続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『狂気について瞑想する人物』

2016-12-03 06:56:43 | 美術ノート

 『狂気について瞑想する人物』

 狂気について瞑想するということは、この人物は狂気ではないということである。しかし、頬はこけ、何かを凝視する眼差しの先は無空ではないか。タバコを持つ手の人差し指の緊張は、あたかも何かを確信したかのようである。

 男は呼吸を止め、身を乗り出し、確かに何かを考え集中の態である。
『狂気』という実態も、つかみどころもない対象に向き合うことの鬼気迫る迫真。男の前には白いテーブル(または箱)があるが、それに目を落している風でもないが、前に置かれているということは、その物を内包しているともいえる。ただこの白い物に(テーブルもしくは箱)は、意味を感じる条件を持たない。

 つまり彼の向いている方向には何もない。
 何もない(無空/虚無)世界を凝視、瞑想している、あたかも在るがごとくに。

『狂気とは狂気を瞑想する人物の中に潜んでいる』
 狂気は他者との関連性の欠如の中に、内なる自分との会話を膨らませていくものなのかもしれない。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


『城』2499。

2016-12-03 06:30:39 | カフカ覚書

それとも、アマーリアは、あんたがたがときおり口にする彼女の美しさによって一家を支配しているとでも言うのですか。ところで、あんたがたは、三人とも非常によく似ておいでだが、アマーリアをほかのふたりから区別しているものは、どうも彼女の長所だとは言いにくいですね。僕は、アマーリアに初めて会ったときすでに、あのどんよりとした、あたたかさのない眼つきにぞっとしましたよ。


☆それとも、あなたが言うように、その美点によって支配しているのですか。あなたたち三人は非常によく似ている。二人と区別している点は、不利(立場)だということです。彼女を初めて見たとき、輝きのない冷酷な眼差しに驚きました。