出入り口のドアが勢いよく開けられた。
周囲の人たちが何事かと驚いてドアの方を見た。コーイチたちも思わずドアの方を見た。
入って来たのは、胸元と背中が大きく開き、腕が肩からすっかり出ていて、左右に長めのスリットの入った膝丈までの赤いドレスを着て、素足に赤いハイヒールを履いた、長い髪を頭の上でふわふわとまとめた若い女性と、同じ形をした白いドレスに白いハイヒール、短い髪に白くて幅の広いヘアバンドをぴちっとあてがった若い女性だった。
えっ、まさか…… コーイチは目をぱちくりさせて見直した。赤いドレスは京子で、白いドレスは逸子だった。
思い切りセクシーなドレスを着た美女二人組み(端から見れば)は、腰を屈めたり、背伸びしたりと、きょろきょろ辺りを見回していた。
何をやっているんだ? コーイチは呆れた顔で二人を見ていた。やがて、二人の視線がコーイチと合った。とたんに二人はコーイチの方へ走り出した。
「コーイチ君!」
「コーイチさん!」
二人は叫びながら、コーイチの右腕に京子が、左腕に逸子が、それぞれしがみついた。相変わらず、魔女と免許皆伝の力は凄く、思わずコーイチはうめいた。しかし、二人とも全く意に介する事なく、さらに強くしがみついた。
「お待たせぇー!」
「コーイチさん、寂しくなかったですかあ?」
二人が同時に喋りだした。……むむむ、お酒のにおいがするぞ。二人とも酔っているようだな。でもなぜだ?
「二人とも、写真を撮りに行ったんじゃないのか?」
コーイチが不思議そうに聞いた。
「そうなのよ。それがちょっと飲みすぎて……」
「そうなんです。途中でワインを飲みながら撮ろうかって事になって……」
京子と逸子はぱっと顔を合わせて、「ねぇ~!」っと声をそろえた。なにが「ねぇ~!」なんだ。さっきまで敵同士みたいだったのに……
「なんだい、仲良しになったのかい」
コーイチは皮肉のつもりで言った。しかし、二人ともくすくすと肩を揺らしながら笑って言った。
「逸子ちゃんって意外に優しいのよ。色々アドバイスしてくれて……」
「京子さんもとても親切なんです。私が欲しいと思ったものをすぐに見つけてくれて……」
二人はまた顔を見合わせて、「ねぇ~!」っと声をそろえる。
やっぱりプロだもの変な写真にはしたくはないからアドバイスもするだろうし、それと、すぐに見つけたりしたのは、ボクが見ていないと思って魔法を使ったに違いないんだ。……でもまあ、仲が良くなったのは何よりだ。多分にお酒の力もあるんだろうけどね。
「ねえ、コーイチ君……」
京子が、とろんとした目と頬をほんのり赤く染めた顔を上げ、ぐっと擦り寄ってきた。コーイチはチラッと京子を見たが、すぐにその目を宙にさまよわせた。
「コーイチさん……」
逸子も同じような表情で、ぐっと擦り寄ってきた。コーイチはチラッと逸子を見たが、やはりすぐに視線を宙にさまよわせた。
「どうして目をそらすのよ! 私のことキライなの?」
「そうです! キライなんですか!」
二人は据わった目でコーイチをにらみながら、左右からコーイチの顔に自分たちの顔を近づけた。コーイチは天井を見上げながら言った。
「いや、そうじゃないんだ。ただ、そんな凄いドレスを着ていると、どこに目をやって言いのか分からないし、それに、お酒のにおいも強いし……」
「あーら、あらあらあら、コーイチ君、何て純情!」
京子がコーイチのからだにしがみついた。
「コーイチさん、カワイイ!」
逸子もコーイチのからだにしがみついた。
「いたたたたた……!」
左右から強くしがみつかれたコーイチのからだがグギギボキボキと異様な音を立てた。
「あ、ごめんなさい!」
「すみません!」
二人は同時に手を離した。
「ははははは! だらしないな、コーイチ!」
よせばいいのに、岡島が声を掛けてきた。
つづく
周囲の人たちが何事かと驚いてドアの方を見た。コーイチたちも思わずドアの方を見た。
入って来たのは、胸元と背中が大きく開き、腕が肩からすっかり出ていて、左右に長めのスリットの入った膝丈までの赤いドレスを着て、素足に赤いハイヒールを履いた、長い髪を頭の上でふわふわとまとめた若い女性と、同じ形をした白いドレスに白いハイヒール、短い髪に白くて幅の広いヘアバンドをぴちっとあてがった若い女性だった。
えっ、まさか…… コーイチは目をぱちくりさせて見直した。赤いドレスは京子で、白いドレスは逸子だった。
思い切りセクシーなドレスを着た美女二人組み(端から見れば)は、腰を屈めたり、背伸びしたりと、きょろきょろ辺りを見回していた。
何をやっているんだ? コーイチは呆れた顔で二人を見ていた。やがて、二人の視線がコーイチと合った。とたんに二人はコーイチの方へ走り出した。
「コーイチ君!」
「コーイチさん!」
二人は叫びながら、コーイチの右腕に京子が、左腕に逸子が、それぞれしがみついた。相変わらず、魔女と免許皆伝の力は凄く、思わずコーイチはうめいた。しかし、二人とも全く意に介する事なく、さらに強くしがみついた。
「お待たせぇー!」
「コーイチさん、寂しくなかったですかあ?」
二人が同時に喋りだした。……むむむ、お酒のにおいがするぞ。二人とも酔っているようだな。でもなぜだ?
「二人とも、写真を撮りに行ったんじゃないのか?」
コーイチが不思議そうに聞いた。
「そうなのよ。それがちょっと飲みすぎて……」
「そうなんです。途中でワインを飲みながら撮ろうかって事になって……」
京子と逸子はぱっと顔を合わせて、「ねぇ~!」っと声をそろえた。なにが「ねぇ~!」なんだ。さっきまで敵同士みたいだったのに……
「なんだい、仲良しになったのかい」
コーイチは皮肉のつもりで言った。しかし、二人ともくすくすと肩を揺らしながら笑って言った。
「逸子ちゃんって意外に優しいのよ。色々アドバイスしてくれて……」
「京子さんもとても親切なんです。私が欲しいと思ったものをすぐに見つけてくれて……」
二人はまた顔を見合わせて、「ねぇ~!」っと声をそろえる。
やっぱりプロだもの変な写真にはしたくはないからアドバイスもするだろうし、それと、すぐに見つけたりしたのは、ボクが見ていないと思って魔法を使ったに違いないんだ。……でもまあ、仲が良くなったのは何よりだ。多分にお酒の力もあるんだろうけどね。
「ねえ、コーイチ君……」
京子が、とろんとした目と頬をほんのり赤く染めた顔を上げ、ぐっと擦り寄ってきた。コーイチはチラッと京子を見たが、すぐにその目を宙にさまよわせた。
「コーイチさん……」
逸子も同じような表情で、ぐっと擦り寄ってきた。コーイチはチラッと逸子を見たが、やはりすぐに視線を宙にさまよわせた。
「どうして目をそらすのよ! 私のことキライなの?」
「そうです! キライなんですか!」
二人は据わった目でコーイチをにらみながら、左右からコーイチの顔に自分たちの顔を近づけた。コーイチは天井を見上げながら言った。
「いや、そうじゃないんだ。ただ、そんな凄いドレスを着ていると、どこに目をやって言いのか分からないし、それに、お酒のにおいも強いし……」
「あーら、あらあらあら、コーイチ君、何て純情!」
京子がコーイチのからだにしがみついた。
「コーイチさん、カワイイ!」
逸子もコーイチのからだにしがみついた。
「いたたたたた……!」
左右から強くしがみつかれたコーイチのからだがグギギボキボキと異様な音を立てた。
「あ、ごめんなさい!」
「すみません!」
二人は同時に手を離した。
「ははははは! だらしないな、コーイチ!」
よせばいいのに、岡島が声を掛けてきた。
つづく
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