お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

み使い、サタンになる

2018年07月30日 | Weblog
「おい、見てみろよ!」
「なんだよ?」
「あれ、だよ」
「ああ、あれか。あばらから作られたやつかい?」
「そうだ」
「『これ​こそ​ついに​わたし​の​骨​の​骨,わたし​の​肉​の​肉。これ​は“女”と​呼ば​れ​よう。男​から​取ら​れ​た​の​だから』って、小躍りしながら歌ってた姿に大笑いさせてもらったぜ」
「そうだったな」
「でも、助け手が必要だなんて、ずいぶんと弱いもんだな」
「そうだけど、神は結構ユーモアのセンスがあるとは思わないか?」
「そうか?」
「男と正反対だぜ。出てないところが出ていて、出ているところが出ていないんだぜ」
「まあ、言われてみれば、そうかもしれないな。でも、助け手としてはちょうどいいんじゃないか?」
「どうしてだ?」
「二人が合わされば、ぴたりと一つになりそうだ」
「なるほどな……」
「おいおい、冗談だよ、冗談!」
「……」


「おい、見てみろよ!」
「なんだよ?」
「あれ、だよ」
「ああ、あの女ってやつかい?」
「そうだ」
「気になる事でもあるのかい?」
「男の話すことを聞いているあの態度さ」
「それがどうしたってんだ?」
「あのキラキラした尊敬の眼差し、敬愛のこもった微笑み……」
「ずっと培った男の知識を分けてもらってんだから、そりゃあそうなるだろうさ」
「あんな表情は、神にしか向けられないものだろう?」
「ま、女にとっちゃ、男はそう見えるかもしれないな」
「それって不敬じゃないのか?」
「ま、俺たちは神の使いだ。女は男の助け手、いわば男の使いだ。ある程度は仕方ないんじゃないか?」
「なるほどな……」
「おいおい、冗談だよ、冗談!」
「……」


「おい、見てみろよ!」
「なんだよ?」
「あれ、だよ」
「女かい?」
「そうだ」
「あの柔らかそうな髪、身体、肌……」
「なんだよ、ずいぶんとご執心だな」
「そんなことはない! ただ、初めて見るものだからな……」
「そりゃ、そうだな」
「それにあの声も、俺たちと違って、高くて軽やかで鳥のさえずりのようだ」
「ま、笑い声なんか聞こえてくると、他の奴らも地上を見下ろして微笑んでいるからな」
「ただ、いつも男と居るのがちょっと、不満だな」
「だって、男の助け手だから、それは仕方のないことだろう?」
「でも、あらかたのことは男から教わりつくしているはずだぜ。そろそろ自分で色々とやってもいいんじゃないか?」
「ま、その内そうなるんじゃないか?」
「そうかな?」
「たぶんな。それで、一人で動けるようになったら、声でもかけてみたらいいんじゃないか?」
「だが、俺たちの姿は奴らには見えないぜ」
「だったら、なんかの姿を借りるとかさ」
「なるほどな……」
「おいおい、冗談だよ、冗談!」
「……」


「おい、見てみろよ!」
「なんだよ?」
「あれ、だよ」
「ああ、あの二人かい?」
「ずいぶんと仲がよさそうじゃないか」
「争いをしているよりは、良いんじゃないか?​」
「そうだが、良すぎないか?」
「いいじゃないか。『男​は​自分​の​妻​に​堅く​付き,ふたり​は​一体​と​なる』って言うんだから」
「そうなんだけど、気にならないか」
「別に。かえって微笑ましいじゃないか」
「俺は気になって勤めに身が入らないよ」
「じゃあ、二人の仲を裂いちゃえばいいじゃないか」
「どうやってさ?」
「男の言ったことを破らせるんだよ。ダメって言ったことをさせちゃうとかさ」
「なるほどな……」
「おいおい、冗談だよ、冗談!」
「……」



創世記3章1節~7節

さて,エホバ​神​が​造ら​れ​た​野​の​すべて​の​野獣​の​うち​蛇​が​最も​用心深かっ​た。それで蛇が​女​に​こう​言い​はじめ​た。「あなた方​は​園​の​すべて​の​木​から​は​食べ​て​は​なら​ない,と​神​が​言わ​れ​た​+の​は​本当​です​か」。それ​に​対し​て​女​は​蛇​に​言っ​た,「園​の​木​の​実​を​わたしたち​は​食べ​て​よ​い​の​です。でも,園​の​真ん中​に​ある​木​の​実​を食べる​ことに​つい​て,神​は,『あなた方​は​それ​から​食べ​て​は​なら​ない。いや,それ​に​触れ​て​も​なら​ない。あなた方​が​死ぬ​こと​の​ない​ため​だ』と​言わ​れ​まし​た」。それ​に​対し​て​蛇​は​女​に​言っ​た,「あなた方​は​決して​死ぬ​よう​な​こと​は​あり​ませ​ん。その木から​食べる​日​に​は,あなた方​の​目​が​必ず​開け,あなた方​が​必ず​神​の​よう​に​なっ​て​善悪​を​知る​よう​に​なる​こと​を,神​は​知っ​て​いる​の​です」。そこで​女​は​見​て,その​木​が​食物​と​し​て​良く,目​に​慕わしい​もの​で​ある​の​を​知っ​た。たしか​に,その​木​は​眺め​て​*好ましい​もの​で​あっ​た。それ​で​彼女​は​その​実​を​取っ​て​食べ​はじめ​た。その​後,共​に​い​た​とき​に​夫​に​も​与え,彼​も​それ​を​食べ​はじめ​た。すると,その​二​人​の​目​は​開け,ふたり​は​自分​たち​が​裸​で​ある​こと​に​気づく​よう​に​なっ​た。その​ため,彼ら​は​いちじく​の​葉​を​つづり合わせ​て​自分​たち​の​ため​に​腰覆い​を​作っ​た。

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