続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

E・ホッパー「小都市のオフィス」②

2020-06-01 06:53:18 | 美術ノート

 画面を大きく占める窓をかこむ白の色面(壁)。これは室内の男と小都市のビルの上層部(風景)とを対峙させるツールである。繋がっているが分断を強め、一つの空気に融合させない巨きな意思を感じる。

 小都会の真昼、おそらく沢山の人たちが眼下では忙しく働いているのに違いない。しかし、そのざわめきは上まで登って来ない。画の特質から音は排除されるが、もしかしたら、そのざわめきに耳を澄ませているのかもしれない。少なくとも男の関心は机上にはなく、小都市の屋上風景を見つめている。
 男に束縛の形跡はなく自由である。見下ろすといった尊大もみられず、彼のオフィスの窓は大きく開放的である。背後からの指令は不明であるが、しばしの休息くらいは約束された職場であるらしい。

 空はとてつもなく青く透明であり、光も存分に差し込んでいる。小都会という大きな船に乗船している満足と少しの揺らぎ・・・右手は仕事、何気ないが腰のあたりにある左手は軽微な痛みでもあるのだろうか。
 たっぷりした充足感に見えるが、ここには自然がない。周囲は人工物ばかりであり、ここに緑はない。

 肯定だろうか、否定だろうか。光の作る影、目の前の建造物の影の暗さ、室内を縁取る黒い影。光と影は共存であり、一体である。


 写真は日経「画家のまなざし/十選」齋藤芽生より


『忘れえぬ人々』158.

2020-06-01 06:42:25 | 国木田独歩

 ちょうど、大津が溝口に泊まったときの時候であったが、雨の降る晩のこと、大津は独り机に向かって瞑想に沈んでいた。


☆他意の真の講(話)の考えを吐く。
 字には弐(二つ)の考えが有り、巧みに番(組み合わせる)。
 他意は新しく読む記である。
 講(話)は、冥(死者の世界)が総てで、珍しい。


『城』3428。

2020-06-01 06:26:58 | カフカ覚書

だけど、音をたてないで掃除をすることなんかできるものでしょうか。なにしろ、お役人がたが数日間もおられた部屋ですし、おまけに、あの不潔このうえない従僕たちが動きまわっていたのです。やっとわたしたちに明け渡されたそのときには、ノアの洪水をもってしても洗い流すことができないようなありさまです。


☆少しばかりの整理をする必要があるでしょうか。大勢の人たちが滞在していたのです。それは汚らしいの下僕たちです。そこには、そのテーマから自由になった先祖がおり、その先祖の傷痕はノアの洪水でも洗い流すことができない、そういう状況です。