眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

風邪

2024-11-19 | 
朝晩の気温の変化の激しさと、日頃の行いの悪さで風邪をひいた。
寒気はするし頭は割れるほど痛い。
あるだけの薬をワインで飲み干して寝た。
ベットの上で目覚めると、少女の心配そうな顔がぼんやり見えた。

  「あなたね。
   どうして風邪ひいてるのにお酒なんか飲むのよ?」

  「玉子酒が利くっていうからさ。」

  「お酒が良いわけないわ。だいいちワインに卵なんかはいっていないじゃない。」    

彼女が呆れた顔をする。
   でも・・・。
言い訳しようとする僕に、少女は、さっさっと寝なさい、と言った。

朝方にもの凄い寒気で目が覚めた。
少女は林檎を小さく切って、僕の口にほうり込んだ。
冷たくて美味しい。
また眠気が襲ってきた。

   どれくらい寝たのだろう?

    起きると、少女はじっとこちらを見ていた。
    
     寝てないの?
    あなたがわたしの分まで寝たわ。

   コップに水を汲んでくれた。

    いまは何時?
   朝よ。まる一日眠っていたわ。

 気分は?
  
   悪くない。熱も下がっているようだ。
    彼女は僕の額に手をのせた。
  もう大丈夫よ。
   彼女がそういうと、人生の何もかもが上手くいきそうな気がした。

 だいいち、
  「あなたね、お薬ばかり飲んじゃだめよ。」

  パンとサラダを僕の口につっこみながらつぶやいた。
   今のひとはみいんな、そうよ。
  そして、おおきなグラスを持ってきた。
 よくわからない緑色の液体がなみなみと入っている。

   なに、これ?

  「ヨモギよ。これで風邪なんかすぐ治るんだから。」
   まじめな顔で少女はじっと僕の目をみた。
    一口飲んでみると、すごく苦い。
  「これ、ぜんぶ飲まないといけないのかな?やっぱり。」
   あたりまえでしょ。
  昔は、これでからだの悪いものよくしたのよ。おばあちゃん達がいつも云ってるわ。  
   苦いんだけど。
  そう云うと
   あんまりわがままいうんだったらバケツいっぱい飲ませるわよ。
    というので、しょうがなくグラスの緑色の液体を飲み干した。

  これで。
   良くなるわ、眠りなさい。

     僕は深くねむった。

  つぎに目が覚めると、風邪は良くなっていた。
少女は、椅子で毛布に包まって本を読んでいた。

   何を読んでるの?
    童話よ。それより風邪、治った?
   うん。だいぶいい。
    よかったわね。

   窓の外は柔らかな日差しをはこんでくれた。

   僕らはならんで、はっか煙草を吸った。
    一本だけよ。
     彼女は今日一日、僕を監視するつもりらしい。

    お薬なんかより。
   おばあちゃん達のほうが治し方知ってるのよ。
    
   そういって、またヨモギ入りのグラスを僕の目の前に置いた。

    飲みなさい。治っちゃうから、わるいところぜんぶ。

     今度は僕も黙って飲み干した。

     わるいところぜんぶ治るから。

      少女はとても優しい笑顔を浮かべている。










   
  
コメント
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