『誓言』
石化した巨大なリンゴが幾つかの岩石に支えられてあり、背景は夕照の空である。
石化のリンゴ・・・歳月により浸食されたリンゴであるというマグリットの弁であるが、想像を絶するほど長い時間を経た未来、その時空である。
石化し果てたということは、本来のリンゴの意味を失っているイメージの残骸である。もちろん有機の肉質を持つリンゴではなく、伝説のなかのイメージとしてのリンゴの果てである。
園の中央に命の木と、善悪を知る木とを生えさせた(『創世記』より)
リンゴに被せられたイメージの所以、羞恥を知る人間の目覚めは、人為的な伝承に寄り造られた信仰の一つであり、象徴でもある。それが長い時間を経て形骸化され夕陽(存在における真実)に照らされているという景である。
未来永劫、絶対と信じられているような進行でさえも、いつかは意味を剥奪された遺物と化す。時間は総てを変異させていくが、唯一太陽の存在(真実)は不滅である。
(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図録より)
「あゝ、ぼくはたきぎを持つて来よう。いい天気だねえ。ぼくはぜんたい森へ行くのは大すきなんだ」象はわらつてかう言つた。
☆字を頼りに展(ひろげる)記であり、審(正しいかどうか明らかにする)講(話)は、他意の照(あまねく光が当たる=平等)が現れる。
彼は、この問題をほとんど考えていなかった。ほんとうはビュルゲルが眠ってくれたらよいのになあ、ということしか考えていなかった。しかし、それも自分自身にたいする一種の義務感からそう望んでいただけで、心の底では、この男が眠りにおちるなんていつのことやら見当もつかないという気持がしてきた。
☆彼はこの事件を我来たりと考えていた。本来ビュルゲルが寝入った後(死後)にと望んでいたが、自分自身に対する信ずべき予感からビュルゲルが眠る瞬間など計り知れないと、心の奥底では思っていた。