レニ・リーフェンシュタール『オリンピア』を観る。
パリ オリンピックで世界は連日、盛り上がりを見せているが、4年に1度のこの季節、個人的にひとつイベントというか、景気づけのようなものとして、この映画を観るのが習慣になっているのだ。
それがドイツ映画の『オリンピア』。
古い映画やドイツ史にくわしい方は、ご存じであろう。
1936年に開催された、手塚治虫『アドルフに告ぐ』でもおなじみ、NSDAP(ナチスの正式名称)政権下のベルリン・オリンピックの記録映画。
かの『キネマ旬報』で1940年度外国映画部門1位を取り、小林秀雄も絶賛する映像技術や、編集センスのすばらしさのみならず、
「ナチのプロパガンダ作品ではないのか」
「いや、そういう色眼鏡を通さず見るべし、ドキュメンタリー映画としては傑作なのだから」
などなど、なにかと論議を呼ぶ文字通りの問題作だ。
ちなみに『オリンピア』は通称で、正式名称は『民族の祭典』『美の祭典』の2部作。
監督したレニ・リーフェンシュタールに「罪」「責任」があるかどうかはむずかしい問題で、私ごときがどうこう言えるものではないが、こと「映画史」的にだけしぼって見れば、レニの言う通り、
「あの時代に生まれたのが失敗」
なのは間違いなく、他の時代、他の国に生まれていたら、アルフレッド・ヒッチコックやフランソワ・トリュフォーなんかにも負けない大監督として、確実に名を残していたはずなのだから。
その観点から言えば、ただただ「もったいない」としか言いようがない。
そんな『オリンピア』だが、そのへんのバイアスはとりあえず置いて、純粋に映画として見ると、これはもうただの大傑作です。
1部、2部合わせると約3時間半の大作だけど、観ていても長さを感じない。
馬術のシーンはちょっと冗長に感じるけど、それ以外はこんな古い映画なのに、全然退屈しない。
やはり「映える」のは、トリをつとめる高飛びこみ。
様々なアングルから、きたえあげられた体が宙を舞い、華麗な空中回転を決めながらプールに吸いこまれていく。
こいつが、これでもかと何度も繰り返され、なんとも美しすぎて陶然となる。
ほとんどドラッグムービー。いつまででも見ていられる。まさに「美の祭典」。
スポーツは好きだけど、「肉体美」のようなものに興味の薄い私がこうなるのだから、ホントにすごいもんだ。
そら、いろいろ言われても、レニの評価自体は高いはずや。おみそれしました。
実際、これをカラーにしてデジタルリマスターとかでキレイな画面に整理しなおして観てみたいんだよなー。
そんなことすら感じさせるほど、レニの才能とセンスがほとばしっている。
それにしても、これに影響を受けたと言われる市川崑の『東京オリンピック』は、なぜにて、あんなにつまんないんだろう。
同じような内容のはずなのにねえ。