続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『ある聖人の回想』③

2019-04-10 06:44:38 | 美術ノート

  カーテン(幕)は遮蔽であると同時に開放でもあり、世界を区切り領域を創るものである。
 ある聖人が創ったと自負する世界、海があり空が開けている。天と地、海と空・・・眩しく栄華を誇った世界観の展開は人々(大衆)を魅了するに余りあるものがあった。

 固く信じた《神》の存在。太古の昔、地球は固まることなく闇の混迷の中を漂っていたのではないか。水と酸素が生物を誕生させた・・・思考のない空無の混沌である。
 億年における時間のなかで猿から類人猿~二足歩行の人類へと進化した。
 時を経て神話が生まれ伝承の神が祀り上げられ、やがて地球上には各所に求心的な《神/聖人》の存在が現れるようになり、人々は信仰(契約・約束)を育んだ。

 ある聖人は「光あれ」と言われ、大空の上の水を天と名づけ、下の水を海と名付けた。
 その地球の未来を誰も知らないが、いつか闇に還り形を失う日が来ないとは断言できない。果てしない宇宙の片隅にあるわが地球、聖人はその果てまでも生き延びるだろうか、そして青い空と海とを創った日の思い出を回想するだろうか・・・マグリットの夢想である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)


『オツベルと象』87

2019-04-10 06:25:48 | 宮沢賢治

オツベルはケースを握ったまま、もうくしやくしやに潰れてゐた。早くも門があいてゐて、グララアガア、グララアガア、象がどしどしなだれ込む。

 握ったままはアクと読んで、悪。
 潰れてがカイと読んで、皆。
 早くはソウと読んで、掃。
 門はモンと読んで、悶。
 象はショウと読んで、傷。
 なだれ込むはコと読んで、去。


☆悪(不快な)皆(すべて)を掃(はらう)。
 悶(もだえ苦しむ)傷(悲しみ)を去(取りさる/なくす)。


『城』3163。

2019-04-10 06:15:49 | カフカ覚書

 Kは、眠っていた。もちろん、ほんとうの眠りとは言えなかった。おそらく、さっき疲労困憊しながらも目をさましていたときよりは、ビュルゲルの言葉がよく聞こえた。しかし、うるさいぞという意識は、消えていた。自由になった感じだった。


☆Kは眠っていた(死)、なるほど実際は小舟での眠り(死)であった。多分、さっき死ぬほど疲れていた時よりも目が覚め、ビュルゲルの言葉はよりよく聞えていた。
 一語一語が耳を打った。しかし眩惑の意識からは解放されていた。