「・・・あの、馬鹿が!」
妖介は『斬鬼丸』の動きを止めた。妖魔の濁った白目が、霧散させた数以上に、闇から溢れ出てくる。舌打ちをしながら、『斬鬼丸』を繰り出す。
「エリ!」
妖介は怒鳴った。
「なあに? わたし、今忙しいの!」
怒鳴り返したエリに妖介は振り返った。
エリは電信柱を背に、自身の『斬鬼丸』から、うっすらとした短い刀身を立て、寄って来る妖魔に向けて振り回していた。
妖介がエリの元に駆け寄り、エリを背後に隠す。妖魔の一匹が、妖介の肩を乗り越えてエリを掴もうとし、妖介の『斬鬼丸』で霧散させられた。
「こいつら、かなり強気に出ている」妖介が背後のエリに話しかける。「どう言う事だか分かるか?」
「お姉さんがやられたって事?」息を整えながらエリが言う。「凄い力の持ち主がダメになっちゃうのが、嬉し可笑しって事なのね!」
「まだ喰われてはいない。だが、あんな様じゃ時間の問題だろう」妖介はわざと背中をエリに押し付け、犬歯を覗かせた。「そろそろ幸久が満足するだろうからな」
「・・・うわあああ!!」エリは悲鳴を上げた。妖介を通じて葉子の感情がエリに流れ込んで来たからだ。「いやだあ! 何なのよう! お姉さん、何やってんのよう! もうダメなんじゃないのお!」
「いや、淫乱の意識が続いている間は喰われてはいない」妖介は一歩前に出た。「オレが通り道を確保する。お前はあの馬鹿の所へ行け。正気に戻すんだ」
「そんなあ・・・ わたしじゃ無理だよお! わたしの『斬鬼丸』は弱いじゃない!」
「ユウジが言ってたろう? ノブは回るがドアが開かないと。多分、ドアに妖魔の粘着質の体液を塗りたくったのだろう。お前の『斬鬼丸』でも、それくらいは破る事が出来るはずだ。ドアが開いたら、大声で喚け。そうすれば淫乱馬鹿女も正気に戻る」
「でもさ、手足縛られてるし、目も口も塞がれてるよ」
「あの『斬鬼丸』は、心底あの馬鹿を気に入っている。ヤツが正気に戻れば、必ず何らかの反応をするはずだ」
「そう言えば、勝手に青白く光ったりしたね」
「そうだ。あの『斬鬼丸』は、あの馬鹿を助けようと動くはずだ」
「でも、そんな事って・・・」
「信じるんだ!」
「大丈夫かなあ。わたしに出来るかなあ・・・」
「もう少しでここも片付く。すぐに後を追う。お前が喚く頃にはオレもいるはずだ」
「・・・分かった、やってみる!」
妖介は通りの真ん中へ進んだ。妖介は、青白い『斬鬼丸』の刀身を真正面に向け、目を閉じる。そのまま微動だにしなかった。しばらく警戒していた妖魔どもが、じわじわと妖介を取り囲むように近づき始めた。
「はあーっ!!」
かっと目を見開くと同時に裂帛の気合を入れた。『斬鬼丸』の刀身が白色に変わった。妖介のからだからも白い炎のような揺らめきが立ち昇っている。妖介に触れようと近づいた妖魔どもは、揺らめきに当たると霧散した。妖介は『斬鬼丸』を振り下ろした。空を裂く音とともに疾風が起こった。それに当たった妖魔どもも霧散した。それを幾度も繰り返す。そのたびに疾風が起き、妖魔が霧散する。
「すっごーい・・・」
自らの『斬鬼丸』を振り回すのを忘れて、エリがつぶやいた。
「エリ、行け!」
妖介が怒鳴った。
「すぐ来てね!」
エリは言うと、妖介の起こす疾風の中を駆けた。数匹の妖魔がエリを追う。妖介は再び気合を込めた。刀身が伸び、エリを追う妖魔を串刺しにし、霧散させた。
「薄汚いクソども! オレに向かって来い!」犬歯を覗かせた。「オレがぶっ倒れるか、お前らが消えてなくなるか、・・・楽しみだな!」
妖介は白い刀身を振りかざし、白い揺らめきを立ち昇らせて、際限なく湧いて出てくる妖魔の群れに飛び込んで行った。
つづく
