続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『水仙月の四日』48。

2021-11-16 06:29:25 | 宮沢賢治

 そして、風と雪と、ぼさぼさの灰のやうな雪のなかで、ほんたうに日は暮れゆきは夜ぢゆう降つて降つて降つたのです。やつと夜明けに近いころ、雪婆んごはも一度、南から北に馳せながら云ひました。

 風と雪・・・風はフと読んで、訃(死の報せ)。雪はセツと読んで、折(死ぬ)。あるいは幽鬼。
 皆(すべて)は、《死》が降つて(コウと読んで、薨/みまかる)降つて降つたという死の境界(領域)の景色。
 雪婆んごはも一度、南から北に馳せながら・・・南はナンと読みnone、北はノース/northからnothingを想起させる。つまり、無から無へ・・・実在ではないということだと思う。(二重の、も一つの話として)


『飯島晴子』(私的解釈)新世界。

2021-11-15 07:23:34 | 飯島晴子

   新世界兎の箱から上陸す

 新世界はシン・セイ・カイと読んで、辛、凄、潰。
 兎の箱はト・ソウと読んで、妬、総。
 上陸はショウ・ロクと読んで、小、鹿。
☆辛く凄(傷ましく)潰(乱れた)妬(ねたみ)の総ては、小さな鹿(争いの対象となる地位や権力のたとえ)による。

 新世界はシン・セイ・カイと読んで、新、政、開。
 兎の箱はト・ソウと読んで、途、創。
 上陸はジョウ・ロクと読んで、条、録。
☆新政が開(始まる)途(みちすじ)を創(作る)のは、条(物事の筋道)の録(書き記したもの)である。

 新世界はシン・セイ・カイと読んで、新、星、届。
 兎の箱はト・ソウと読んで、図、層。
 上陸はジョウ・ロクと読んで、状、録。
☆新星を届ける図は、層(幾重にも重なる)状(ありさま)の録(書き記したもの)である。

※新しい世界(世界観)の図(計画)は、層(幾重にも重ね)詳録(詳しく書き記すこと)にある。


ホッパー『線路沿いの家』

2021-11-15 06:49:01 | 美術ノート

   『線路沿いの家』

 視線は線路沿いの少し下にある。家は仰ぐような角度で描かれている。明々白々の建屋であるが敷地面積や庭の様子は不明である。しかし、この建築物に不審はなく日当たりのいい立地であり怪しい箇所は探せない。

『線路沿いの家』である。
 当然、汽車あるいは電車が通過する。その瞬間、この家は消失、見えなくなる。たしかに存在するが、確かに視界から消えてしまう。
 この絵には確かに行き来する《電車》が描いてないのに見えてくるのである。

 作家は存在の有無を考える。存在とは何か、と。存在は存在によって隠され、存在するが、非存在となる。
 見えたり見えなくなったりする真実。見えることの不確実性は精神に大きく影響するが、物理的観点からは現象としての事実だけが残存する。

『線路沿いの家』は視覚を問う根拠である。

 写真は『HOPPER』(岩波 世界の巨匠より)


『水仙月の四日』47。

2021-11-15 06:33:23 | 宮沢賢治

「さあ、しつかり、今日は夜の二時までやすみなしだよ。ここらは水仙月の四日なんだから、やすんぢやいけない。さあ、降らしておくれ。ひゆう、ひゆうひゆう、ひゆひゆう。
 雪婆んごはまた遠くの風の中で叫びました。

 まだ三時にもならないのに~夜の二時まで・・・ちょうど二十四時間である。水仙月の四日の特別、《ここらは》と念を入れている。つまり世界中という訳ではなく、この辺り、この四日の月が舟の形に見えるあたりと限定している。

 ひゆう、非有…存在を消す、生から死へと転移させるんだよ、と雪婆んご(死神)は叫んでいる。この四日月が舟の形に見える領域全土を行き来(遠くまで)していると思われる。


ホッパー『階段』

2021-11-14 07:13:17 | 美術ノート

   『階段』

 何て不思議な絵。作家は階段の途中に立ち、戸外の山に対峙している。
 日中の日差しであるが、山は暗く、太陽は山の向こうに落ちている。この家はよほど低い位置にあるのだろうか。
 山と家の距離がつかめないが、この床面は高い位置にあり、ドアには階下に降りる階段が隠れて見えないが、在ると思われる。(右端の壁のカーテン、怪しい?)

『階段』は室内の階段を主テーマにしているのではなく、眼下にあるはずの隠れた階段を描いたものである。

 見えていないもの(対象)を、主題にする。これはある意味《ミステリー》であり、この絵の不思議な魅惑はここにあると思う。

 写真は岩波 世界の巨匠『HOPPER』より


『飯島晴子』(私的解釈)青ぶだう。

2021-11-14 06:34:50 | 飯島晴子

   青ぶだう人間の腕詰る闇

 青ぶだう(青葡萄)はショウ・ブ・トウと読んで、渉、侮、倒。
 人間の腕はニン・ゲン・ワンと読んで、人、現、彎。
 詰る闇はキツ・アンと読んで、喫、暗。
☆渉(川などを歩いて渡ること)を侮り倒(ひっくり返る)人が現れる。
 彎(弓なりに曲がるところ)を喫(身に受ける)暗(おろか)がある。

