続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

若林奮Ⅰ-1-7[無題]

2015-08-27 06:59:42 | 美術ノート
 1-1-7…ぼこぼこ丸い突起状のものが無数に出ている太い棒状の断片は曲線状に歪んでいる。

 この物体(作品)は地上(床面)に立っているが、見たところ極めて不安定ともいえる危機感を孕んだ形態の有り様である。(倒れないのだろうか)という一線を死守していることが、見る側を緊張させ、思わず力んでしまうという関係を生じさせている。

 気持ちの不協和音を打ち消せない状況/空気である。
 この物は何かの断片なのだろうか、この物が独立して存在していることに違和感がある。この物の所有する空気は見る者を不安定に引き込み、手を差し出し抑えようとする衝動すら覚えてしまう。

 存在価値を問うとしても、何にも結び付けることの出来ない物体である。しかも見る者の視覚を負の方向へ導いてしまう不思議な物体である。負…不安を誘引する心理。

 倒れるかもしれないという予兆を孕んだ空気感は正体の知れない不安を喚起する。ぼこぼことした突起の手触りは、内部の何らかの異変のようでもある。危険なカーブも、この物体そのものが横に倒れていれば、緩く安定を示すものになる。しかし、作品はこの立ち位置なのである。

 わたし達見る者は、時間を想定する。
 現時点に付着しているような密な時間、つまり、この先の時間を想像するから不安定を余儀なくされるのである。そしてその時、この作品の持つ不思議な引力に気付かされる。


(写真は神奈川県立近代美術館『若林奮』図録より)

『城』2065。

2015-08-27 06:29:11 | カフカ覚書
記憶の糸をたどってみると、最初の晩からKをとまどわせたのは、この視線であったし、それどころか、この家族を見るなりすぐに感じたあのいやな印象も、たぶんこの視線のせいであったという気がした。と言っても、この視線そのものは、けっしていやらしいものではなく、うちとけはしないものの、素直さにみちていた。


☆Kは思い出してみると、彼の禁固の様子は同じであり、この眺めであった。それどころかこの一族を見るなりすぐに感じた不快な印象も、多分この眺めのせいであったという気がした。といってもこの眺めそのものは、決して酷いものではなく、打ち解けはしないものの、誠実さに満ちていた。