『媚薬』
石化した上着が台座の上に鎮座している。布地が石化するなどということはあり得ない質的変換であり、精神界のあり得ない空想・イメージである。
背景のベタは年代時空の不明という約束事項であり、彩色の朱赤は、熱く心惹かれる沸き立つ感情を示唆している。
《人類という古の祖先の着衣ではないだろうか?》
進化しているであろう遠い未来の人類はすでにそうした呼称ではないかもしれないし、こうした着衣は《謎》と化しているに違いない。
超未来人たちは、DNAの根源・原初に思いを馳せる。遠く時代を隔てた遺物の痕跡を推理する。
これを The Love Potion(媚薬/愛の一服)と呼ばずしてなんとしよう。
遠い過去、原初への愛、恋い焦がれる奇跡の遺物発見、ほんの少しの痕跡からの復元かもしれない。
マグリットは地球の今日までを遠い過去として一括りにするような遠い未来に思いを馳せ、夢想しほくそ笑んでいる。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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