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大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ  拾八

2019年07月27日 | オチラ 対 モヘラ(全27話完結)
 モヘラは何処へ行っても大人しく、人々の邪魔をする事は無かった。以前は、間近かで写真撮影をすると言った軽率な行動を取る者たちもいたが、モヘラの穏やかな性格や、ぬいぐるみにもなった愛嬌のある外見などが人々の心を癒し、愚かな行為をする者たちは減って行った。
 また、復興に励む人々を見守るかのような様子、「マナ」が不足していると分かると鱗粉を出して援助する姿等から、宇宙の理知ある善良な何者かが、オチラによって乱された地球を救うべくモヘラを遣わしたのではないか、と考える人々は多かった。
 オチラが破壊神であれば、モヘラは守護神である、人々はいつしかモヘラを神として見るようになった。とは言え、オチラ出現の際に新興宗教まがいの騒動があったことを覚えていた人々は、仰々しい形式めいた事は行わなかった。各個人が、それぞれ心の中で、日々モヘラの居る事に感謝をするだけだった。
 しかし、やはり教祖となりたい者達、それに従いながら利権を得ようとする者達は居た。だが、さほど支持を得られず、細々と続けるしかなく、そのほとんどは立ち枯れた小木の様に朽ち果てて行った。
 復興の目途が立ち、人類はオチラによって蹂躙された地球の上に新たな一歩を踏み出す事が出来た。モヘラのおかげだ、誰もが思った。地球に「繭玉」として飛来した時に多少の破壊と犠牲はあったが、それは軽い事故のようなものだ、誰もが思った。モヘラに対して人々は好意的だった。
 モヘラは相変わらず、あちこちを飛び回り、人々の活動を見守っているかのようだった。誰もがモヘラの居る日常が当たり前のものと思うようになっていた。産まれた時からモヘラが居たという子供たちも誕生していた。オチラの影の全くない、穏やかな日々が続いていた。
 モヘラが現れて五年が経っていた。人々は節目と考えて祝いを催そうと考えた。モヘラにそれが分かるのかはともかく、地球全体で感謝を示したいとの気運が高まっていた。
 催しのメイン会場として選ばれたのはニューヨーク、開催日は翌年の一月一日とした。ここはモヘラが最初に飛来した場所で、開催日は飛来した日だった。ニューヨークは復興が進み、以前よりも小規模ななったものの、活気の面ではさらに強くなっていた。ふさわしい場所と世界が認めた。また、サブ会場にはモヘラが成虫となった東京が選ばれた。企画進行の責任はアメリカ合衆国のドランク大統領が受け持ち、サブ会場の日本は伊部首相が受け持った。資本主義国が中心になったことで反資本主義国から批判が出るのでは一部から懸念の声が上がった。ところが、反資本主義国から積極的な協力の申し出があり、心配は杞憂であったと分かった。人々は主義主張の違いを超えた繋がりを心から喜んだ。
 こうして、モヘラに対する感謝を表すための式典の準備は着々と進んで行った。
 人々は全人類が足並みを揃えているとの実感を持ち、大いに喜んでいた。


次回「大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 拾九」の驚天動地の展開を待て。



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