Ⅱ-5-4 水没Ⅱ
数えるのが困難なほどの年輪、大樹である。それを人為の術で角柱にしたものを二本並べた上面に溝を掘り数多のカードの整列が無限という風に詰まっている。
限りなく無限に近い現実の様相である。億年の眠り・・・。
地球創生からの長い年月を想起させ、その中の人類が刻んだ時間の表記である。抽象的だが、きっちり集約された人類の時間。
全ては海から誕生し、空無へと帰していく。
繰り返される月日・年月、時間は不可逆であり、歴史に逆行はない。水地球であるわが棲家、過去に刻まれた時間は人の手の届かない海底深くに眠っているに違いない。
人為、人の歴史を抽象化した作品である。そしてそれを「水没」と題している。
金属(鉱物)は比重が高く水に沈むが、木材は水に沈み込むことはない。しかし、あえて「水没」である理由は・・・。
作品にみる時間の重層、沈むはずのない木工が水を吸収し腐植し水没していく時間の提示。生成(誕生)と崩壊(死滅)の想像を超える長い時間の想定である。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館