「ええええっ! ……」さとみは身を固くした。「わたしが、一人で……」
「嬢様一人で、ですかい?」豆蔵は心配そうにさとみを見る。「そりゃあ、無茶ってもんで……」
「でも、それしか考えつかないわ」百合恵は言うと、固まっているさとみを見る。「もちろん、行く行かないは、さとみちゃん次第だけどね」
さとみはおでこをぴしゃぴしゃと叩き続けた。考えをまとめている。
「さとみちゃん……」百合恵の声でさとみは手を止めた。「ちょっと聞いておきたいことがあるの」
「はい、なんでしょう?」
「行く行かないの前に、行けるか行けないかを確認しておきたいの」百合恵はそう言うと、次いで豆蔵に向かって言った。「豆蔵には、ちょっと場を外してもらいたいんだけど」
「えっ?」豆蔵は怪訝な顔をした。しかし、すぐに頭を下げた。「姐さんに何か良いお考えが浮かんだんでしょう。承知しました。用があるときはお渡しした呼子を吹いてください」
「えっ? 豆蔵、百合恵さんにも呼子を渡しているの?」
驚いているさとみに、にやりと笑い返しながら豆蔵が消えた。
「さあて……」豆蔵の気配のなくなったのが分かると、百合恵は言った。「さとみちゃん、ちょっとからだに戻ってくれる?」
「え? あ、はい……」
さとみは言われるままに霊体をからだに戻した。ぽうっと立ち尽くしていたさとみのからだが、のろのろと動き始める。
「ふふふ、まるでスイッチが入りたてのロボットね」
からかう百合恵の言葉に、さとみはぷっと頬を膨らませて抗議を示す。
「そんなことを言いたくて、からだに戻したんですか!」
「もちろん、そんな訳はないわ……」百合恵がすっとそばに寄ってきた。「直接、聞きたいことがあったのよ……」
つづく
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「嬢様一人で、ですかい?」豆蔵は心配そうにさとみを見る。「そりゃあ、無茶ってもんで……」
「でも、それしか考えつかないわ」百合恵は言うと、固まっているさとみを見る。「もちろん、行く行かないは、さとみちゃん次第だけどね」
さとみはおでこをぴしゃぴしゃと叩き続けた。考えをまとめている。
「さとみちゃん……」百合恵の声でさとみは手を止めた。「ちょっと聞いておきたいことがあるの」
「はい、なんでしょう?」
「行く行かないの前に、行けるか行けないかを確認しておきたいの」百合恵はそう言うと、次いで豆蔵に向かって言った。「豆蔵には、ちょっと場を外してもらいたいんだけど」
「えっ?」豆蔵は怪訝な顔をした。しかし、すぐに頭を下げた。「姐さんに何か良いお考えが浮かんだんでしょう。承知しました。用があるときはお渡しした呼子を吹いてください」
「えっ? 豆蔵、百合恵さんにも呼子を渡しているの?」
驚いているさとみに、にやりと笑い返しながら豆蔵が消えた。
「さあて……」豆蔵の気配のなくなったのが分かると、百合恵は言った。「さとみちゃん、ちょっとからだに戻ってくれる?」
「え? あ、はい……」
さとみは言われるままに霊体をからだに戻した。ぽうっと立ち尽くしていたさとみのからだが、のろのろと動き始める。
「ふふふ、まるでスイッチが入りたてのロボットね」
からかう百合恵の言葉に、さとみはぷっと頬を膨らませて抗議を示す。
「そんなことを言いたくて、からだに戻したんですか!」
「もちろん、そんな訳はないわ……」百合恵がすっとそばに寄ってきた。「直接、聞きたいことがあったのよ……」
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