『百粒の雨滴』
百粒は百、多くの(数多の)という意味に違いない。
雨は当然、天から地表に、そして地下深く浸透していく。もちろん蒸発し、天へかえり再び雲からの雨滴になるものもある。
雨、水の循環は億の時間を秘めている。雨滴の履歴を公表することは難しく不可能である。しかし雨滴は厳然として大地に落ち、地下に浸透していく。
地下には幾層もの時代が刻まれており、地球の歴史は動かしがたく残存する。
作品は薄い板状の鉄板を幾層にも重ねていて、出ているからは細い線状のものが数本(任意)出ている。切断されたためつながりを失ったという景である。地層にはその時代の事件(噴火/地震)の痕跡があり、その時空の情報を告げ知らせている。存在するものは何らかの意味を告発している。
すべては重力により下へと沈んでいく。雨滴はどこまで浸透していくだろう、あらゆるものに生気を与え、あらゆるものを酸化させていく。生と死を分ける雨滴は、地下深く地層深くにたどり着く。
『百粒の雨滴』は、地球の糧である。
写真は『若林奮ーVALLEYS』横須賀美術館
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます