眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

2008-02-23 | 
効果音は饒舌で
 したたらずな僕の呟きは
  街の交差点の車の嘆きにかき消された
   灰色のコートに身を潜め
    レコード屋を散策した
     路上の風景は何時か見た
      混雑する人の群れ
       気を抜くと意識が飛びそうになった深夜徘徊
        友人が馴れた道案内で街を案内する
         僕はポケットに手を突っ込み
          そうして吐く息が永遠に白かった

          旅に出た
         薄っすらとした風景に身を委ね
        飛行機が加速する
       窓越しに僕の現実が記憶の階段を
      螺旋に上って行った
     ジャスミンテーィーの香りを嗅ぎながら
    機内アナウンスを聞く
   シートベルトをお締め下さい
  寝不足の加減でいろんな夢を見た
 夢の中で父が微笑み哀しみが飽和した

  中華街を二時間歩き回った
   人気の店には人の行列が並んだ
    路上で手渡された栗をかじった
     夢の頃合
      断続的な記憶が目の前を流れてゆく
       ただの一度しか来た事がなかったこの街で
        奇妙な懐かしさを憶えた
         此処と彼岸の境界の境目が
          幻の様に目に映った
           まるで古い白黒映画を見る感触で

            僕は確認しに来たのだ
           それらの光景が現実だったことを
          あの暑い夏の日の記憶が
         実際は夢ではなかった事を追う
        この街を訪れる勇気を持つのに
       三年の月日が必要だったのだ

      旅に出なさい

     猫がささやいた
    信じられないくらい寒かった
   ポケットに手を突っ込んでも指先がかじかんだ
  
  最後の日
 病院の庭で弟と煙草を吸った
あれは遠くて近い夏の日の明け方
 主治医の説明と心電図の音が交錯していた
  喉が渇いて仕方なかったのだろう
   意識の無い父親は
    脱脂綿に含ませた水を吸い込んでいた
     
     哀しみが飽和する

      僕らは明け方
       並んで煙草を吸った
        僕はこの三年間、いったい何をしてきたのだろう?
         弟が云った
          生きていたのさ
           それを確認する為に此処にきたんだろう?
            僕らは冷静に3本目の煙草に灯を点けた
            
             そろそろ飛行機の時間だよ
              弟が僕を促した
             僕らはベンチから立ち上がって
            同時に後ろを振り返った
           此処には
          此処にはパパは居ないね
         ちゃんと島に帰ったんだね
        魂は家に辿り着いたのだ
       
       帰れる家があるというのは、
      幸せなことだ
     だから家をつくったんだよ。
    みんなが何があってもちゃんと帰れるようにね。

   父親の言葉が木魂した

  そうして魂はちゃんと家に帰り着いたのだ
 
 行こう

弟が譲り受けた父親の車で
 僕を空港まで送ってくれた

  帰ろう
   家に
    あなたが待つ家に
     たとえ何処かの世界ですれ違っても
      僕らはあなたの匂いにきっと気がつく
       あなたはいつものように優しく微笑むのだろう
        
          

        それが愛だ








        








  
    
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LIVING

2008-02-12 | 日記
僕は今を語れない。
いつも過ぎた昔をこう語る、「あのころは」と。
どうしてだろう?
たぶん、時間が経たなければ言葉にできないんだ、確信がもてない。
時が解決してくれることは、痛いほど身に染みている。だから、月夜の晩にひとりきりでビールを飲み、煙草をくわえる。
さしずめ、今という時間を語るとすれば出てくる言葉は決まっている。
   
   「助けて」

優しい人は、限りない優しさと手に負えないもどかしさで沈黙を保ち、やがて皆がそうであったようにいつしか僕の存在を過去にしてしまう。
僕はうっとしがられ、ある時には今を語れ、と切り捨てられる。
もっともな話だ。
できるならば、僕も年齢相応に今を語るべきなのだろうか?

人の思考回路は複雑だ。
その迷路を潜り抜けて答えが出るまでには時間が必要なのだ。
時間をかけなければ言葉は存在を見失う。呆れるほど饒舌に、言葉は口から垂れ流される。まるで飼い犬の、餌を欲しがる涎のようにだ。
それに自信をもてるのかい?自分に言い聞かせるように、僕は情報をただぼんやりと眺めている。
僕は今の意見が、確信を持って口に出来ない。
僕は傍観者なのだ。呆れるほどに弱く、今という瞬間に乗り込むことにあきらかに遅れている。
現実は、かようにシビアなのだ。

時間が必要だ。
平和にも、人を愛することにも。
はじめから親しげな顔には心を許せないんだ。
時を潜り抜けた物、それは必要最小限だ。それだけ考え、体験し、愛した証のように想う。

くだらない日常の瑣末な想いを詩に託す。
ほかに語るべきことはたくさんあるだろう?いつもその言葉に卑屈になる。でもね・・・。
口にする言葉にほんとに自信が持てるのかい?

