『凌辱』
女性を力づくで犯すこと、恥をかかせること・・・確かに。
顔面であるべき目・鼻・口が乳房・臍・陰部に置換されている。見るからに恥ずかしい、恥ずべき印象の絵であり、それを指して『凌辱』と題している。
なぜ、見るに忍びなく耐えられない感情を抱くのか。
性はタブーだからである。隠すもの、恥ずべきもの、見せてはならない周知の禁止事項は、法の制御さえ認可される領域である。
しかし、あえて全面(前面)に差し出したマグリットの意図。
背景は雲一つない青空、地平は真っ直ぐ伸びている。
汚点なき穢れなき光景のなかの禁止(タブー)。
存在の原理の主張をはばからない、性(性欲)あっての人類の連鎖である。
『凌辱」、正しくこれは否定されるべき無謀な暴挙である。マグリットは肯定と否定の狭間で真理を探究している。
真理であるが、隠蔽されるべき秘密の領域にある真理である。
『凌辱』という行為、真理のために自ら被ったマグリットの犯罪ではないか。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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