「だから《鬼瓦警部》やって、ゆーてるやん!」
なんて嘆き節を発したくなるのは、いつも旅先のことである。
私は旅行好きであり、ひまさえあればザック背中に外国を経めぐったバックパッカーというやつだ。
みなが女の子とデートしたり、将来に備えてせっせと貯金にはげむのを尻目に、海外をほっつきあるいていたせいで、末は孤独死決定の独身貴族だが、そんな人生を送っている「あるある」にこういうものがある。
「だれかと一緒に旅行に行くと、なんとなく頼られてしまう」
外国に行くというのは楽しい反面、多少の不安もともなうものである。
言葉が通じないとか、なれない食べ物でお腹をこわさないかとか、買物でボッタクリにあわないか、スリや置き引きに合わないか、などなど。
そういったとき、彼ら彼女らはそっとうかがうように、こちらを見るのだ。
「頼むで」と。
これに対して、私は声を大にして言いたいわけだ。
それ、無理やから。
言っておくが、私は旅行が好きで、数もそれなりにこなしているという自負はあるが、
「旅の技術」
「トラブル対処法」
などにおいては、ほとんど成長のないタイプである。
言葉はいわゆる「中2英語」程度だし、ホテル探しは嫌いだし、バスや地下鉄の券など買うのは人の3倍くらい時間がかかる。
さらにいえば、私はまあまあの方向音痴である。
「旅なれた人」と一緒に旅行する人というのは、わりかし安気というか、完全に「おまかせ」して温泉気分な人が多いが、そんなことをしていてはまともな観光などできるはずがない。
私見では、旅行の際チャキチャキと事務処理をこなし「幹事」「ガイド」の役割ができる人は、その通り「仕事ができる」人に多い。
それに比べて、私は仕事ができない。
もう、東京03の角田さんの口調で、しみじみと、
「そう、オレは仕事ができない。できないんだ!」
力説して、飯塚さんに「そんな力強く言うことじゃないよ、それ」と、あきれてつっこまれたいくらいに、できないんである。
そもそも私が旅行が好きなのは、そういう「仕事」と無縁でいられるからだ。
特に一人旅は、言葉が通じなかろうが、道に迷おうが、忘れ物をしようが平気の平左。
ホテルが見つからなかろうが、バスのチケットの取り方がわからず1時間近くウロウロしようが、なんの文句も言われない。
「自由であること」
これこそが旅の醍醐味であるのに、そこに
「チャキチャキ仕事すること」
という逆噴射な思想など入り込む余地はなく、結局いつまでたってもスキルも上がらない。
でもいいんである。それが楽しいから。
なもんで、海外旅行に不安のある人は、決して「旅なれている」からといって、私のようなボンクラを頼りにしないように。
いや、これは言い訳とかではなく
「予定通りに行かない」
「てか、そんなもん無視していい」
ことこそが、自由旅行の本当の楽しさなのですから。
(続く)