『アオイホノオ』が今熱い。
関西では毎週月曜日に放送しているのだが、ここしばらくは『月曜は夜ふかし』の代わりに、こちらを録画して見ている。
いやあ、こらおもろいですわ。
ふだんあまりテレビドラマを見ない私が、なぜにてそんなに盛り上がっているのかと言えば、もちろんドラマ自体がおもしろいというのもあるけど、それよりもなによりも、大阪芸大を舞台に奮闘する登場人物たちに大いなる共感と郷愁を覚えるから。
そう、なんといっても10代、20代のころは私も庵野さんや赤井さん、そして主人公であるモユル君のごとき、
「『なにかを表現したい願望』がほとばしるボンクラ男子」
であったからなのだ。
私自身、読書や映画が好きで漠然と、
「こういうものを、自分で作れたらいいだろうなあ」
なんて夢想したりする少年であったが、それが具体性を持ったのは高校の部活からであった。
そこで初めて舞台上でパフォーマンスをし、それがウケたときに、
「世界には、こんな快感があるのか!」
と開眼。庵野さんやモユル君は「アニメ」「マンガ」だったが、私も演劇や落語で舞台に立ったり、自主映画を作ってる友人を手伝ったり、ミニコミを作ったりと、(もちろんドラマの彼らとは比ぶべくもないレベルの話ですが)アクティブに活動していたのだ。
私自身はモユル君のごとく「絶対プロになる!」という熱いタイプではなかったけど、素人とはいえそういうことをして遊んでいると、自然、周囲もそういった自意識過剰な「表現したい君」「したい子ちゃん」が集まってくることになる。
映画監督や某アニメーション学院に通ってる声優にマンガ家、舞台女優にノンフィクション・ライターにミュージシャン、ゲームクリエイター、詰将棋作家などなどが跳梁跋扈。
もちろん、その多くは頭に「自称」かお尻に「の卵」がつくが、プロとして活躍する人もいたし、その流れでジュニア小説家(今で言うライトノベル)、果てはポルノ作家といった、やや風変わりな仕事をしている方のお話を聞く機会もあったりしたものだ。
ともかくも、プロアマ問わず、金にもならず才能があるかどうかもわからないのに養成所に通ったり、シコシコと原稿用紙のマス目を埋めたり、むやみに楽器をかき鳴らしたり、プログラムを組んだりといったヤカラがあとを絶たなかったのである。
彼ら彼女らは、おそらくどこかで15歳の時の私のような、
「嗚呼、こんな快感が世界にはあるのか!」
という爆発があったり、映画やマンガなどを観て「こんなすごいものをオレもつくってみたい!」という感激があったり、
「オレには人と違う才能がある。そこいらの平凡な連中とは違うのだ」
という自意識があったり、その他とにかく世に出たいとか単に一発当てたい子などなど様々であろうが、そこにあるのはとにかく、
「今、自分の中にある、このモヤモヤしたなにかを、形あるモノにして発表したい!」
というマグマのような衝動。それにとらわれた、因果な連中といえるわけなのだ。
なんといっても私は、世の中に「表現活動をしようと思わなくても人生が充実している人」が存在するというか、むしろそっちの方が社会的には多数派であることに気づいたのは23、4歳くらいになってからだったくらいだ。
なんという偏った人脈、と人生大反省だが、まっとうな社会人的にはまさに「ご愁傷様」としかいいようがない人種。
そういったある種「取り憑かれた」人とつきあって、自分もその中で遊んでいたため、こういう「文化系」の若者の物語に私はどうにも弱いのである。
だから、ドラマの中の事件やセリフにいちいちビビッドに反応してしまい、
「100%の出来ではないから、オレはあえて課題を出さん!」
とか、
「なぜ自分以上の才能を見せつけられて、お前らは拍手できるんだ。オレはオレのよりもすぐれた作品など見たくはない!」
とか、
「僕は笑いを取ろうとしたんじゃない。感動させようとして、これを作ったんだ!」
とか、もう「わっかるわあ」とか「こんなヤツおったなあ」とか、頭をかかえて「アイタタタタ……」とか、もう泣き笑い。
当時の自分や友人たちを思い出して、ことあるごとに胸を突くんだ、コレが。
このドラマは多くのプロの作家やクリエイターに支持されているらしいが、本職ならずとも、すべての「表現したい君」や「表現したい子ちゃん」皆が、いたたまれない苦笑いに悶絶していることであろう。
文化部所属学生やクリエイター志願の若者は見るべし、見るべし。大槻ケンヂさんの『グミ・チョコレート・パイン』とこれは、「表現したい若者」必読必見の二巨塔であろう。
(次回【→こちら】に続く)
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