お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

コーイチ物語 「秘密のノート」 115

2022年09月24日 | コーイチ物語 1 13) パーティ会場にて コーイチ退場 
「とにかく、こんなに酔ってしまったんじゃ、どうしようもないわねえ」
 いきり立つ逸子を無視して、座ったままふらふらしているコーイチを見ながら京子は言った。
「京子ぉ……(魔法をかけたくせに何を言っているんだ!)」
「はいはい、わたしはここに居ますよお~」
 京子はわざとらしく抱きつくようにしてコーイチのからだを支えた。
「まっ! 何て事をしているのかしら!」
 逸子がぽっと顔を赤らめながら文句を言う。
「逸子ちゃんもコーイチ君を支えてみる? コーイチ君、意外と…… んふふふ」
 京子は意地悪そうな笑顔を浮かべて、逸子を挑発するように言った。
「京子ぉ……(悪ふざけもいい加減にしないと、さすがのボクも怒るぞお!)」
「そ、そんな恥ずかしい事、出来ません!」
 逸子はぷっと頬を膨らませて横を向いた。
「あら、純情ねぇ。遠慮なんかしなくて良いのに」
「そんな事よりも、コーイチさんを京子さんの所有物みたいに言わないで下さい!」
 逸子は京子を睨みつけた。
「京子ぉ……(そうだ! ボクは魔女の下僕じゃないぞ!)」
「でもね、こんなに私の名前を呼んでいるんですもの、仕方ないじゃない」
「……京子さん、何かやったんじゃないの……?」
 逸子が不審の目を京子に向けた。
「何って、ビールを飲ませただけよ。コーイチ君が勝手に酔っ払っちゃったのよ。逸子ちゃんも見てたじゃない」
「そうだけど、あのビール、京子さんが出したじゃない。ビールに何か仕掛けをしたんじゃないかしら?」
「京子ぉ……(そうだ、いいぞ、逸子さん。君は大変に鋭い!)」
「ほらあ、コーイチ君はもうふらふらのへろへろのよろよろよ! もう休ませないと……」
 京子は逸子の問いには返事をせず、心配そうな顔でコーイチの顔をのぞきこんだ。
「京子ぉ……(目が笑っているんだよ! 目が!)」
「休ませるって言っても、どこで?」
 逸子は周りをきょろきょろと見回した。休ませられそうな場所は見当たらなかった。
「あら、何を探しているのかしら? 休ませるって言ったら、当然、コーイチ君のアパートに決まってるじゃない!」
「アパートって…… 京子さんが連れて行くんですかあ?」
 逸子が驚いたように大きな声を出した。
「そうよ。だって、元々わたしはコーイチ君の所に泊まる事にしてたから」
 京子は平然とした顔で答えた。
「京子ぉ……(な、何を言い出すんだ! 逸子さん、変な誤解をしてしまうじゃないか!)」
「泊まるって…… コーイチさんと京子さんって…… その……」
 どぎまぎした様子で逸子は言葉を濁した。
「な~によ? 何が言いたいのかしらぁ?」
 白々しく京子が聞き返す。
「京子ぉ……(馬鹿な事を言い続けないでくれえ!)」
「もう、知らない!」
 逸子はステージからぴょんと飛び降りると走り去って行った。……あああ、逸子さん…… 逸子さん…… 逸子さん…… 
 コーイチは人ごみに紛れて行く逸子の後ろ姿を見送っていた。追いかけたかったが、ふらふらしているし、京子が例の強い力で押さえつけているので、身動きが出来なかった。
「さ、コーイチ君、帰りましょ!」京子はにこにこした顔をコーイチに近付け、不意に真顔になってささやいた。「ノートの件、すっきりさせましょうね……」
「京子ぉ……(ついに、来たか!)」

       つづく

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コーイチ物語 「秘密のノー... | トップ | コーイチ物語 「秘密のノー... »

コメントを投稿

コーイチ物語 1 13) パーティ会場にて コーイチ退場 」カテゴリの最新記事