「あなた、直観力がありますね」と、占い師は言った。
そういえば、十年くらい前に観てもらった時に「あなた、何か自分だけの仕事をしているでしょう。何ですか」と問われた挙句、「一緒に(占いの)仕事をしませんか」と逆に誘われたことがある。
手相を百パーセント信じているわけではないけれど、過去三度見てもらった経由を総合してみると辻褄が合うのである。
二十才のころには「あなたは家族の面倒に明け暮れますね。ゴミ箱のような暮らしです。でも六十を過ぎればいい人生が待っていますよ」と言われたけど、二十才の身には重すぎて悲観しか残らず忘れたい記憶だった。
そんな老後なんて! けれど、確実に老後ともいうべき時代はやって来る。年老いた身に何のいい人生かと思うけれど、まぁこの程度の幸せで十分なのかもしれない。
与えられた人生、運命を生きる。ただそれだけ・・・。占いと実人生の接点は確かに在るのかもしれない。
寄る辺なくふと観てもらった占星術、身体を大事にし、一歩一歩あの世の階段を昇って逝きたい。
そういえば、「あなた、先祖に守られていますね」とも言ってくれた。先祖・・・会うことのなかったわたしのルーツ・・・思わず襟を正して生きて行かねば、と意を決したことでした。
『風景の魅惑』、魅惑するような風景はどこにあるのだろう。風景を打ち消すかの暗闇が額の中に見えるだけである。
額の中は象徴もしくは主張である。壁に設置されるべき額は台の上に直立している立つようなバランスの条件に欠けている。瞬時であっても、あり得ない光景である。
傍らの銃は赤い壁に立てかけられている。一見安定しているように見えるが、傾き倒れはしないだろうか、すなわち暴発の危機を孕んでいる。
魅惑というより危険な状況の刹那、息をのみ近づき難い現場、空間設定である。
額の影は台の上までははっきり描かれているが、バックの暗闇が、壁なのか深い闇なのかを曖昧にしている。
この中にThe Delights(歓喜)はあるのだろうか、魅惑されるような風景はあるのだろうか。
《ある》と言っているのだから《あるだろう》という短絡的な感想。
「この額の中にあなたの魅惑されるような風景を思い浮かべてください」そう言っているわけではない。むしろそういう風潮を否定している。
PAYSAGEというのは風景という意味らしい。しかし、こうも読めないだろうか。
PAY(報いを受ける)SAGE(賢明、賢明ぶった)
《あなたのその教育された賢明さ、教えられた通りを信じる賢明ぶった物の見方、一発触発、危ないですよ》
マグリットは静かな眼差しで額の中を透視する。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
七、北十字とプリオシン海岸
「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだらうか。」
いきなり、カンパネルラが、思ひ切ったというやうに、少しどもりながら、急きこんで云ひました。
☆死地、僕(わたくし)は、等しく弐(二つ)の解を願う。
化(形、性質を変えて別のものになる)の詞(ことば)を接(つないでいく)。
照(あまねく光があたる=平等)を究(つきつめる)運(めぐりあわせ)である。
あなたは、この柵を一定の境界線だとお考えになってはいけませんわ。バルナバスも、幾度もわたしにそう言ってきかせるのです。
☆この柵は、あなたに許されているが、あなたもまた先祖の決めた境界線に引合されるということはありません。バルナバス(生死の転換点)も、常に改めて注意深く行動しているのです。