【ネタバレ】
◎「岬のマヨイガ」
「あなたを信じる場所が、ここにある。」
「迷った人を幸せにする伝説の家(マヨイガ)で17歳のユイが出会ったのは、ふしぎだけどあたたかい家族でした。」
2021年8月27日(金)公開、監督は川面真也、脚本は吉田玲子、原作は柏葉幸子、105分。
総合評価は、上中下で下。
ユイ(17歳)(cv芦田愛菜)、ひより(8歳)(cv粟野咲莉)、キワ(cv大竹しのぶ)、豊沢川の河童(cv伊達みきお(サンドウィッチマン))、北上川の河童(cv富澤たけし(サンドウィッチマン))など。
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◯映画館で見た予告がつまらなかったので見るか迷いましたが、今年のアニメ映画としては見ておいた方が良いようには思ったので見ました。
キワがユイとひよりに対して何回か昔話を語り出すことで物語に変化を付けて伏線とし(伏線というより、この先の展開のネタバレといってもいいくらい明確な内容ですが。)、ダレないようにしています。それはそれで構わないのですが、カッパや座敷童などの妖怪、各地のお地蔵さんがやってきたりして(これらの妖怪は、キワの仲間であり協力者。)、ファンタジーになっています。
そもそもマヨイガという家がファンタジーですが、これは妖怪などのファンタジーに説得力をもたせるためというのが半分、東日本大震災などにより精神的に傷を負ったユイとひよりの2人が前向きになるための小道具というのが半分(とはいえ、マヨイガがなくても2人は前向きになれたように思います。)。
ほとんどコメディ要素を入れていないのは東日本大震災を題材にしているからでしょうけれど(絵もリアル系。モデルとなったのは岩手県大槌町。)、ファンタジーによる問題の発生と解決にするのなら、もう少しコメディにするか、何かをしないとファンタジーの説得力がないです。妖怪などのファンタジーを知る人間はごくわずかである旨の説明があったので、ファンタジーがその地域に根付いているわけでもありません(昔話そのものは、フィクションとしてある程度は根付いていそう。)。
現実の東日本大震災というのは、多くの日本人には想定外の信じられない大規模災害だったようですから、救いをファンタジーに求めたということでしょうか?。(きちんと研究している人にとっては想定外とまでは言えない規模だったようですが。なお、その研究が有力説だったかどうか、一般に知られていたかは別の話です。)
でも、妖怪が増幅した原因であるその地域の住民たちの思いは何も解決せず、キワらは妖怪を退治しただけです。一般の住民は、妖怪に取り憑かれたときの記憶は失っており、何も解決していないのです。
今回、キワやユイやひよりらが妖怪を倒したのか封印しただけなのかはよく分かりませんが(その妖怪は、かつては封印されていたものの、津波で祠が壊れたので封印が解かれ、海の中の洞窟に封印されていた妖怪が逃げ出したというもの。)。
キワのように人知れず活躍している人がいる、でも問題は何も解決していない、という映画です。
それらの日々の中で、ユイとひよりの問題は良い方向に向かっていますが、2人は妖怪との出来事を覚えています。
2人とそれ以外の住民を比べると、問題を乗り越えるには、昇華するなり乗り越えるなりによって、忘れることなく自らの中で気持ちの整理をしないといけないと言いたいとも取れるとともに、住民等にはまだ早いから能力のあるキワのような人がごまかしておくというように見えます(後述の「想いのかけら」はごまかさないでそれを描いています。)。
東日本大震災(2011年3月11日)から数年ならまだしも、10年たってその状況の人がほとんどという状況を描かれるのでは先が思いやられます。原作は2015年(2014年から2015年に連載されたものを加筆修正。)なので、その時点でのものだと考えれば理解できます(ユイとひよりの設定は映画と原作とで変えているようですが、それ以外の設定や基本の物語をどの程度変えているのかは知りません。)。
○大竹さんの声の演技ですが、俳優としてのいい感じの存在感やいい感じの魅力というのは声の演技では弱まるので、もったいないので俳優をしていた方が良いのでは、と本作でも「漁港の肉子ちゃん」(2021年公開アニメ映画)の肉子ちゃんの演技を見たときにも思いました。
芦田さんの俳優としての演技はほぼ知りませんが、声の演技は、かつて見たことがあるアニメも含めて、魅力的とまでは思わないものの、悪くはないとは思っています。
リアル系アニメとしては、2人ともほどよい演技だったと思います。
○さて、アニメ「想いのかけら」の25分版は2016年にNHKでTV放送されました。
東日本大震災による津波で、家族を失ったり、家を失ったり、友達を失ったり、友達が引っ越していったりの中で、津波で失った家族との思い出を思い出したりして、気持ちの整理をつける方向に向かっていくまでを描いています(気持ちの整理がつくまで、ではなく。)。じんわりと来ます。
こちらはおすすめですが、今となってはどこで見ることが出来るのかは分かりません。
【shin】