       「LIVING」

生きること。
目には目を、それもいいだろう。でもそれだけじゃあ世界は盲目になる。
生きること。
人を愛し、信用し裏切られ。有頂天になりどん底に叩き落されること。
世界は複雑で奇妙だ。

       「LIVING」

ちいさな頃から詩を描く事は夢だった。
そうして、そんな夢をささやかな暮らしのなかに散りばめている。
この言葉たちは僕の生きた証だ。
たくさんの夢と絶望、苦しみと哀しみ。優しさと人の柔らかさを記している。何度も助けられた、いろいろな言葉たちに。
苦しくて眠れない夜に詩を描いた。それは誰の物でもない僕自身の言葉だ。
その全ては僕自身の言葉で僕自身だ。
たくさんの友人に出会ってその言葉に救われた。
僕はその大切な言葉や友人を誹謗、中傷する者を許さないだろう。


あなたは、別の人を愛すればいい。それが主義主張でも信念でも思想、神だってかまわない。

僕はあらゆる宗教に属さない。
あらゆる団体に属さない。
宗教を持たない信仰者だ。
ただ酒と音楽と友人を信じる。

僕は、酔っ払いの詩を託す。





     





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切なさの限界

2008-02-11 | 
ガソリンの値段が上がった
 僕は缶珈琲をかってスタンドを出た
  オンボロの愛車のエンジンがかたかた鳴る
   かまわずアクセルを踏んだ

  ハンバーガーショップでハンバーガーを買ったら
   ポテトとコーラが付いてきた
    車のなかであわてて腹に詰め込んだので
     ケチャップをシートにこぼした
      最悪だ
     ついていない日はいつだってそうさ
    空が曇ってきた
   早めに目的地へと向かう
  ラジオから下らない音楽が流れていた

 海が見える公園
  少しだけ寒いけれど
   街に比べればまるで夏の陽気だ
    街は今年も寒いのだろうか?
     野良猫がやって来た
      残ったハンバーガーを勧めてみたけれど
       軽く匂いを嗅いで
        クールに尻尾を立てて
         僕の前から姿を消した

   一時間
    僕は公園のベンチに座り
     ただ曇り空のしたの海を眺めた
      何かを忘れる為の儀式の様なものだ
       雨が落ちる前までに
        僕は
         僕自身を整理し分析し分類しなければならない
   
         一人きりで暮らした街は
        だがしかし夢に溢れていた
       僕は孤独を面白そうにもてあそび
      皮肉な笑いで世界を眺めた
     一人でご飯を食べることも酒を飲むことにも
    大して苦労しなかった

   そうして時間が流れ去り
  僕は孤独の本当の意味について理解した
 集団のなかの孤独
人はこんなにも溢れかえっているのに
 僕は海を眺めて冷え切ったフライドポテトを食べている
  たまに想う
   ここは火星か何処かじゃないかって
    そして通信が途絶えた

     切なさの限界を探している
 
     切なさの限界に
     僕は耐えられるのだろうか?

     雨が落ちてきた

ゴミ屑を拾い

     一日が終わり 

     一日が始まる




  
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天使と道化

2008-02-10 | 
白い光が射し込んだ
 白い天使が微笑み
  そっと羽をまるで木漏れ日の様に震わせる
   朝だよとささやかに告げる
    長い髪を揺らし柔らかな眼差しを傾ける
     世界は光で満ち溢れ
      球体の地平はこんなにも美しいのだろうか
       草木が雫をたたえて眠りからさめた

        暗闇の天使が夜のとばりにやってくる
         あたりまえのように
          グラスを傾け
           スペイン産のワインを所望する
            黒い羽が少しばかりくたびれている
             忙しい一日だったのだ
              少しくらい気持ちよくなってもいいだろう?
               僕らは音楽を流しながら
                黙ってワインの瓶を空にした

                怯えた暮らしは凝固される時間の傾斜
               白い天使と黒い天使
              朝がきて夜が訪れる
             賛美歌は唄えないピエロの僕は青い服を着ていた
            道化師は白い清潔な天使に恋をし
           黒い天使と酒を酌み交わす
          いつか見た風景
         いつもと同じ時間
        孤独と対峙するには素面じゃあ無理さ
       静けさとワインの静謐な空間
      古い冷蔵庫のモーター音すら雑音だ
     連続した不具合の度合いに応じて
    僕は確実に孤独になる
   大切なひとと会えなくなる
  そうして誰もいなくなる
 コンクリートの壁をじっと眺め酒を飲む
どうしてだろう?
 
