黒いシルエットのような樹木が淡いモノトーンで描かれたパイプの前にはだかっている。空は空に違いないと思うけれど、木の固定されている面は大地だろうか。青色(水色)の大地?大地を暗示するいつもの岩もない。
海上(水上)のオブジェかもしれない。(空でさえも空のような疑似の空)
パイプを描いて『パイプではない』とコメントを書き入れたパイプは、大樹を小さく見せるほどの巨大さに膨張している、この関係。樹木(自然)に隠れたパイプ(理念)
『影』と題している。影とは光を当てられたときの床面などにできる暗い領域をいう。この絵に関する限り、影の領域は主題になるほどの意味を呈していない。
ではなぜ影なのか。影はその物体に似た輪郭を持つ。もちろん照射角度に拠るけれど、この作品の場合、影は樹木であり、パイプそのものではないか。
一つの理念に基ずくもう一つの理念。幻影のように捉えどころがなく、存在を証明する根拠の不確定な暗渠のような思考。
否定する、しかし逆(肯定)もまた真である。この繰り返しに見失いそうになる現実の感覚。
「すべては、机上の空論ならぬ水上の幻影である」と吐露しているような気がする。
(写真は国立新美術館『マグリット展』図録より)
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