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妖介は『斬鬼丸』の動きを止めた。妖魔の濁った白目が、霧散させた数以上に、闇から溢れ出てくる。舌打ちをしながら、『斬鬼丸』を繰り出す。
「エリ!」
妖介は怒鳴った。
「なあに? わたし、今忙しいの!」
怒鳴り返したエリに妖介は振り返った。
エリは電信柱を背に、自身の『斬鬼丸』から、うっすらとした短い刀身を立て、寄って来る妖魔に向けて振り回していた。
妖介がエリの元に駆け寄り、エリを背後に隠す。妖魔の一匹が、妖介の肩を乗り越えてエリを掴もうとし、妖介の『斬鬼丸』で霧散させられた。
「こいつら、かなり強気に出ている」妖介が背後のエリに話しかける。「どう言う事だか分かるか?」
「お姉さんがやられたって事?」息を整えながらエリが言う。「凄い力の持ち主がダメになっちゃうのが、嬉し可笑しって事なのね!」
「まだ喰われてはいない。だが、あんな様じゃ時間の問題だろう」妖介はわざと背中をエリに押し付け、犬歯を覗かせた。「そろそろ幸久が満足するだろうからな」
「・・・うわあああ!!」エリは悲鳴を上げた。妖介を通じて葉子の感情がエリに流れ込んで来たからだ。「いやだあ! 何なのよう! お姉さん、何やってんのよう! もうダメなんじゃないのお!」
「いや、淫乱の意識が続いている間は喰われてはいない」妖介は一歩前に出た。「オレが通り道を確保する。お前はあの馬鹿の所へ行け。正気に戻すんだ」
「そんなあ・・・ わたしじゃ無理だよお! わたしの『斬鬼丸』は弱いじゃない!」
「ユウジが言ってたろう? ノブは回るがドアが開かないと。多分、ドアに妖魔の粘着質の体液を塗りたくったのだろう。お前の『斬鬼丸』でも、それくらいは破る事が出来るはずだ。ドアが開いたら、大声で喚け。そうすれば淫乱馬鹿女も正気に戻る」
「でもさ、手足縛られてるし、目も口も塞がれてるよ」
「あの『斬鬼丸』は、心底あの馬鹿を気に入っている。ヤツが正気に戻れば、必ず何らかの反応をするはずだ」
「そう言えば、勝手に青白く光ったりしたね」
「そうだ。あの『斬鬼丸』は、あの馬鹿を助けようと動くはずだ」
「でも、そんな事って・・・」
「信じるんだ!」
「大丈夫かなあ。わたしに出来るかなあ・・・」
「もう少しでここも片付く。すぐに後を追う。お前が喚く頃にはオレもいるはずだ」
「・・・分かった、やってみる!」
妖介は通りの真ん中へ進んだ。妖介は、青白い『斬鬼丸』の刀身を真正面に向け、目を閉じる。そのまま微動だにしなかった。しばらく警戒していた妖魔どもが、じわじわと妖介を取り囲むように近づき始めた。
「はあーっ!!」
かっと目を見開くと同時に裂帛の気合を入れた。『斬鬼丸』の刀身が白色に変わった。妖介のからだからも白い炎のような揺らめきが立ち昇っている。妖介に触れようと近づいた妖魔どもは、揺らめきに当たると霧散した。妖介は『斬鬼丸』を振り下ろした。空を裂く音とともに疾風が起こった。それに当たった妖魔どもも霧散した。それを幾度も繰り返す。そのたびに疾風が起き、妖魔が霧散する。
「すっごーい・・・」
自らの『斬鬼丸』を振り回すのを忘れて、エリがつぶやいた。
「エリ、行け!」
妖介が怒鳴った。
「すぐ来てね!」
エリは言うと、妖介の起こす疾風の中を駆けた。数匹の妖魔がエリを追う。妖介は再び気合を込めた。刀身が伸び、エリを追う妖魔を串刺しにし、霧散させた。
「薄汚いクソども! オレに向かって来い!」犬歯を覗かせた。「オレがぶっ倒れるか、お前らが消えてなくなるか、・・・楽しみだな!」
妖介は白い刀身を振りかざし、白い揺らめきを立ち昇らせて、際限なく湧いて出てくる妖魔の群れに飛び込んで行った。
つづく
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