いつまでも旅慣れないバックパッカーの名は鬼瓦警部

2024年03月03日 | 海外旅行

 「だから《鬼瓦警部》やって、ゆーてるやん!」

 

 なんて嘆き節を発したくなるのは、いつも旅先のことである。

 私は旅行好きであり、ひまさえあればザック背中に外国を経めぐったバックパッカーというやつだ。

 みなが女の子とデートしたり、将来に備えてせっせと貯金にはげむのを尻目に、海外をほっつきあるいていたせいで、末は孤独死決定の独身貴族だが、そんな人生を送っている「あるある」にこういうものがある。

 

 「だれかと一緒に旅行に行くと、なんとなくられてしまう」

 

 外国に行くというのは楽しい反面、多少の不安もともなうものである。

 言葉が通じないとか、なれない食べ物でお腹をこわさないかとか、買物でボッタクリにあわないか、スリ置き引きに合わないか、などなど。

 そういったとき、彼ら彼女らはそっとうかがうように、こちらを見るのだ。

 「頼むで」と。
 
 これに対して、私は声を大にして言いたいわけだ。

 それ、無理やから。

 言っておくが、私は旅行が好きで、数もそれなりにこなしているという自負はあるが、

 

 「旅の技術」

 「トラブル対処法」

 

 などにおいては、ほとんど成長のないタイプである。

 言葉はいわゆる「中2英語」程度だし、ホテル探しは嫌いだし、バス地下鉄の券など買うのは人の3倍くらい時間がかかる。

 さらにいえば、私はまあまあの方向音痴である。

 「旅なれた人」と一緒に旅行する人というのは、わりかし安気というか、完全に「おまかせ」して温泉気分な人が多いが、そんなことをしていてはまともな観光などできるはずがない。

 ボヤボヤしてると、明らかに繁華街から離れたところを歩かされ、
 
 
 「これ、どこ向かってんの?」
 
 「さあ……」
 
 「え? エッフェル塔を見に行くはずやなかったん?」
 
 「らしいけど、どこやろ」
 
 「どこって、知らんと歩いてた? もしかして迷子になってる?」
 
 「そうやで。気づいてなかった?」
 
 
 なんてハメにおちいるが、もちろん一切の責任はこちらにはない。
 
 こう見えて私は「自助努力」という言葉を重んじるタイプでなのである。要するに投げっぱ。

 私見では、旅行の際チャキチャキと事務処理をこなし「幹事」「ガイド」の役割ができる人は、その通り「仕事ができる」人に多い。

 それに比べて、私は仕事ができない。

 もう、東京03角田さんの口調で、しみじみと、

 

 「そう、オレは仕事ができない。できないんだ!」

 

 力説して、飯塚さんに「そんな力強く言うことじゃないよ、それ」と、あきれてつっこまれたいくらいに、できないんである。

 そもそも私が旅行が好きなのは、そういう「仕事」と無縁でいられるからだ。

 特に一人旅は、言葉が通じなかろうが、に迷おうが、忘れ物をしようが平気の平左。

 ホテルが見つからなかろうが、バスのチケットの取り方がわからず1時間近くウロウロしようが、なんの文句も言われない。

 

 「自由であること」

 

 これこそが旅の醍醐味であるのに、そこに

 

 「チャキチャキ仕事すること」

 

 という逆噴射な思想など入り込む余地はなく、結局いつまでたってもスキルも上がらない。

 でもいいんである。それが楽しいから。

 なもんで、海外旅行に不安のある人は、決して「旅なれている」からといって、私のようなボンクラを頼りにしないように。

 いや、これは言い訳とかではなく

 

 「予定通りに行かない」

 「てか、そんなもん無視していい」

 

 ことこそが、自由旅行の本当の楽しさなのですから。

 

 (続く

 

 


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