続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『桟敷席②

2018-03-06 06:53:15 | 美術ノート

 奇妙な空間である。下の劇場や向かいの壁は明るいのに、この席(部屋)には光が差し込んでいない(影がない)。にもかかわらず、彼女たちの着衣の明度は高い。
 第一、こんなに広い桟敷席というものがあるだろうか。

 二つの頭部をもった女はこちらを見ている。こちらは大きく開かれ仕切りさえなく、どれだけ解放されているのかは不明である。
 この人物には男女混合の要素がある。頭髪がないのは男とも思えるし、眉の太さや膝下の足の太さも気になる。コートも紳士使用である。
 赤い口紅やスカート、華奢な手と足先、女性用の靴…しかし男女を一つにする必然性があるだろうか。
 この非現実的な人物は明らかにこちらを見据えてる。こちらはそれこそ本物の現世であり、絵のなかは明らかに異次元(来世)の体である。

 よく見ると椅子の背後に微妙に影が認められる、光源は左というか、こちらからかもしれない。この人物は部屋の中の椅子に腰かけているが、全体微かに浮上している。

 シンプルにして複雑怪奇、妖怪とさえ見える人物や劇場に見いる少女。陽気さは少しもなく暗く沈んだ静謐には行き場のない不自由/閉塞の悲しみが漂っている。
 ここは、冥界という桟敷席ではないか。


(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)


『真空溶媒』⑦

2018-03-06 06:37:50 | 宮沢賢治

   (やあ こんにちは)
   (いや いゝおてんきでうん)
   (どちらへ おさんぽですか
    なるほど ふんふん ときにさくじつ
    ゾンネンタールが没くなつたさうですが
    おききでしたか)
   (いゝえ ちつとも
    ゾンネンタールと はてな
   (りんごが中つたのださうです)
   (りんご ああ なるほど
    それはあそこにみえるりんごでせう)
  はるかに湛へる花紺青の地面から
  その金いろの苹果の樹が
  もくりもくりと延びだしてゐる


☆没(人が死ぬ)註(意味を書き記す)譚(物語)である。
 化(教え導く)根(物事のもと)である照(あまねく光が当たる=平等)
 痴(おろか)を免(許す)根(物事のもと)の平(平等)
 果(結末/果て)の寿(命)を演べる。


『城』2897。

2018-03-06 06:28:56 | カフカ覚書

 待っている人たちは、以上のようなことを小声でおもしろそうに話していた.Kがふしぎのおもったのは、こうして不満がたくさんあるくせに、エルランガーが陳情者たちを世中に召集したことにたいしてはだれも文句を言わないことだった。


☆待っている人たちは、これらのことを半ば公然と話していた。Kが奇異に思ったのは大いに不満があるのにエルランガー(永遠)が待っている人たちを死へと呼びだしたことに対して何も言わないことだった。