『港に対する攻撃』
港?本にしか見えませんが・・・。明らかに本の中を開き、ページの境目に突進するかの泡状の物体、一種の思い/視覚が侵入、あるいは攻撃しているという図にしか見えない。
実に抽象的に過ぎて、一見してそれを解するのは難しい。しかし、意図する難しい空気感をリアルに表現したいと切実に望んだ作家の作品。
港とは水陸の転換場所にほかならない。
泡の塊状の物体は、重みを呈して開いた本のページを圧している。凝視しているうちに、本自体が海と陸を暗示しているのだと気づく、左は海、右は陸というように。
ならば、その境である境界線こそが、港である。
海風が陸へ、そして夕凪があり、陸風が海の方へ向かう。
陸風が海へ、そして朝凪があり、海風が陸の方へ向かう。
ごく平穏な日々の中でもこれだけの風の交通、結節点である港。
本という形に置換された現場(港)に対する攻撃、常に風の向きを変える転換点である港の空気圧。この不思議かつ自然の理の空気感を縮小し、本を開いた箇所を現場とした所有。
水陸の境界線は、海風と陸風の攻防に曝されている。この稀有な場を触覚として捉えた作品である。
若林奮の風景描写の眼差しは、独自の経由があるので難解な面を有しているが、ゾクッとする説得力を感じる。
(写真は神奈川県立近代美術館/葉山『若林奮 飛葉と振動』展・図録より)
港?本にしか見えませんが・・・。明らかに本の中を開き、ページの境目に突進するかの泡状の物体、一種の思い/視覚が侵入、あるいは攻撃しているという図にしか見えない。
実に抽象的に過ぎて、一見してそれを解するのは難しい。しかし、意図する難しい空気感をリアルに表現したいと切実に望んだ作家の作品。
港とは水陸の転換場所にほかならない。
泡の塊状の物体は、重みを呈して開いた本のページを圧している。凝視しているうちに、本自体が海と陸を暗示しているのだと気づく、左は海、右は陸というように。
ならば、その境である境界線こそが、港である。
海風が陸へ、そして夕凪があり、陸風が海の方へ向かう。
陸風が海へ、そして朝凪があり、海風が陸の方へ向かう。
ごく平穏な日々の中でもこれだけの風の交通、結節点である港。
本という形に置換された現場(港)に対する攻撃、常に風の向きを変える転換点である港の空気圧。この不思議かつ自然の理の空気感を縮小し、本を開いた箇所を現場とした所有。
水陸の境界線は、海風と陸風の攻防に曝されている。この稀有な場を触覚として捉えた作品である。
若林奮の風景描写の眼差しは、独自の経由があるので難解な面を有しているが、ゾクッとする説得力を感じる。
(写真は神奈川県立近代美術館/葉山『若林奮 飛葉と振動』展・図録より)