『大気中の緑色に属するもの』
大気とは地表面をおおう空気(気体)のことであり、作家はあくまで視野/視界において感受しうる空気感(振動を注視している。
それを彫刻という範疇で表現するという…難題である。
緑色に属するものとは何を指すのだろう。植物(草木)は当然のこととして、なぜ《属する》と付加しているのか。
大気は透明である、しかし光はプリズムに通すと7色に分解される。そして光の3原色は緑・黄・赤であるから、大気中には確かに緑色に属するものは存在していると言える。見えないが在るものでもある。
《見えないけれども在るもの》への固執、確かに見えないものの中に脈々と動いているであろう緑色という色素(光エネルギー)。
緑色といえば、植物であり自然一般を指す。
植物は光合成により光を吸収する。このとき植物の持つ葉緑素(クロロフィル)が、赤色と青色を吸収することで、残りの緑色の光が反射されたり散乱されたりしてわたし達の目には緑色に見えるという。
若林奮は、単に緑の壁(森・森林)を描き提示したのではなく、その緑(森・森林)が緑として見える大気中の振動を提示したのであり、見えない振動への挑戦である。空中(目の前の空気)の微細な揺れを距離感をもって一つの確定としたかったのだと思う。
(写真は神奈川県立近代美術館『若林奮 飛葉と振動』展・図録より)