平板であるが、回転を想起させる作品である。
回転させると、当然のことながら《球体》になり、閉じられた空間が生じる。軸を基点とした正円に広がる図形は、平面で認識した形態をことごとく霧消し、全く別の円盤の重なりに変移する。
遠近を示した図形は、回転することで相を変えてしまう。しかし、それらは見えるだろうか?超高速で回転させた場合、フレームの鉛線(金属)が全てを覆い隠してしまうのではないか。
平板で知覚しているから、内部の変化を予想し確信さえもできるのではないか。
在るものが回転によって相を変えることを経験上知っているので予想できるが、この作品の場合、実際には閉じられた空間になる。
にもかかわらず、中の変化を予想し確信に至るほどに納得するという知覚のメカニズム。存在するが見えず、見えているが存在しないという心理上の、否物理的な現象が生じるはずである。
トリック・・・視覚の魔術、しかし幻覚ではない。物理的根拠のある変化を、心理的根拠によって二重の光景を脳裏に刻む不思議な作品である。
写真は(www.tauschen.com)より