月明かりの下で、ある公園のベンチに腰掛けている一組のアベック。
「素敵な月ね……」
「そうだね。……でも、君の方がもっと素敵だ」
「あら……」
彼女は彼氏の左肩に、トサカが付いて青黒くて細かなウロコでびっしりと埋まった頭を預けた。
彼氏は三つに分かれた蹄の付いた右手で、彼女の顔を撫でる。
「今夜は帰さないよ……」
彼氏は赤い四つの目で彼女を優しく見つめる。
「恥かしいわ…… でも、嬉しい……」
彼女は黄色い瞳の無い目で彼氏を見つめる。
核戦争が起き、人類がすっかりその姿を変えてしまった未来の物語。
月明かりの下で、二人の騎士が相対している。それぞれの手には剣が握られていた。
決闘のようだ。
「さあ、斬って来いよ!」
「お前こそ、斬って来い!」
剣を向けあったまま、二人は動かない。
「斬れよ!」
「お前こそ!」
二人は泣き出した。
「頼む、斬ってくれ……」
「お前こそ、斬ってくれ……」
勝った方が、魔の森に棲む不死身のドラゴンに、立ち向かわなければならない。
無残に食い殺されるより、人の手に掛かって命を落とす方が、まだ良い。
二人の騎士は座り込んで、わあわあ泣き出した。
月明かりの下で、若い女性が泣いていた。手には彼からの手紙。
「もうわたしにはついて行けないって、どういう事よう!」
彼女は手紙をびりびりに破り捨てた。
それから、彼女は顔を上げて煌々とした月をにらみつけた。
「全部、あれのせいだ!」
彼女は凄まじい遠吠えの雄叫びを上げると、狼女に姿を変えていた。
月明かりの下で、老夫婦が月を見上げながら立っている。
「おじいさん、何度月を見たって変わりませんよ……」
「分かっておる、分かっておるがなぁ……」
「もう、かぐや姫は帰って来ませんよ」
「分かっておる、分かっておるがなぁ……」
「では、何なのですか?」
「意地を張って飲まず、その後、帝によって富士山で燃やされてしまった、あの不死の薬、素直に飲んでおけば良かったと、悔やまれてのう……」
「何を今さら……」
おばあさんは呆れて帰ってしまった。
「もう一度、もらえぬものかと、こうして月を見上げて、かぐや姫にお願いしておるのじゃ……」
おじいさんは、おばあさんが帰った事にも気づかず、じっと月を見上げいた。
月明かりの下で、裸の男女が立っている。
「素敵な月……」
女はそっと男に寄り添う。
「そうだね……」
男は優しく女の肩を抱く。
「この穏やかで平和な園を全地に拡げて行こう。ね、イブ」
「ええ、分かっているわ、アダム」
エデンの園、悪魔の使いとなった蛇に、イブが唆される前日の夜の出来事。
「素敵な月ね……」
「そうだね。……でも、君の方がもっと素敵だ」
「あら……」
彼女は彼氏の左肩に、トサカが付いて青黒くて細かなウロコでびっしりと埋まった頭を預けた。
彼氏は三つに分かれた蹄の付いた右手で、彼女の顔を撫でる。
「今夜は帰さないよ……」
彼氏は赤い四つの目で彼女を優しく見つめる。
「恥かしいわ…… でも、嬉しい……」
彼女は黄色い瞳の無い目で彼氏を見つめる。
核戦争が起き、人類がすっかりその姿を変えてしまった未来の物語。
月明かりの下で、二人の騎士が相対している。それぞれの手には剣が握られていた。
決闘のようだ。
「さあ、斬って来いよ!」
「お前こそ、斬って来い!」
剣を向けあったまま、二人は動かない。
「斬れよ!」
「お前こそ!」
二人は泣き出した。
「頼む、斬ってくれ……」
「お前こそ、斬ってくれ……」
勝った方が、魔の森に棲む不死身のドラゴンに、立ち向かわなければならない。
無残に食い殺されるより、人の手に掛かって命を落とす方が、まだ良い。
二人の騎士は座り込んで、わあわあ泣き出した。
月明かりの下で、若い女性が泣いていた。手には彼からの手紙。
「もうわたしにはついて行けないって、どういう事よう!」
彼女は手紙をびりびりに破り捨てた。
それから、彼女は顔を上げて煌々とした月をにらみつけた。
「全部、あれのせいだ!」
彼女は凄まじい遠吠えの雄叫びを上げると、狼女に姿を変えていた。
月明かりの下で、老夫婦が月を見上げながら立っている。
「おじいさん、何度月を見たって変わりませんよ……」
「分かっておる、分かっておるがなぁ……」
「もう、かぐや姫は帰って来ませんよ」
「分かっておる、分かっておるがなぁ……」
「では、何なのですか?」
「意地を張って飲まず、その後、帝によって富士山で燃やされてしまった、あの不死の薬、素直に飲んでおけば良かったと、悔やまれてのう……」
「何を今さら……」
おばあさんは呆れて帰ってしまった。
「もう一度、もらえぬものかと、こうして月を見上げて、かぐや姫にお願いしておるのじゃ……」
おじいさんは、おばあさんが帰った事にも気づかず、じっと月を見上げいた。
月明かりの下で、裸の男女が立っている。
「素敵な月……」
女はそっと男に寄り添う。
「そうだね……」
男は優しく女の肩を抱く。
「この穏やかで平和な園を全地に拡げて行こう。ね、イブ」
「ええ、分かっているわ、アダム」
エデンの園、悪魔の使いとなった蛇に、イブが唆される前日の夜の出来事。
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