松岡圭祐『千里眼 背徳のシンデレラ 上』に続き、下巻の紹介です。前回に続き読んで頂くと、面白いと思います。
書 籍:『千里眼 背徳のシンデレラ下』
発行年:2006年5月1日初版発行
発行所:株式会社 小学館
価 格:752円(税別) 縦一段組み644ページ+解説(中山義久)7ページ
<下巻カバー裏のストリー紹介>
臨床心理士・岬美由紀は謎の神社の境内に、日本経済を復興させる鍵となる発明が隠されているのを知る。それは友理佐知子の意思を受け継いだ鬼芭阿諛子の、国家転覆に賭ける恐るべき計画の決め手だった。
紅白玉の予言や生体時計の秘密を暴き、真実に一歩ずつ近づく岬美由紀を待っていたのは、運命を根底から覆る逆転劇だった---。
千里眼の系譜に決着をつけるべく、ヒロインは恒星天球教との最後の戦いに向かう。
シリーズ最長となる圧倒的ボリュームと壮大な規模で描かれた著者渾身の書き下ろしエンターティメント下巻。
----------------------------------------------------
strong>3億円強奪の手法を特別顧問、特にゴリアテに聞かれるが、マリオンやフランシスコらに助けられ、前頭葉手術を隠す事に成功すると同時に、3億円をメフィストに送金せず、ゴリアテさえも騙す事にも成功する。
その直後、友理は手術室にマリオンに呼ばれて、成功の祝いの言葉と同時に、猫の目の移植手術を依頼する。その意図も分からないまま、仕方なくその手術を受け、成功させる。
既に成績上位者となり、特別顧問補佐候補となった友理は、ラウンジでブランデーを飲んでいた。ここにフランシスコ・フリューエンスが現れる。友理は、成績トップのフューエンスを特別顧問のゴリアテと同じぐらいしか見なしていなかったが、マリオンが脳の構造に付いて研究を重ねている事を知っており、これにより、3億円強奪に成功した事を知っていた。衝撃を受ける友理を後に、マリオンとの関係に注意を促し、風のように去っていった。
5年にわたる研修の最後一ヶ月前に、友理は別人への整形手術を受ける。架空の履歴も操作され、ある高校から東大医学部に入学し現在3年生となっていた。久しぶりのラウンジで、友理は同じ顔となった澤木百合子と越谷暁美とあい、さして能力があるわけではない候補者が多く含まれていた理由を知る。成績上位者つまり特別顧問候補者達とは別にオリジナルの陰となり命令に絶対服従する事が決定付けられたダブル(替え玉)を用意する事でもあった。
日本に帰り、医学部の学生として、世間から目立たず暮らすように強要されていた友理は、遥かに進んだメフィストの医学知識を既に持ち、東大の勉強にも力が入らず、且つ学生運動真っ盛りな中で、元の良世連の学生運動に参加してしまう。そこで心理学の研究をしている東大の医学生倉石に、だまされ、千里眼の能力が自分だけのものでなく、メフィストや心理学の常識となっている事に打ちのめされる。そこにゴリアテから、これらの失態と共に3億円強奪での不可能を可能にする力を持っていると叱咤された事で、逆に友理はメフィストコンサルタントとは相容れない独自の道を突き進む事を決心する。
3億円の軍資金を元に、良世連を動かし赤軍派も利用し、日本政府の転覆と全世界規模での共産主義革命へと突っ走っていた。よど号のハイジャックにより北朝鮮に渡り、北朝鮮と組む計画していたが、メフィストコンサルタントは、これを阻止すべく、特別顧問ゴリアテと顧問補佐としてフューエンスを対策に当たらすが、ゴリアテの裏をかきハイジャックに成功する。更に先回りし、韓国の空港に北朝鮮の空港を偽装され、迎えうつが、これさえも友理に見破られ、正常心を失ったゴリアテは、偽装として用意したミグと共に散ってしまう。後の対策を全て処理したフューエンスは特別顧問「ダビデ」となる。北朝鮮で友理は、医学知識を駆使し病人の治療に当たり、与えられた病院の院長にも就任する。他のあらゆる産業のアドバイスも行い、北朝鮮の人民軍をわずか半年で世界的水準まで高めてしまう。この国が日本より軍事面で優位に立つほど強大になれば、日本の政権を揺さぶる事も可能だと考えていた。
友理が北朝鮮に強力した数多くのプロジェクトの中に、飛行場近くに建設させた対日軍事施設だった。70万平方メートルもの敷地に日本の国会議事堂を中心とする永田町の全域をそっくり模倣した物であった。
一方北朝鮮のチュチュ思想を徹底させる為に、反国家的な人間に対して、容赦なく前頭葉手術を実施し、北朝鮮にいる1年の間に多くの経験を積む事になる。一方で北朝鮮から莫大な報酬も得る。
帰国後昭和47年の春にダブルの一人澤木百合子と再会するが、彼女は妊娠していた。妊娠した彼女を利用し、サイゴンでの要人殺人に成功し、百合子はサイゴン娘歩美を出産する。しかし脱出する寸前メフィストコンサルタントの手回しで、百合子は殺されてしまう。
日本に帰った友理は、歩美に対し愛情を感じると同時に、成長した時に脅威になる警戒心を抱く。自分はあくまで戦い続けなければならない中で、一歳に満たない乳児が、自分の寝首をかく事があれば、その危険については排除せねばならないと。認知力を奪い取ってしまい、自由意志の芽を摘み取り、私には逆らえない、私の野望の為に全てを捧げ、私を支えてくれる女。そんな女に育つように徹底的に教育すればよい。思い通りにならなければ、そのときこそ命を奪うだけだ。
この為に百合子のつけた歩美ではなく、「鬼芭阿諛子」と命名し、回りから近寄らせないような環境を作り出すと共にまた戸籍登録も行なわなかった。以降幼稚園も学校へも行かせず、独自の教育を施した。友理はアパートの部屋にベトナムから持ち込んだ無残な写真を貼り、一切の質問も許さず、2歳の頃にはベータマックスでベトナムや朝鮮での殺戮の無修正ビデオを流し続けた。その後父親のアパートにつれて行き、日本刀で殺害してしまう。
29歳になった友理は、虎ノ門の古いビルの一室を借りて、小さな病院を開業した。千里眼の能力を利用し、且つマスコミも利用しながら、急速に患者数を増やしてゆき、東大の医学部によって立ち上げられた東京カウンセリングセンターに匹敵する東京晴海医科大学付属病院の院長となった。このとき友理は36歳となっていた。この間前頭葉手術を繰り返し、友理のロボットを増やすと同時に、阿諛子をこの手術にはズット立ち合わせていた。一方で事がなった後の事を考え、人民の心のよりどころとなるのは宗教と考え、恒星天球教を立ち上げた。友理が40歳に達した時15歳になった阿諛子は、すでに一人で前頭葉の手術ができるようになっていた。
偶然、患者としてきたリストラ寸前のJAIのパイロット新村を、ロボット化した事により最新の管制官の知識を得る。つまり、空港管制官への妨害電話を飛ばす装置の存在である。メフィストコンサルタントのマリオン・ベロガニア個人に、入手を依頼し、再び東京湾観音像で、会う。別れ際にマリオンはIGNAと記されたカプセルを友理に渡す。体内の一切の期間にダメージを与えずに突然死を迎えられる薬、且つ発信機が付いており即座に葬送部隊が回収に向かうと・・・。友理はそのカプセルを阿諛子に捨てておく様に渡した。おそらくマリオンは、観音像に設置したジャミング装置で、羽田のレーダーを狂わせ、侵入してくる民間機を国籍不明機と錯覚させる。自衛隊が迎撃に躍起になっている間に、首都を攻撃、総理官邸や皇居を破壊する計画までみぬいていると。
更に1年が過ぎ、東京湾観音増へのジャミング装置の設置は順調に進んでいた。一方で空からの爆撃を考慮し自衛官幹部クラスが理想的と考える中で、岬美由紀二等空尉と言う最適な人材を見つける。この岬美由紀を獲得する為に、メフィストコンサルティングの研修で予測されていた、福井県楚樫呂島地震を利用する事を思いつく。先にカウンセラーとして乗り込み、且つ救難隊のパイロットがいない状況まで作り出して・・・。最初は直ぐ前頭葉手術をするつもりであったが、友理に心酔しカウンセラーと言う職業になる事を決心し、サッサと自衛隊を止めてしまった岬に不思議な感情を抱き、自分と同じ様でもあり、一方でまるで異なっていると。愛玩動物の様に感じていた。
鬼芭阿諛子にとって、母である友理は絶対であり、全世界でもあったが、岬に破れ、壊れていく様を目にしたとき、この世の終わりに直面したかの様であった。ある時に遂に友理は阿諛子に本当の母である澤木百合子の事を話す。その数週間後友理は、新しいクーデター作戦の準備の為に阿諛子を残し、出かけてゆくが、メールで阿諛にある銀行に預けてあるものを受け取るように命令が入る。これに従い、貸金庫から受け取るとSDカードと一枚の便箋だった。その便箋にはもし私になにかがあったらこのSDカードを見るように!それから2ヵ月後友理は刺され死亡するが、これを見ていた阿諛子は絶望の淵で、岬美由紀をのろい殺してやると誓った。
----------------------------------------------------
