「そうだねぇ……」楓は腕組みして偉そうに言う。「まずは目だね」
「目?」みつは目をぱっちり開いた。「目……?」
「そうさ。いわゆる流し目ってヤツだよ」
「……流し目?」みつには初めて聞く言葉だったようだ。「そのような技があるのか…… 女の武器とは奥が深そうだ」
「な~にごちゃごちゃ言ってんだい!」楓は言うと、にやりと笑う。「手本を見せてやるよ。こうやるのさ」
楓が目をやや細めた。そして、目だけ動かして横を見、その視線のままで逆側にゆっくりと顔を向ける。その艶っぽい様子に、通りすがりの男の霊体たちは「ほうっ……」とため息をついた。
「わかったかい? さあ、やってみな」
「……承知……」
みつが真似をする。しかし、目を細めて動かされた視線は、にらみの利いた鋭いものだった。男の霊体たちが、「ひっ!」と悲鳴を上げる。
「ダメだ、ダメだ!」楓が呆れたように言った。「そんなんじゃ、あの建一って子、怖がって泣いちまうよ!」
「……」みつは悔しそうに拳を握る。「いや、修業をすれば、必ず……」
「そんなに時間が無いのよ、みつさん」百合江は言い、それから楓に向き直る。「もっと簡単に出来るものってないかしら?」
「そうだねぇ……」楓はじろじろとみつを見る。「その姿なら、色っぽい仕草でもすりゃあ、結構行けるんじゃない?」
「仕草……?」
「まずは、こうやる」楓は言いながら、尻をつんと突き出して「あっは~ん」と甘い声を出してみせる。「おおおっ」と男の霊体たちがどよめく。その様子に楓は満足そうだ。「いいかい、思わず触りたいって気を起こさせるんだ。やってみな!」
「こう……か?」みつが真っ赤になりながら真似をする。しかし、へっぴり腰で「あっは~ん!」と力んでしまう。男の霊体たちから「あ~あ」と落胆のため息がもれる。「いかん、何やら腰が痛い……」
「剣士様よう、恥ずかしがってちゃダメなんだよ! ……じゃ、次はこうだ」楓は左右の手を胸まで上げ、手の平で胸を包むように押さえ、軽く持ち上げて戻すを繰り返しながら「うっふ~ん」と甘い吐息を漏らす。「ううううう」と男の霊体たちがうなる。楓はにやりと笑う。「いいかい、少し手の平を丸くして、形を想像させるんだよ」
「……」みつはさらに真っ赤になって真似をする。しかし、胸を押さえたものの、機械的に一、二、一、二と上げ下げを繰り返しながら「うっふん!」と力む。男の霊体たちの落胆のため息がさらに広がる。「いかん、何やら胸が痛い……」
「ただ上下させたってダメに決まってんだろうが! これも、思わず触ってみたいって気を起こさせなきゃ、何にもならないんだよ!」
「ああ、もう! わたしには出来ない!」みつは叫ぶと、百合江に向き直った。「百合江殿! わたしは男女で良い! もう出来ません! 楓一人にやらせると良いでしょう!」
つづく
「目?」みつは目をぱっちり開いた。「目……?」
「そうさ。いわゆる流し目ってヤツだよ」
「……流し目?」みつには初めて聞く言葉だったようだ。「そのような技があるのか…… 女の武器とは奥が深そうだ」
「な~にごちゃごちゃ言ってんだい!」楓は言うと、にやりと笑う。「手本を見せてやるよ。こうやるのさ」
楓が目をやや細めた。そして、目だけ動かして横を見、その視線のままで逆側にゆっくりと顔を向ける。その艶っぽい様子に、通りすがりの男の霊体たちは「ほうっ……」とため息をついた。
「わかったかい? さあ、やってみな」
「……承知……」
みつが真似をする。しかし、目を細めて動かされた視線は、にらみの利いた鋭いものだった。男の霊体たちが、「ひっ!」と悲鳴を上げる。
「ダメだ、ダメだ!」楓が呆れたように言った。「そんなんじゃ、あの建一って子、怖がって泣いちまうよ!」
「……」みつは悔しそうに拳を握る。「いや、修業をすれば、必ず……」
「そんなに時間が無いのよ、みつさん」百合江は言い、それから楓に向き直る。「もっと簡単に出来るものってないかしら?」
「そうだねぇ……」楓はじろじろとみつを見る。「その姿なら、色っぽい仕草でもすりゃあ、結構行けるんじゃない?」
「仕草……?」
「まずは、こうやる」楓は言いながら、尻をつんと突き出して「あっは~ん」と甘い声を出してみせる。「おおおっ」と男の霊体たちがどよめく。その様子に楓は満足そうだ。「いいかい、思わず触りたいって気を起こさせるんだ。やってみな!」
「こう……か?」みつが真っ赤になりながら真似をする。しかし、へっぴり腰で「あっは~ん!」と力んでしまう。男の霊体たちから「あ~あ」と落胆のため息がもれる。「いかん、何やら腰が痛い……」
「剣士様よう、恥ずかしがってちゃダメなんだよ! ……じゃ、次はこうだ」楓は左右の手を胸まで上げ、手の平で胸を包むように押さえ、軽く持ち上げて戻すを繰り返しながら「うっふ~ん」と甘い吐息を漏らす。「ううううう」と男の霊体たちがうなる。楓はにやりと笑う。「いいかい、少し手の平を丸くして、形を想像させるんだよ」
「……」みつはさらに真っ赤になって真似をする。しかし、胸を押さえたものの、機械的に一、二、一、二と上げ下げを繰り返しながら「うっふん!」と力む。男の霊体たちの落胆のため息がさらに広がる。「いかん、何やら胸が痛い……」
「ただ上下させたってダメに決まってんだろうが! これも、思わず触ってみたいって気を起こさせなきゃ、何にもならないんだよ!」
「ああ、もう! わたしには出来ない!」みつは叫ぶと、百合江に向き直った。「百合江殿! わたしは男女で良い! もう出来ません! 楓一人にやらせると良いでしょう!」
つづく
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