  青ぶどう(青葡萄)はショウ・ホ・トウと読んで、照、圃、稲。
 人間の腕はジン・ケン・ワンと読んで、尽、堅、彎。
 詰る闇はキツ・アンと読んで、詰、安。
☆照(あまねく光が当たる)圃(畑)の稲は尽(ことごとく)堅(丈夫) である。
 彎(弓なりに曲がり)詰(かがまると)安(安心、心配がない)。

 青ぶどう(青葡萄)はショウ・ブ・トウと読んで、声、撫、糖。
 人間の腕はニン・カン・ワンと読んで、忍、甘、ワン(一つ)。
 詰る闇はキツ・アンと読んで、喫、案。
☆声を撫(労わり)糖(あめ)を忍(しのばせる)。
 甘いものを一つ喫(口にする)案(考え)である。 


『飯島晴子』(私的解釈)瓜すゝる。

2021-11-13 06:37:26 | 飯島晴子

   瓜すゝる天の河原に身を起し

 瓜すゝる(瓜啜)はカ・セツと読んで、佳、説。
 天の河原はテン・コウ・ゲンと読んで、展、公、言。
 身を起こしはシン・キと読んで、振、起。
☆佳(すぐれた)説(はなし)を展(くりひろげる)と公言し、振起(奮い立つ)。

 瓜すゝる(瓜啜)はカ・テツと読んで、化、迭。
 天の河原はテン・コウ・ゲンと読んで、転、講、現。
 身を起しはシン・キと読んで、新、規。
☆化(形、性質を変えて別のものになる)で迭(他のものと取り換える)。
 転(ひっくりかえる)講(話)が現れる新奇(新しくて珍しいこと))がある。

 瓜すゝる(瓜)はカ・テツと読んで、荷、跌。
 天の河原はテン・コウ・ゲンと読んで、転、恒、厳。
 身を起しはシン・キと読んで、慎、記。
☆荷で跌(つまずき)転(ひっくり返る)恒(つね)。
 厳しく慎(過ちのないように気を配り)記(心に留める)。

 


『飯島晴子』(私的解釈)老蝉の。

2021-11-12 07:43:23 | 飯島晴子

   老蝉の眼を人の走りけり

 老蝉はロウ・センと読んで、朧、山。
 眼を人の走りはゲン・ニン・ソウと読んで、限、認、喪。
☆朧(ぼんやり霞む)山、限(境目)を認(見分けること)を喪(失う)。

 老蝉はロウ・センと読んで、浪、戦。
 眼を人の走りはゲン・ジン・ソウと読んで、原、尽、嗾。
☆浪(無駄な)戦い。
 原(事の起こり)は尽(すべて)嗾(けしかけたこと)による。

 老蝉はロウ・センと読んで、労、選。
 眼を人の走りはゲン・ニン・ソウと読んで、厳、認、想。
☆労(力を尽くして働き)選(多くの中からえらぶ)。
 厳しく認(見分ける)と、想いがある。


M『色彩の変化』

2021-11-12 07:07:19 | 美術ノート

   『色彩の変化』

 奇妙な絵である、色彩とは何だったか・・・物事のもつ傾向、性質。

 枕・・・夢/非現実。
 フレーム…提示すべきものを掲げるもの、強調。
 壁と見えるものは壁だろうか、床面との空間を仕切るものではないが、フレームの影があり、間隔、距離、隙間を見せている。
 フレームは浮いているように見え、落ちることなく固定し、形は変形であり二つの画面を示している。一方はブルーに雲のような流動的なものが浮遊しており、他方は漆黒の闇、黒である。
 その後ろ、背景は無限に続くような黒白の模様であり平面に見える。

 全体、奥行きのない空間に見えるが不安定であり、時間の概念を外している。

『色彩の変化』・・・ある種の予感、静謐・流動・現実・非現実・重力の否定…はっきりしているのに不明な画面構成、混沌。
 枕の持つ現実と夢想、色彩とは精神界かもしれない。

 写真は『マグリット』展・図録より


『水仙月の四日』46。

2021-11-12 06:50:41 | 宮沢賢治

「さうして睡つておいで。布団をたくさんかけてあげるから。さうすれば凍えないんだよ。あしたの朝までカリメラの夢を見ておいで。」
 雪わらすは同じとこを何べんもかけて、雪をたくさんこどもの上にかぶせました。まもなく赤い毛布も見えなくなり、あたりとの高さも同じになつてしまひました。
「あのこどもは、ぼくのやつたやどりぎをもつてゐた。」雪童子はつぶやいて、ちよつと泣くやうにしました。

 赤い毛布…釈(薄い)《亡・訃》は見えなくなり・・・。
「あのこどもは、ぼくのやったやどりぎ《一時的に身を置く鬼(死者)》を持っていた。雪童子(死の導師)は、少し泣くようにしました。
 雪童子(死の導師)には迷いがある。雪婆んご(死神)に翻弄されながらも救済を願っている。

 物語の下には交錯する思いが二重になっており、正負のせめぎあいが静かに揺れている。