  答えは簡単だった
   僕が馬鹿だったからだ
    それでも馬鹿さ加減は道化師の必須事項
     舞台で上手く立ち回るには
      涙は見せてはいけない
       たとえどんな理由があるにせよ
        愚者を装うこと
         それが道化のレゾンデートル
          できれば
           できれば旅の吟遊詩人になりたかったのだ
            
            また日常という暮らしが幕を開ける

             ゆっくりと重い緞帳が上がってゆく

              今日はどんな顔をすればいい?

               泣き顔を隠すために

               丹念に化粧をほどこすのだ





               

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白色の蛍光灯

2008-02-09 | 
白色の蛍光灯の下で
 地軸のぶれた世界を想う
  ごくありふれた言葉に感謝する
   ありがとう
    韓国人のクリスチャンが
     定食屋のテーブルで祈りの言葉を置く
      僕は定食屋を出て少し冷え始めた世界に
       足を踏み出した
        猫がささやく
         「世界の扉は向こう側だよ。」
           僕はその言葉と反対の路を選んだ

            夜のとばり
           街の公園の噴水はライトアップされ
          水しぶきが空に舞った
         財布から風邪薬を取り出し
        ミネラルウォーターで飲み干した
       微熱による発汗の兆候に
      僕は選択を誤ったのだ
     英文の新聞誌を丸めた
    猫の声がささやく
   扉はこっちさ
  まだ間に合うのだろうか?
 町外れの映画館に足を運んだ
  ポップコーンとコーラを買って
   映写機が映し出すくだらないラブロマンスを眺めた
    街の何処かで眼鏡をかけたキャリアウーマンと
     しがない新聞記者がひょんなことから出くわす
      二人はやがて親しくなり
       3度目の奇跡でハッピーエンドを迎えるのだ
        僕はどうやら眠っていたらしい
         ポップコーンがそこいらに散乱していた
          ふとスクリーンを見た

         「Where you going?」

         僕は何処へ向かうのだろう?
        ダライ・ラマはポタラ宮殿を後にした
       
         スクリーンの文字が変わった

           「IMAGIN」

          全ては想像の産物だと

          君が教えてくれた


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マルメロの陽光

2008-02-08 | Weblog
寒い空気のぴんと張り詰めた心地よさ。
その空気を憶えているから、たぶん冬の日だったんじゃないかな?
僕らは映画館に足を運んだ。
仲の良かった友人に誘われるまま、僕はこの映画を観たんだ。

 「マルメロの陽光」

初老の画家の一年の暮らしを記録した映画だ。
四季が移ろう。そうして画家は絵を描き続ける。
画家は中国茶を愛し、美味そうに紙煙草を吹かす。そして一日中キャンバスに向かう。盛り上がりもたいして無いけれど、僕はこの手の映画がわりと好きだったりする。
 スクリーンに机の上に置かれた林檎のカットが入る。
  デッサン用なのか、置かれた林檎は時間の流れとともに、
   美しく妖しげに腐り始める。
    とても綺麗だった。

物が腐ってゆく、ということが綺麗だなんて感じたのはそれが初めてだった。
腐ってゆく異物に蓋をし、この国は愉快なくらい清潔になった。
もちろん死、という事象にもマンホールで蓋をした。
それがどんな意味を持っているのかは人それぞれの意識の違いかもしれない。
或る人はそれを良しとし、或る人はそれを警告する。
僕はどうなんだろう?
 
 ただ、腐ってゆく一個の林檎がとても美しかった。
  時間とはこうして流れていくものだ、と想った。

映画に誘ってくれた女の子は、つまらない映画だと閉口していた。
珈琲を飲みながら僕は、腐る、ということに想いをめぐらせていた。

その子とその取り巻き連中は、やたらとこムツカシイ映画をこよなく愛した。
一度、連中と小さな劇場で寺山修司の映画を見た。
川の上流から仏壇が流れてくる奴だ。
皆、素晴らしいと興奮していた。
とりあえず僕は冷たく冷えたビールが飲みたかった。

 人の好みなんていい加減だ。
   懐かしい出来事だ。

ずいぶん後になって、僕は曲を悪戯した。
 タイトルは。

  「腐った林檎」



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