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大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ  弐拾六

2019年08月04日 | オチラ 対 モヘラ(全27話完結)
 オチラは片脚を滑走路に掛けた。モヘラは羽ばたくと宙に浮かんだ。
 モヘラは甲高い声で鳴いた。応じるようにオチラも雄叫びを上げた。
 モヘラは不意に羽ばたきを強め、オチラへと突進し、オチラに体当たりを食わせた。片脚のみ滑走路に掛けていたオチラは体勢を崩し、海へと倒れた。飛沫が高く上がった。オチラはそのまま姿を現わさない。モヘラは海中に没するオチラを見て甲高く鳴いた。オチラの没した海面の上を旋回する。
 と、海面が俄かに泡立った。蒸気も上がり始めた。そして、空に向かって青白い一条の光線が放たれた。オチラの光線だ。光線はモヘラの六本ある脚の右後ろ脚をかすめた。傷口から緑色の体液が流れた。モヘラは鳴いた。海面にオチラの上半身が現われた。雄叫びを上げた。オチラは口を大きく開けた。口中に光の粒が生じ、増して行く。オチラの口中が光で満ちた。が、オチラは口を閉じた。モヘラの様子に何かを察したようだった。
 モヘラは頭頂部にある二本の触角を揺らし始めた。オチラはその動きを見ている。触角が白く光った。途端に、触角の先端から白く細い光線が放たれた。光線はオチラの脇腹を貫いた。赤黒い体液が流れ出した。オチラは雄叫びを上げた。モヘラの光線は尚も放たれた。オチラの体躯を貫き続ける。貫かれる度にオチラは雄叫びを上げる。それは悲鳴だった。
 オチラは海中にその姿を沈めた。海面に赤黒いオチラの体液が浮かぶ。モヘラは海面に向かい、光線を放ち続けた。甲高い鳴き声を幾度も上げた。光線が放たれる度に、海面が赤黒くなって行く。モヘラは光線を放つのを止めた。
 穏やかになった海面の上を、モヘラは勝ち誇ったように旋回した。
 モヘラの羽田空港飛来の報で出動した、海上自衛隊の対モヘラ部隊の責任者である山内一等海佐は「モヘラ、オチラと交戦、オチラ海中に没し浮上せず」と本部へ入電した。
 その時だった。オチラの尾が海面に突き出した。モヘラは警戒するように旋回を止め、その場で羽ばたきを繰り返す。尾が激しく海面に叩き付けられた。その勢いで海中からオチラが跳ね上がった。その巨躯のほとんどを海上に晒した。山内一等海佐はその様を、鯨のブリーチングのようだと思った。
 跳ね上がったオチラは、羽ばたいているモヘラの右羽根に噛みついた。オチラはそのままで再び海中に落下する。海面が激しく揺れ、高い波が周囲に広がる。
 海に引きずり下ろされたモヘラは、左羽根で幾度も海面を叩いた。波が更に高くなる。波が滑走路を洗う。海自の艦隊も波に翻弄される。
 しばらくすると、モヘラは海面を叩くのを止め、オチラに噛まれた右側を下にして、海中に沈んで行った。


  次回「大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 弐拾七」の衝撃の結末を待て。


 

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