「なるほどね……」
公園のベンチに座っている百合江は、豆蔵と竜二から偵察の報告を受けた。今日の百合江は、白のジーンズにピンクのTシャツと黒のスニーカーと言った姿だ。タイトな上下が、百合江のスタイルの良さを際立たせている。公園を往来する男性たちが、ちらちらと百合江に視線を送っていた。
「さとみちゃん、明日から『お帰りデビュー』か……」百合江は煙草をくわえる。「となると、明日には手を打たなきゃね」
「どうなさるおつもりで?」豆蔵が言う。「あっしに出来ることはねぇですかい?」
「う~ん、どうだろうねぇ……」百合江も意気込む豆蔵を見て言う。「今回は、みつさんと楓姐さんにやってもらうつもりだけどね」
「と言いますと、女の武器を用いると……」豆蔵がにやりとする。「楓はともかく、みつ様は……」
「何のことだい?」竜二が割って入る。「オレも手伝えないのかい?」
「竜二さんは、あっし以上に役に立てねぇですよ」
「豆蔵さんよう、そりゃあ無いぜ」
「とにかく、百合江さんのお考えじゃ、あっしら男は無用のようだ」
「……そんなわけなんで」百合江は楓とみつに向き直る。「お二人の活躍にかかっているのよ」
「任せておきな!」楓は胸を張る。「あんな若い子じゃ、物足りないけどね」
「百合江殿……」みつは不安そうだ。「わたしも加わらねばいけませんか? 楓一人で十分ではないかと思うのですが……」
「みつさん」百合江が真剣な顔になる。「たしかに楓姐さんだけでも行けるかも知れないわ。でもね、二人は一人より勝るって言うじゃない? それに、あなたには荷が重いってことも承知しているけど、これは修業なのよ。この体験が、きっと新たな剣技を生み出すきっかけになるはずだわ……」
「わたしのため…… 新しい剣技のため……」
「そうよ、その通りよ!」
「わかりました! 精一杯努めます!」
そう言うと、みつは「修業! 修業! 修業!」と、己に言い聞かせていた。
「あんたさぁ……」楓がみつの様子を横目で見ながら、つつつと百合江のそばに寄って小声で話しかけた。「あの剣士で遊んでんじゃないのかい?」
百合江はそれに答えず、にやりと笑うと煙を吹き出した。
「……まあ、この姐さんも、相当な姐さんだな……」楓はつぶやくと、にやりと笑った。「ひょっとしたら、わたし以上かもね……」
百合江は携帯電話を取り出した。
「……あ、アイちゃん?」通話先はアイだった。「明日、午後の授業を抜け出して、繁華街へ来てくれない? 麗子ちゃんといっしょに。……え? 麗子ちゃん、繁華街が嫌いなんだ。……ううん、アイちゃんが謝ること無いわ。じゃあ、途中にわたしがいるから、とりあえず二人で向かってくれる? ……うん、わがまま言ってゴメンね。……うん、ありがと。それから……次の日曜日、二人でうんと親密になるのよ。……ほほほ、大丈夫、誰にも言わないわよ。じゃあ、明日ね」
百合江は携帯電話をしまう。意味深な笑みを浮かべていた。
「で、どうやるつもりなんだ?」楓がじれったそうに言う。「隠してないで、教えておくれよ」
「楓姐さんもみつさんも、そのままじゃ何も出来ないでしょ?」
「まあ、そうだねぇ」
「だから、取り憑きやすい二人を使うのよ」
「それぞれに取り憑くってわけかい」
「そう」百合江は楓を見て楽しそうに笑ってみせる。「そして、かわいいかわいい建一君を落としてもらうわ。そうすれば、さとみちゃんが怒って、恋心なんか、どこかへ消し飛んじゃうわよ」
「……百合江姐さん……」楓が含み笑いをする。「お主も相当、悪よのう……」
つづく
公園のベンチに座っている百合江は、豆蔵と竜二から偵察の報告を受けた。今日の百合江は、白のジーンズにピンクのTシャツと黒のスニーカーと言った姿だ。タイトな上下が、百合江のスタイルの良さを際立たせている。公園を往来する男性たちが、ちらちらと百合江に視線を送っていた。
「さとみちゃん、明日から『お帰りデビュー』か……」百合江は煙草をくわえる。「となると、明日には手を打たなきゃね」
「どうなさるおつもりで?」豆蔵が言う。「あっしに出来ることはねぇですかい?」
「う~ん、どうだろうねぇ……」百合江も意気込む豆蔵を見て言う。「今回は、みつさんと楓姐さんにやってもらうつもりだけどね」
「と言いますと、女の武器を用いると……」豆蔵がにやりとする。「楓はともかく、みつ様は……」
「何のことだい?」竜二が割って入る。「オレも手伝えないのかい?」
「竜二さんは、あっし以上に役に立てねぇですよ」
「豆蔵さんよう、そりゃあ無いぜ」
「とにかく、百合江さんのお考えじゃ、あっしら男は無用のようだ」
「……そんなわけなんで」百合江は楓とみつに向き直る。「お二人の活躍にかかっているのよ」
「任せておきな!」楓は胸を張る。「あんな若い子じゃ、物足りないけどね」
「百合江殿……」みつは不安そうだ。「わたしも加わらねばいけませんか? 楓一人で十分ではないかと思うのですが……」
「みつさん」百合江が真剣な顔になる。「たしかに楓姐さんだけでも行けるかも知れないわ。でもね、二人は一人より勝るって言うじゃない? それに、あなたには荷が重いってことも承知しているけど、これは修業なのよ。この体験が、きっと新たな剣技を生み出すきっかけになるはずだわ……」
「わたしのため…… 新しい剣技のため……」
「そうよ、その通りよ!」
「わかりました! 精一杯努めます!」
そう言うと、みつは「修業! 修業! 修業!」と、己に言い聞かせていた。
「あんたさぁ……」楓がみつの様子を横目で見ながら、つつつと百合江のそばに寄って小声で話しかけた。「あの剣士で遊んでんじゃないのかい?」
百合江はそれに答えず、にやりと笑うと煙を吹き出した。
「……まあ、この姐さんも、相当な姐さんだな……」楓はつぶやくと、にやりと笑った。「ひょっとしたら、わたし以上かもね……」
百合江は携帯電話を取り出した。
「……あ、アイちゃん?」通話先はアイだった。「明日、午後の授業を抜け出して、繁華街へ来てくれない? 麗子ちゃんといっしょに。……え? 麗子ちゃん、繁華街が嫌いなんだ。……ううん、アイちゃんが謝ること無いわ。じゃあ、途中にわたしがいるから、とりあえず二人で向かってくれる? ……うん、わがまま言ってゴメンね。……うん、ありがと。それから……次の日曜日、二人でうんと親密になるのよ。……ほほほ、大丈夫、誰にも言わないわよ。じゃあ、明日ね」
百合江は携帯電話をしまう。意味深な笑みを浮かべていた。
「で、どうやるつもりなんだ?」楓がじれったそうに言う。「隠してないで、教えておくれよ」
「楓姐さんもみつさんも、そのままじゃ何も出来ないでしょ?」
「まあ、そうだねぇ」
「だから、取り憑きやすい二人を使うのよ」
「それぞれに取り憑くってわけかい」
「そう」百合江は楓を見て楽しそうに笑ってみせる。「そして、かわいいかわいい建一君を落としてもらうわ。そうすれば、さとみちゃんが怒って、恋心なんか、どこかへ消し飛んじゃうわよ」
「……百合江姐さん……」楓が含み笑いをする。「お主も相当、悪よのう……」
つづく
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