時が満ちていく。
朝露に濡れる蕾が夜明けに花弁をひらくとき、小さな水滴が雫となって彼らを潤す。
眠っていた大地が息を吹き返し、今日を始める。
散りばめられた答えの欠片が、ゆっくりと『今』という地点に吸い寄せられ、集結していく。
なにもかもが、この《約束の時》を待っていたかのように。
彼女の中で息を潜め、じっとうずくまっていたものが動き出す。
真実の刃が、強く頑なに閉じた強固な殻をついに打ち割る。
遠く葬られたはずのものは、彼女の中の深く暗い淵に沈み、誰にも気づかれず、しかしずっとこの瞬間を願っていた。
思いがけぬ衝撃ののち、彼女の内側と外側はようやく繋がり、深く同時に呼吸を始める。
陽光が射抜く万物の鮮やかなる彩りを、彼女は『今』はじめて知った。まっさらな光は彼女を貫き、細胞を駆け巡る。
新しく顕れたその世界では、時は過ぎることをやめ、満ちていく。