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『振動尺試作Ⅱ(2nd Stage)
そもそも振動尺とは何だろう。
わたしたちは常に前を見ている、見ていると必ず消失点というものがある。その先は不明であり、その領域までが極めて個人的な内的空間となる。その領域においてわたしたちは通常、見えるものの形態を通してその空間を実感する。見えないものへの認識は希薄で、意識の外にある。
しかし、若林奮はその見えない空気の振動を物量に置換しようと思索する。困難であるが、凝視あるいは瞑想の域に近い解放された時空への飛躍である。
わたしと前方の空間には時間と空間が在るべくして在り、その物を観ようとすると周りの景色は必然的に姿を消さざるを得ない。
均一な時の刻みの中に障壁となる何らかのストレスともいうべき異物が混入されている、しかし不確かなそれは心的葛藤により圧縮あるいは隠蔽されているに違いない。ストレートな振動尺(仮にそう名付けているもの)というものは無いという前提は必須かもしれない。
見えないもの(無)を現象化するのだから、ある意味自由であるが、若林奮は(絶対)あるいは(確信)を観ようと格闘心酔している。
この示された形態(試作)の前で切ないほどの緊張感に打たれると同時に、攻撃によって崩壊を余儀なくされるような無防備な整列に危機感を覚えてしまう。
『振動尺試作Ⅱ』は、少しの強制により社会性を保持しているが、崩壊の予兆を含んでいるように見えるものである。
(写真は横須賀美術館『若林奮VALLEYS』より)
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