「待ちやがれ!」
怒鳴りながら姿を現したのは楓だった。全身を憎しみでぷるぷる震わせる楓は、びしっと伸ばした右人差し指をさとみに向ける。
「……麗子……」建一の胸からさとみが顔を上げた。「どうしたのよう! 何を怒っているのよう!」
「やっかましい!」楓の怒りがさらに増す。「お前一人だけ、良かった良かったってさせえるわけにゃあ、いかないんだよ!」
「お止め!」
百合江が鋭い口調で言うと、すっとさとみの前に立ち、楓と対峙した。異様な雰囲気に、ふらふらと公園内を漂っていた霊体たちが姿を消した。砂場で遊んでいた子供たちも、泣きながら逃げて行った。
「邪魔すんじゃないよ!」しんとした公園に楓の声が響く。「もう、あんたの口車には乗らないからね! やっぱり、わたしにゃ、力で相手を屈服させるのが、似合っているんだよ!」
「させないよ」百合江は静かに言うと、ゆっくりと構えを取る。「お前を生身に憑かせたのは失敗だったようね……」
「もう後の祭りだよ!」楓も構えを取る。そして、不敵な笑みを浮かべる。「ふん、着物姿じゃ、思うように動けないだろう? あんたの負けさ!」
「やってみなくちゃ、わからないわよぉ……」
「ふん! 強がってんじゃないよ!」
楓が百合江に突進した。左右の素速い突きが連続で放たれた。百合江はそれらの突きを左右の手の平で受け続ける。
楓が一旦離れた。はあはあと肩で息をし、汗を流している。百合江は平然とした顔で立っていた。
「あら? もうおしまい?」百合江は笑う。「お前が達人でも、憑いたからだは普通の女の娘。体力に限界があるのよ」
「ふざけたこと、ぬかしてんじゃないよ!」
楓は叫ぶと、地を蹴って跳躍した。
つづく
怒鳴りながら姿を現したのは楓だった。全身を憎しみでぷるぷる震わせる楓は、びしっと伸ばした右人差し指をさとみに向ける。
「……麗子……」建一の胸からさとみが顔を上げた。「どうしたのよう! 何を怒っているのよう!」
「やっかましい!」楓の怒りがさらに増す。「お前一人だけ、良かった良かったってさせえるわけにゃあ、いかないんだよ!」
「お止め!」
百合江が鋭い口調で言うと、すっとさとみの前に立ち、楓と対峙した。異様な雰囲気に、ふらふらと公園内を漂っていた霊体たちが姿を消した。砂場で遊んでいた子供たちも、泣きながら逃げて行った。
「邪魔すんじゃないよ!」しんとした公園に楓の声が響く。「もう、あんたの口車には乗らないからね! やっぱり、わたしにゃ、力で相手を屈服させるのが、似合っているんだよ!」
「させないよ」百合江は静かに言うと、ゆっくりと構えを取る。「お前を生身に憑かせたのは失敗だったようね……」
「もう後の祭りだよ!」楓も構えを取る。そして、不敵な笑みを浮かべる。「ふん、着物姿じゃ、思うように動けないだろう? あんたの負けさ!」
「やってみなくちゃ、わからないわよぉ……」
「ふん! 強がってんじゃないよ!」
楓が百合江に突進した。左右の素速い突きが連続で放たれた。百合江はそれらの突きを左右の手の平で受け続ける。
楓が一旦離れた。はあはあと肩で息をし、汗を流している。百合江は平然とした顔で立っていた。
「あら? もうおしまい?」百合江は笑う。「お前が達人でも、憑いたからだは普通の女の娘。体力に限界があるのよ」
「ふざけたこと、ぬかしてんじゃないよ!」
楓は叫ぶと、地を蹴って跳躍した。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます