(ああ、うちにもあんな女の子がいたらなぁ)と思ったことがあった。
綺麗とか可愛いとか言うのではなく、若い母との二人暮らしで父親の影を見たことがなかったから、欲しいなと秘かに思いを過ぎらせただけの事。
二人は親の家で一日の大半を過ごし、夜になると近くに借りたアパートへ帰っていくようだった。どういう経緯かを問うこともなかったけど、早くに歌など覚え賢さに驚くようなこともあったのに、幼稚園にも行かず小学生になり、中学生になった。
午前十時にお使いに出ると決めていたわたしは、早引け(早退)したらしいその子と頻繁に出くわした。お互い軽く頭を下げる程度で言葉を交わすこともなかったけど、今になると何故、一声掛けなかったのか悔やまれてならない。
淋しそうに肩を落として歩いていく後姿だけが鮮明に思い出される。
お母さんという人は少女の面影の残るような人だったけど、その子がまだ成人しないうちに病死してしまった。
《どうしているかしら》
時々その思いが頭をもたげる・・・元気にしているかしら。
最近、その子の従姉妹に聞いたら「わたしは夜の仕事をしているけど、彼女は最低の仕事」だと言った。
胸を衝かれたまま、わたしの中で凍り付いている。
綺麗とか可愛いとか言うのではなく、若い母との二人暮らしで父親の影を見たことがなかったから、欲しいなと秘かに思いを過ぎらせただけの事。
二人は親の家で一日の大半を過ごし、夜になると近くに借りたアパートへ帰っていくようだった。どういう経緯かを問うこともなかったけど、早くに歌など覚え賢さに驚くようなこともあったのに、幼稚園にも行かず小学生になり、中学生になった。
午前十時にお使いに出ると決めていたわたしは、早引け(早退)したらしいその子と頻繁に出くわした。お互い軽く頭を下げる程度で言葉を交わすこともなかったけど、今になると何故、一声掛けなかったのか悔やまれてならない。
淋しそうに肩を落として歩いていく後姿だけが鮮明に思い出される。
お母さんという人は少女の面影の残るような人だったけど、その子がまだ成人しないうちに病死してしまった。
《どうしているかしら》
時々その思いが頭をもたげる・・・元気にしているかしら。
最近、その子の従姉妹に聞いたら「わたしは夜の仕事をしているけど、彼女は最低の仕事」だと言った。
胸を衝かれたまま、わたしの中で凍り付いている。