続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『禁じられた書物』

2015-07-28 06:52:16 | 美術ノート
 マグリットは、自作の解説を拒んだという。作品に隠された謎にこそ作品の意味があるからであり、それを逐一説明されたのでは、描く根拠を失ってしまう。しかもマグリットの意図には程遠い不明な解説もあったに違いない。
 
 作品から受ける印象、眼差しや脳が捕えたイメージ、どこか違和感がある景色、不思議なムード。(ハテ、あのものは何だったのだろう?)という第一印象こそがマグリットの意図であり、深く立ち入り探るような真似はあくまでも拒否したい、と願ったのだと思う。


 しかし、マグリットの願いどおりの鑑賞者ばかりではなかったのではないか。

 床に立てた奇妙な人差し指、その上には言葉(口)を暗示する球体(鈴)が浮いている。
 開かれた部屋、しかし階段の上には閉ざされた壁面があるばかり…実に空漠とした逃げ場がない部屋の有り様である。
 イレーヌ(Irene)と読める床面の文字。

「きみの指摘には参ったよ、ぼくは居場所を失いそうだ。きみ、口外は勘弁してもらいたいな」
 人差し指は《指摘》であり《口外を禁じる=内密の依頼》だと思う。

『イレーヌ・アモワールの肖像』には燃え立つ情熱と彼女の眼光鋭い表情、それに言葉を暗示する鈴の各種大小が各映る手鏡が床面に立っている。当然倒れるべき立ち位置で奇跡的に存在している有り得ない光景。瞬時に広い海原へと落下していく予兆。
 この緊迫感は看破されたかもしれないことへの疑惑と不安ではないか。


 マグリットの自信を揺るがす困惑である。(とまぁ、個人的な憶測にすぎませんが・・・)
 考えてみるとマグリットの作品は、常に憶測(イメージ)を踏まえた異空間への誘いにある。


(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)

『銀河鉄道の夜』30。

2015-07-28 06:34:07 | 宮沢賢治
 家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはひってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴をぬいで上がりますと、突き当りの大きな扉をあけました。


☆化(形、性質を変えて別のものになる)記の帳(ノート)がある。
 散(バラバラにして)極(いきつくところ)に題(テーマ)がある。
 割(二つに切り裂き)判(区別する)諸(もろもろ)は、新しい考えである。
 継(つなげて)散(バラバラにし)代(入れかわる)ことに拠ると吐く(言う)。
 寂(ひっそりとしてものさびしい)過(罪科)の償いには訥(口が重い)。
 答えの題(解決されるべき事柄)は秘(人に見えないように隠している)。

『城』2035。

2015-07-28 06:01:27 | カフカ覚書
おれは、あのときは村のことがまったくわからず、知った人もなければ、隠れ場所もなく、長途のたびに疲れはて、すっかり途方にくれ、あそこのわらぶとんのうえに横になり、当局からなにをされようと、どうにもできない立場におかれていた。


☆あのときは来世のことがまったくわからず、知人もなく逃げ場もなく、ひどく疲れ果て、まったく助けもなく、来世では藁布団(浮浪者の袋)に横たわり、当局から掴んで引き渡されるような状況だった。