『禁じられた書物』
書物というタイトルではあるが、本は見えない。階段のある室内、指の上に描かれた馬の鈴、もしくはそれをiと読ませてIrene、またはSirene(人魚)を浮かび上がらせた、フラットな床面と装飾のない壁面のみの室内である。
以上の条件をもって『禁じられた書物』と題した意図はどこにあるのだろう。
まずイレーヌを指して居り、それは人魚だとも意味を重複させている。人魚、足を持たず陸に上がれぬまま淋しく歌を口ずさむ孤独な姫、あるいは女王。
そのイレーヌの指は第一関節が欠如しているのでは?確かに第一関節の窪みは第二関節のそれより薄いけれど、爪からの長さ(間隔)を推しても奇妙である。(第一関節のみなのは親指だけであるが、親指とは思えない)
指の上方に浮く馬の鈴は、言葉・主張・噂・風評などの暗示であれば、イレーヌの主張、言説を浮上させているのではないか。
目的のない飾り階段、フラットで何の変哲もない床面や壁面の無表情。
《無味乾燥》、声高の主張、それは訊くに値しない不具合(陳腐)がある=禁じられているも同然の書物に等しいと、それとなく揶揄しているのではないか。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
「何だと。何をぬかしやがるんだ。どろぼうめ。きさまが町をはひつたら、おれはすぐ、この支那人はあやしいやつだとどなつてやる。さあどうだ。」
☆化(形、性質を変えて別のものになる)で、化(教え導く)帖(書き記したもの)は、詞(言葉)で納める図りごとである。
バルナバスは、従僕を見かけるたびに、手紙をとりだしては、相手に突きつけました。ときにはわたしを知らない従僕にぶつかったこともあったでしょうし、知っている従僕でも手紙をだまったまま鼻先に付きつけるあの子のやりかたに気をわるくしたということもあるでしょうが
☆バルナバスは従僕を見かけるたびに証明書を出し彼に持たせ、多くの傷痕に助言しました。わたしの知らないこともあったでしょう、怒られても敢えてだまって証明書を指し示したのです。