書記と議事録管理
議事録に関する留意事項
書記とは、会議の記録(議事録)を取る人のことを言います。大きい組織であれば、書記局があり、その中に書記長がいて、複数の書記担当者がいて、交替で議事録を取ります(例えば大きな労働組合)。しかし、小さな組織では専従(専任)の書記を配置することはできず、会議の雑用の面倒を見る組織(例えば会社なら総務部や総務課)の職員が議事録を取ります。さらに小さい組織(集まり)では、会議メンバーが交代で議事録を取るという場合もあります。交替で議事録を取る場合、そのメンバーの発言の機会が失われる可能性もあり、配慮が必要です。
「民主主義の文法」では、議事録の性質を次のように述べています。
・議事録は会合の文書化された記録である
・議事録は、各種の提案や決定事項、構成員と役員の報告の永続的な記録である
・組織の会合の法的文書記録であり、裁判に用いられることもある
以上のことから、議事録は正確でかつ簡潔であるべきだとしています。その通りですが、正確さと簡潔さをどのように保つのか、極めて難しい課題です。行政などでは、発言を録音し、一言一句記録して議事録を作成していますが、通常の会議では次の観点から決していい方法ではないと思っています。
・審議の内容を把握するのに、会議を同じ時間が必要である
・審議過程が容易に把握できない
・結局結論が何なのかが不明ことがある
議事録を電子的に保管するのであれば、「永続的な」保存が可能ですが、紙などで記録する場合は、保存に多くのスペースと費用が必要になるため、保存年限を定め、期限を過ぎたものから適宜廃棄すべきです。
議事録が法的文書であることは間違いないと思いますが、構成員の私的財産が大きく絡むマンション・アパート等の管理組合の会議以外では、それ程気にする必要もないのではないかと思います。
議事録作成の手引き
議事録には次の項目を記録します
・すべての採択された議案と却下(否決)された議案
・議案を提出した人の名前
・報告を行なったすべての構成員の名前(役員、委員会の委員長等)と役職名
・選出あるいは指名されたすべての構成員の名前
・無記名投票あるいは挙手(起立)による投票が行われた場合、賛否の数
議事録に記録しない項目は次の通りです。
・討議経過や個人的な意見
・議案を支持(セカンド)した人の名前
・撤回された議案
・報告の全文:報告に関しては議事録には次のように記録する
人事方針委員会の委員長であるY氏が報告した。その報告はこの議事録の原本に添付されている。
1つ目のポツが分かりにくいと思います。なぜなら、個人の意見を戦わせて議論するわけですから、この文は同じことを言っているように見えます。英文はDiscussion or personal opinionですが、(複数の人が個人の意見を戦わせた)議論(「民主主義の文法」では議論経過としている)と(議論はなかったが)誰かが述べた個人的な意見ということでしょう。
その他の責務(原文はImportant Points(重要な事項))
・議事録は(会議終了後)できるだけ速やかに書く。
会議中は速記のスキルでもない限り、議事録のために議論のメモを取ることになりますが、このメモは欠落や冗長なことも多く、記憶が鮮明なうちに議事録を作成せよということでしょう。最近はPCを使って会議中に議事録をリアルタイムに作成している人がいらっしゃいますが、これもいい方法であると思います。
・執行委員会の会合のための要約を準備し、会合(全体会合)で議事録報告できるように準備する
・議事録に署名し、正式に承認された日付を記入する
署名は、固定的な書記がいる場合はその書記でいいと思いますが、議長が署名するのが最良ではないかと思います。
・議事録の訂正は次のように行う
①訂正する内容と訂正箇所(どの議事録か、ページと行数)をメモとして残す
②メモを参照し、訂正箇所を残し(通常、横線を引く)、赤字で訂正を記入する
③訂正日時を書き添える
なお、議事の訂正は、通常は、議事録を採録した次の会合で行いますが、出席者の2/3以上の賛成があれば、どの議事録でも訂正できます。
議事録の内容
議事録は、3つの大きな段落で構成されます。以下、それぞれを第1段落、第2段落(本文)、第3段落として説明します。
第1段落
第1段落では、議事録が何の会合に対して作成されたのかを記録します。このため、次の事項を記入します。
・会合の種類(定例、臨時等)
・組織の名称
・会合の行われた日時と場所
・議長と書記の出席の有無、あるいは代理出席者の名前
「民主主義の文法」では議長を会長と訳していますが、presiding officer = president = chairpersonですので、議長とします。
・定足数の有無
・会合の開会宣言時間
・前回議事録の処理内容(承認、または訂正。議事録への疑義に関して調査の必要があれば、次回持越しということもあります)
「民主主義の文法」では、以上を文章形式にして例示していますが、箇条書きにする方が見やすいと思います。
第2段落は議事の内容を記録します(本文に相当します)。このため、以下を記録します。
・すべての報告事項。以下を含みます。
-報告者の名前
-当該報告に関して決定した事項
・すべての主議題(表決を必要とする議案)
・議事進行への疑義または異議
・当日の講演のテーマや講演者氏名などの重要な連絡事項
第3段落は、会合の閉会情報を記録します。このため、次を記録します。
・閉会と閉会の時刻
「民主主義の文法」では例として、ここに書記の署名を記入するとあります。ただ、専任の書記がいない場合、誰が書記を行ったのかがわかればいいと思います。
議事録が承認あるいは訂正をして承認された後、承認の日付、議長の署名があった方がいいと思います。
「民主主義の文法」の原本である、Robert’s Rules in Plain EnglishのSecond Editionには書記に関して次の追記があります。
書記は組織の次のような情報を記録保存する必要がある。
・公式名簿
・委員会と委員会メンバーのリスト
・訂正が記録された最新の組織の規約と組織が採用した特別規則
・名前を呼んでの投票の場合、名前を呼ぶこと及びその人の投票(賛否)の記録
組織が連絡担当を置かない場合、開催案内及びその他の連絡も書記が行います。
会計とその職務
組織にとって会計は重要な仕事ですが、ここでは会議の進行に直接関係しませんので省略します。
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