二重の視点(空間)であり、一つは水平線、一つは巨岩石全体である。
この二つの視点は、よって同位置ではない。巨岩石は手前に描かれているにもかかわらず、目前というよりはこのピレネーの城に至るまでの全体を一望できる距離にあり、しかも地上(水平線)より高い視点である。
つまり物理的な時空に、精神的な時空がオーバーラップしているということである。
精神的な時空=一国一城の主である個の世界は一日にしてなったものではなく築かれた城であるが、物理的な視野(他人)から見える景色ではない。
重力に支配されない精神界ではあるが、この位置を維持するには非常な緊張とたゆまぬ努力(エネルギー)を要する。落下の可能性は火を見るより明らかである。
落ちる(死)宿命は逃れようがないが、この石は《火》を抱いている。この火(思考力)が物理界(自然)に反逆している源である。
マグリットの静かなる闘志(暴力的な火=思考のエネルギー)は静謐な時空に留まっている。
(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)
第五日曜
オツベルかね、そのオツベルは、おれも云はうとしてたんだが、居なくなつたよ。
まあ落ちついてききたまへ。前にはなしたあの象を、オツベルはすこいひどくし過ぎた。
☆題(テーマ)は、語(言葉)の化(形、性質を変えて別のものになる)が要である。
運(巡り合わせ)が拠(よりどころ)である。
絡(つながり)は全て照(あまねく光が当たる=平等)を、化(教え導くこと)である。
「いや、いや」と、ビュルゲルは、Kの考えていることに答え、親切にもKがものを言わなくてもすむようにしてやるかのように言った。「失望ぐらいで尻ごみなさってはいけません。
☆「いや」と、ビュルゲルは言った。しかし答えもまたKの先祖の思想や思慮ある苦労を述べることはなかった。「失望によって止めてしまってはなりません。