続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『与えられたとせよ:(1)落ちる水(2)照明用ガス』④

2020-06-05 07:02:01 | 美術ノート

 暗幕で光を遮断された部屋(空間)に立つと、むしろ小さな覗き穴の確認は容易になるのではないか。誘い込まれるように覗く仕掛けである。唯一の光は彼女の持つガス燈かもしれない。(実際に作品を見ていないので断言はできないが)

 誘引・・・人の持つ心理作用の究極の焦点。
 驚愕・・・横たわる裸身の大股開き、情欲を誘う意図は微塵もなく、ただ性器を視よ!とばかりの女体そのものの工作である。

 戸惑い・・・存在の原点を直視せよ!ここにいて《それ》を覗き込むことの拒否反応、躊躇。
 見える景色は時間を超越している。女の生死は不明だが、明らかにガス燈を掲げた景には《生》があり《死》は打ち消されている。生息に必須な《水》も見える。
 ジオラマ、縮小された生命の起源は美しくもなく、神秘的でもない。ただそこには生命連鎖をつなぐであろう鍵が提示されている。
 隠すべき秘密は皆無である。成人であれば誰もが知る事実はこんなにもコンパクトであったのか・・・沈思黙考、鑑賞者に否定する論拠があろうはずもない。

 雨風にすぐにでも吹き倒れそうな脆弱な造りは人間の哀れを象徴する。
《覗く》という極小の視界から垣間見える人類の原点。億万といる人類の今日の騒動は、こんな簡素な与えられた奇蹟『(1)落ちる水(2)照明用ガス』から始まったのである。


 写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク www.taschen.comより


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