一方蒲生警部補は、警視庁からの指示で21世紀自動車連合研究会で殺人があり、しかも3つのプロットタイプが盗まれた実験を捜査するが、国の特殊機関の為、その工場内にも入る事が出来なかった。
岬と蒲生は白紅神社の元宮司で詐欺師の風知を利用する事を考え、その紅白歌合戦の勝負を予想するトリックの証拠を得ようとするが、寸前鬼芭阿諛子に見つかり、風知は殺されそうになる。風知の悲鳴を聞きつけた岬達は、白紅神社に乗り込むが、良世連が襲ってきて銃撃戦の中、遂に鬼芭阿諛子の計画が発動する。
21世紀自動車連合研究会で盗まれたプロットタイプとは、ジェットエンジンで空を飛ぶ自動車であった。しかも海外から輸入された、対地ロケット砲や自動小銃も装着されている。
岬は、その空飛ぶ自動車の燃料から直接ではなく、一旦別の物に乗せ変えてから運ぶと考え、残されて証拠のトリックの玉から、その場所を予測する。
そこには輸送へりが待っており、3台の空飛ぶ自動車が積み込まれる寸前であった。岬はヘリから飛び降り、中に入ると同時に配電盤を操作し、操縦の電源を切ってしまう。これを良世連の一人が治し、遂に良世連と共に輸送ヘリは首都官邸に向けて飛び立ってしまう。
岬の壊した操作盤等でGPSを頼りに首都に向け飛び、遂に国家議事堂を見つけ、その中に3台の空飛ぶ自動車は飛び出し、国会議事堂の中にいる人間を皆殺しにしてしまう。
しかし、車から降り立って、なくなる間際の職員から朝鮮語が聞こえる。議会での資料も朝鮮語であった。ここは、日本の首都ではなく、母友理が北朝鮮に作らせて日本の首都官邸に見せかけた練習施設だった。
突然、人民軍が落下傘部隊と共に次々と攻撃を仕掛けてくる中、鬼芭阿諛子はやっと2台の空飛ぶ自動車と共に輸送ヘリに帰り着き、日本の飛び立った場所に自動操縦で目指が、既に、良世連の仲間は全員鬼芭阿諛子を助ける為に亡くなっていた。
日本政府は日本領空に入ると共にペトリオットミサイルで輸送ヘリを破壊する事を決定するが、SDカードから鬼芭阿諛子の過去を知り、何とか一回鬼芭阿諛子と話する機会を得るため、また一人輸送ヘリに向かい、鬼芭阿諛子に告げる。貴方はSDカードつまり友理が残したメッセージを理解していないと!もし、「阿諛子(あゆこ)、あなたは私の子ではない。これをよんだのなら、あなたは変われる!」の意味は友理が貴方に自立の可能性を残したメッセージだと!
ぺトリオットミサイルで撃墜寸前、二人とも空飛ぶ自動車で抜け出し、SDカードがある白紅神社へ向かう。そこで鬼芭阿諛子は、始めて、自分は母である友理には愛されていなかった事実を確認する。燃え盛る白紅神社を見下ろしながら、鬼芭阿諛子は始めて岬の腕の中で泣く。岬は鬼芭阿諛子に貴方はまだ赤ん坊なのと告げ、自分が親になる決心をする。「親なら子供の名前を決める義務もあるのでしょう」との鬼芭阿諛子の言葉に岬は「岬歩美」と言う。
「美由紀。会えてよかった。あなたは全ての闇を閉ざしてくれた。」と言い、マリオンから友理に渡されたIGNAを飲む。「自分のカラダをメフィストコンサルタントに渡さず医学に役立てて欲しい」との言葉を残して・・・。
メフィストコンサルタントの葬送隊が来たが、ダビデが現れ、歴史のイレギュラーを修正してくれて感謝すると述べる。「借りを返したい為、何かやってほしいことがあるか」と岬に言うと、岬は「ここに彼女の墓を立てて欲しい」と依頼する。 その豪華な墓には AYUMI MISAKI と表記されていた。
----------------------------------------------------
氏のこの物語は、あまり深く考えて読んでしまうと、面白くないと思う。まじめに考えると例え、北朝鮮であっても同士を何百人も殺す事が分かっていながらの判断を岬がした事であり、もっともここに進入する前に打ち落とされると思うが・・・。
空飛ぶ自動車に関しては、未だその可能性すら見えていない中での話なので、逆にありえない話なのでエンターティンメントとして面白いのかも知れない。
さて今回の『千里眼 背徳のシンデレラ』での友理佐知子の人生を松岡圭祐の世界その24『千里眼 美由紀の正体上・下』での岬美由紀の正体と比較すると余りにも似ており、この『千里眼 背徳のシンデレラ』を書いた事により、松岡圭祐の世界その24『千里眼 美由紀の正体上・下』の岬美由紀の隠された事実が後付けされたような印象を受けるが、早く新しいシリーズで元気な明るい岬美由紀を出して欲しい物だ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます