我に返った豆蔵が、倒れているみつに駆け寄った。
「みつ様! みつ様!」豆蔵はみつの肩に手をかけて激しく揺すった。「みつ様! しっかりして下せぇ!」
「う……ん……」みつはうっすら目を開けた。目の前の大きくて厳つい物が豆蔵の顔なのだと認めるのに少し時間がかかった。「……豆蔵……さん……」
「みつ様! ようがんばって下さいやした」豆蔵はほっとしたように笑む。「嬢様のために…… 何も出来ねぇあっしの代わりに…… こんなあっしですが、感謝を言わせて頂きやすぜ!」
「いえ…… 結果としては、このように、気を失ってしまったのですから、恥ずかしい限りです……」
「そんなことはござんせん! 何事にも一心に打ち込む姿に、この豆蔵、多くを学ばせて頂きやした」
「それって……」みつが赤くなる。「あの、すかあとうを持ち上げるのも、含んでいるのですか……?」
「い、いえ!」豆蔵は否定したが、白くてむちむちぴちぴちした太腿が脳裏をよぎる。「……とにかく、立派でございやした」
「あっ!」竜二が叫んだ。「楓が!」
豆蔵とみつも楓を見た。
楓は仁王立ちし、全身を怒りで震わせている。
「やい! てめえら! よってたかって、この楓姐さんをコケにしやがって!」楓は言うと、煙草をくわえている百合江をにらみつけた。「特にお前だ! わたしゃ絶対に許さないよ! ちょっと気心を許しちまった自分にも腹立たしいが、その分を上乗せして、許しちゃおかないからね!」
「あら、そう?」百合江は平然と煙を吹き出す。「いつでもお相手してあげるわ…… でも霊体じゃ手出しが出来ないわね。どっかで生身を付けてからいらっしゃいな。あ、それとも、我を忘れた醜い怨霊にでもなる? 美人の楓姐さんが、台無しになっちゃうけど、そうする?」
「くっ! ふざけやがって! 覚えていやがれってんだ!」
捨てぜりふを残し、楓は消えた。
「覚えておくわね、さようなら」
百合江は右の袂を押さえて手を振った。
「あのう…… 百合江さん……」
百合江が声の方に振り返る。建一が立っていた。
つづく
「みつ様! みつ様!」豆蔵はみつの肩に手をかけて激しく揺すった。「みつ様! しっかりして下せぇ!」
「う……ん……」みつはうっすら目を開けた。目の前の大きくて厳つい物が豆蔵の顔なのだと認めるのに少し時間がかかった。「……豆蔵……さん……」
「みつ様! ようがんばって下さいやした」豆蔵はほっとしたように笑む。「嬢様のために…… 何も出来ねぇあっしの代わりに…… こんなあっしですが、感謝を言わせて頂きやすぜ!」
「いえ…… 結果としては、このように、気を失ってしまったのですから、恥ずかしい限りです……」
「そんなことはござんせん! 何事にも一心に打ち込む姿に、この豆蔵、多くを学ばせて頂きやした」
「それって……」みつが赤くなる。「あの、すかあとうを持ち上げるのも、含んでいるのですか……?」
「い、いえ!」豆蔵は否定したが、白くてむちむちぴちぴちした太腿が脳裏をよぎる。「……とにかく、立派でございやした」
「あっ!」竜二が叫んだ。「楓が!」
豆蔵とみつも楓を見た。
楓は仁王立ちし、全身を怒りで震わせている。
「やい! てめえら! よってたかって、この楓姐さんをコケにしやがって!」楓は言うと、煙草をくわえている百合江をにらみつけた。「特にお前だ! わたしゃ絶対に許さないよ! ちょっと気心を許しちまった自分にも腹立たしいが、その分を上乗せして、許しちゃおかないからね!」
「あら、そう?」百合江は平然と煙を吹き出す。「いつでもお相手してあげるわ…… でも霊体じゃ手出しが出来ないわね。どっかで生身を付けてからいらっしゃいな。あ、それとも、我を忘れた醜い怨霊にでもなる? 美人の楓姐さんが、台無しになっちゃうけど、そうする?」
「くっ! ふざけやがって! 覚えていやがれってんだ!」
捨てぜりふを残し、楓は消えた。
「覚えておくわね、さようなら」
百合江は右の袂を押さえて手を振った。
「あのう…… 百合江さん……」
百合江が声の方に振り返る。建一が立っていた。
つづく
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