『恋人たち』
頬寄せ合う二人…まさしく恋人たちの姿である、しかし布を被せられた二人にはその表情が見えない。
二人は近しい間柄であり、身体を接近させることを許しあう仲である。ただ必ずしも相手の正体を熟知しているわけではない。
相手の思考・環境との差異は未知であり、どんな亀裂が待っているかは知る由もない。不穏な空気感、滑り落ちるような背景の斜面、水平であるべき水平線には左右に落差がありわずかに傾いている。
仮面の下には驚異が待っているだろうか、信ずべき触感の肌触り、恋人たちの愛の行方は未知である。
『恋人たち』、それはドラマの始まりであり、誰も知らない予感のトキメキがある。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
山男はほんたうに呑んでいゝだらうかとあたりを見ますと、じぶんはいつか町の中ではなく、空のやうに碧いひろい野原のまんなかに、眼のふちの赤い支那人とたつた二人、荷物を間に置いて向ひあつて立つてゐるのでした。
☆太陽の談(話)は沌(物の区別がつかないさま)で現れる。
超(かけ離れている)宙(空間)の空の璧(美しい玉)也。
厳かな丸い夕(日暮れ)の姿を納め沈んでいく。
字で図ると仁(博愛)の仏が現れる。
千(沢山)の光の粒である。
わたしは、この二年間に彼らのうちのだれとも親密な言葉をひと言もかわしたことがありません。底意のあることや嘘八百や正気の沙汰でないことばかりでした。
☆抑圧された年月では先祖と内密な言葉を交わしたことなど少しもなくただ陰険ででっち上げた狂気の沙汰ばかりでした。