スリランカの首都、スリジャヤ・ワルダナプラ・コッテ近郊にクマーラトパクサ家があった。そこの三歳になったジュニウス少年は、ある朝、泣きながら起きて来て、家の者を慌てさせた。母親と祖母が泣き止ませてから話を聞くと、とても怖い夢を見たのだと言う。連日のモヘラによる被害の報道が、幼い心に深い傷を負わせているのだろうと、母親と祖母は思った。「モヘラの夢を見たのかい?」母親はジュニウス少年を抱きしめながら聞くと、少年は首を横に振り、「ものすごく怖いものが、地の割れ目から出て来た夢」と答えた。祖母は少年に絵を描かせてみた。拙い絵ではあったが、その絵を見た母親と祖母は慄然とした。
この様な、幼い子どもたちが泣きながら起きてくる事象が世界中で散見された。話を聞いたり、絵を描かせたりすると、親たちは一様に同じ反応を示した。慄然とし、思い出したくない記憶が蘇った。
オチラ! 人類を陥れた、あの禍々しい怪獣!
だが、疑問が残った。絵を描き、話をした幼い子供たちはオチラを知らないはずだった。
児童心理に詳しいアメリカのジェーン・スタントン博士は、モヘラのぬいぐるみを突然奪った親たちの様子に幼い心が恐怖し、それがトラウマとなって怪獣を想像したのだろうと語った。オチラを想起させる絵や話は、親たちがモヘラとの比較で話していたのを聞いていて、それが原因だろうとも語った。実際、親や家の者は、オチラの話をしていたと証言した。多くの学者もスタントン博士の説を支持した。
一方、心霊研究家として名を知られたイギリスのジェームズ・マーティモー氏は「これはオチラが現われる前触れである。地を乱すモヘラへの怒りである」と強く主張した。しかし、今までの胡散臭い活動を批判され続けていたマーティモー氏に同調する者は皆無だった。
オチラが全く姿を現わさなくなってかなり時を経ていた。オチラは滅んだと考えるのが自然だった。それに、人々はオチラの恐怖を忘れていなかった。万が一にもオチラが蘇ったならば、更なる絶望が人類を覆うだけだ。ならば絶望の種は一つだけ、モヘラだけで十分だ。
今日もモヘラは飛び回り、人々を襲った。今日を生き延びた人々は明日は我が身と覚悟をしていた。変える事の出来ない絶望が重くのしかかっていた。
人類の誇りを捨てずに歩む者も少なくなかった。が、刹那的になって行く者たちが増えて行ったのは事実だった。法を順守する正しい生き方も、神に救いを求める宗教も、権力と財力と言う力も、モヘラの前では何程の物ともならなかったからだ。人類の無力を思い知らされるだけだった。
人類の滅亡は現実味を帯び始めていた。
次回「大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 弐拾弐」の驚愕の展開に括目せよ。
この様な、幼い子どもたちが泣きながら起きてくる事象が世界中で散見された。話を聞いたり、絵を描かせたりすると、親たちは一様に同じ反応を示した。慄然とし、思い出したくない記憶が蘇った。
オチラ! 人類を陥れた、あの禍々しい怪獣!
だが、疑問が残った。絵を描き、話をした幼い子供たちはオチラを知らないはずだった。
児童心理に詳しいアメリカのジェーン・スタントン博士は、モヘラのぬいぐるみを突然奪った親たちの様子に幼い心が恐怖し、それがトラウマとなって怪獣を想像したのだろうと語った。オチラを想起させる絵や話は、親たちがモヘラとの比較で話していたのを聞いていて、それが原因だろうとも語った。実際、親や家の者は、オチラの話をしていたと証言した。多くの学者もスタントン博士の説を支持した。
一方、心霊研究家として名を知られたイギリスのジェームズ・マーティモー氏は「これはオチラが現われる前触れである。地を乱すモヘラへの怒りである」と強く主張した。しかし、今までの胡散臭い活動を批判され続けていたマーティモー氏に同調する者は皆無だった。
オチラが全く姿を現わさなくなってかなり時を経ていた。オチラは滅んだと考えるのが自然だった。それに、人々はオチラの恐怖を忘れていなかった。万が一にもオチラが蘇ったならば、更なる絶望が人類を覆うだけだ。ならば絶望の種は一つだけ、モヘラだけで十分だ。
今日もモヘラは飛び回り、人々を襲った。今日を生き延びた人々は明日は我が身と覚悟をしていた。変える事の出来ない絶望が重くのしかかっていた。
人類の誇りを捨てずに歩む者も少なくなかった。が、刹那的になって行く者たちが増えて行ったのは事実だった。法を順守する正しい生き方も、神に救いを求める宗教も、権力と財力と言う力も、モヘラの前では何程の物ともならなかったからだ。人類の無力を思い知らされるだけだった。
人類の滅亡は現実味を帯び始めていた。
次回「大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 弐拾弐」の驚愕の展開に括目せよ。
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